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北朝鮮観光ブーム、相次ぐ拘束でもアメリカ人旅行者が増加

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NORTH KOREA TOURISM
6月12日、旅行代理店によると、北朝鮮ツアーの人気は急速に高まっている。写真は昨年10月、韓国の坡州で、双眼鏡を使って北朝鮮側の風景を見る女性(2014年 ロイター/Kim Hong-Ji | Reuters
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[ソウル 12日 ロイター] - 「あなたのお母さんが行ってほしくないと思うような場所にお連れします」──こんな宣伝文句を掲げるのは、北朝鮮ツアーを扱う欧米の旅行代理店だ。

北朝鮮に行ってほしくないと思うのは親族だけでない。米政府もそうだ。北朝鮮に観光目的で入国し、拘束されている米国人は過去8カ月間で3人に上る。中には5月に拘束されたオハイオ州出身のジェフリー・フォウル氏も含まれる。

旅行代理店によると、北朝鮮ツアーの人気は急速に高まっている。核・ミサイル開発計画に関連して米国の制裁対象となっている北朝鮮にとって、観光事業は数少ない外貨獲得手段の一つだ。

北朝鮮政府は観光客数を公表していないが、旅行代理店の推計では、同国を訪れる欧米からの旅行者は年間6000人にも上り、10年前の700人から大幅に増加。大半は、「鉄のカーテン」の裏側にある暮らしに関心を持ち、「観光客の支払う金が圧政を支えている」との批判には耳を貸さない人たちだ。

北朝鮮への観光客の圧倒的多数は、主要同盟国である中国から来ている。

北朝鮮を訪問中の米国人観光客、キース・バラードさんは、「私の北朝鮮旅行に倫理的な問題があると考える人たちはいた。『なぜあの政府を支援するために観光に行くのか』と聞かれた」と認めた上で、「『基本的にはただの観光だ』と答えた」と話す。

米国務省は先月、「恣意的な拘束」が起きるリスクがあるとして、北朝鮮への渡航を控えるよう「強く勧告する」と発表した。

北朝鮮の人権問題に関するブログ執筆などの活動を続けるワシントンの弁護士、ジョシュア・スタントン氏は、観光収入が金正恩政権を強化しているとの考えを示した。

同氏は電子メールでの回答で、「高額なツアーを販売する旅行代理店は、『北朝鮮に滞在しても安全でいられる』『訪問は北朝鮮に状況改善をもたらす』という、2つの考えを鵜呑みにする顧客を必要としている」と指摘。安全面についての考えは正しくないとし、訪問で状況が改善するとの考えも疑わしいとした。

<過去10年でツアー予約は10倍に>

ただ、渡航に対する警告はさほど効果がないようだ。

北朝鮮への旅行を専門的に扱う、中国・北京の「高麗ツアーズ」は、過去10年間で事業が10倍に拡大した。同社のサイモン・カックレル氏によると、ピーク時の2012年には約2100人が同社のサービスを利用し、このうち4分の1は米国人だった。

同じく北朝鮮旅行を専門とする中国の代理店「ヤング・パイオニア・ツアーズ」のトロイ・コリングス氏は、同社事業が年間で2倍に拡大していると述べた。過去1年間に同社サービスを利用したのは1000人近くだったという。

旅行代理店の従業員らは、北朝鮮で拘束される人たちには大抵、改宗活動に従事しようとしたり、地元住民に独自に連絡を取ろうとしたりするなど、特別な理由があると指摘する。

最近同国を訪れたダスティ・マプソンさんは「観光以外の目的を持たずに渡航するのであれば、北朝鮮は非常に安全な国だと感じた」と語る。過去に米軍に所属していたマプソンさんだが、同国で問題に直面することはなかったという。

<相次ぐ拘束>

韓国系米国人のキリスト教宣教師ケネス・ベ(韓国名ペ・ジュンホ)氏は18カ月にわたり北朝鮮で拘束されている。米国人のメリル・ニューマン氏は、朝鮮戦争中にゲリラ部隊を訓練したと北朝鮮人のガイドに話し、平壌で拘束された。ニューマン氏はその後解放された。

朝鮮中央通信社(KCNA)は、マシュー・トッド・ミラー氏(24)が4月10日に同国に入国した後、観光ビザを破いて亡命を求めたと報じた。

さらに先週、北朝鮮は前出のフォウル氏を拘束したと発表。弁護人は同氏について、教会関連の目的で渡航したのではないとし、旅行が好きで、異なる文化の体験や新たな土地の観光を楽しむ人物だと語った。2010年にオハイオ州のデイトン・デイリー・ニュース紙に掲載された情報によると、同氏は旧ソビエト連邦に「特に関心」を寄せていたという。

北朝鮮を訪れる観光客は、旅行前に代理店から訪朝時の危険性について説明を受ける。外国文書の配布禁止や北朝鮮指導部を中傷する可能性のある行為の禁止など、同国の法律を順守するよう伝えられる。

また、ロイターが入手した文書によると、外国の旅行会社は、北朝鮮の国営観光機関と共に観光客を同国の「法律や規制、社会的秩序に従わせ、尊重させる」という内容の契約書に署名する必要がある。

観光客が北朝鮮に渡航する場合、高麗航空の旧ソ連製旅客機で北京から平壌に入国するか、中国から鉄道で入国することになる。入国後は厳しい監視の下 、観光ツアーに参加する。

ホテル代や食費などの費用はすべて前払いだが、旅行者は現金支払い用にユーロ、米ドル、中国人民元を持ち歩くことができる。

4日間の観光ツアーの料金は500ドルー1800ドル(約5万─18万円)。旅行代理店によれば、この一部は国営の旅行会社に支払われる。

自国民を海外からの旅行者と接触させることを恐れる一方、北朝鮮政府は観光客誘致を目的とした事業への投資を続けている。昨年には、東部の港湾都市、元山近くに新たなスキーリゾートを開業。ロイターが入手した外国人投資家向けの文書によると、同リゾートでは年間4375万ドルの観光収入を目指しているという。

米ワシントンのピーターソン国際経済研究所の北朝鮮専門家、ステファン・ハガード氏は、「最も興味深いのは、北朝鮮は観光収入の拡大に注力する一方、国外からの影響を恐れているという矛盾だ」と指摘。「北朝鮮は貿易や投資を切実に必要としている。しかし、それによって支配力をわずかでも失う状況に陥ることは受け入れられないようだ」と述べた。

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北朝鮮の日常(写真集「隣人。38度線の北」より
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