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ワールドカップ日本代表、ギリシャ戦・得点できなかった理由をデータで探る

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TOSHIFUMI KITAMURA via Getty Images
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6月20日、FIFAワールドカップブラジル大会、日本代表の2戦目、ギリシャ戦が行われ、0−0の引き分けとなった。ボール保持率は日本68%、ギリシャ32%(FIFA公式)、シュート数18本を放った日本。攻め続けながら点を取れなかった理由はどこにあるのか、データで紐解いた。

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  • 0-2分 日本
    立ち上がりから積極的に日本はボールを持つ。始まったばかりのゲームの見どころは、ボールを持った時にどうするかというところ。ここでその日のチームの方針がわかる。日本はいつもの通り、左サイドを中心としたパスワークを選択。コートジボワール戦ではベンチだった今野が長友や山口と細かくパス交換しながらビルドアップに参加していることがわかる。 慎重な立ち上がりだったコートジボワール戦とは、まったく正反対だ。
  • 0−2分 ギリシャ
    ギリシャもまずは自らが志向する、しっかり守りから入るサッカーでゲームを始める。重心の低さが布陣からも見て取れる。
  • 3-8分ギリシャ
    ギリシャは中盤で奪うとすぐに突破力のあるサマラスに預けることを狙っている。そのため、サマラスがやや前目に陣取っている。
  • 3-8分 日本
    相変わらず日本のパス回しは左サイド中心。大久保は中央から右サイドで、サマラスが開けがちなスペースを探るように動き回っている。そのことがよくわかるポジショニングだ。
  • 9-20分ギリシャ
    ギリシャのパターンは大きく分けると2つ。右サイドのトロシディスからの組み立てと、そして左サイドのサマラスの突破。この2つの形が出たのがこの時間帯だ。左サイドからの攻勢を強める日本に対して、ギリシャも右側はしっかり深く守っている。
  • 9-20分日本
    今野がボールを持つと岡崎、本田が受けに顔を出し、左サイドの高い位置にいる長友に落とす、この日本の得意のパターンがよく現れた陣形だ。山口、長谷部の2人はそれをサポートしながら時折、開いている右に振ったりする。 この左に重きをおいて、開いた右を使う形がうまく出たのが前半18分のシーン。左を使うぞ、と見せかけて敵の守備が日本の左サイドに寄ったところに、山口が大きく右の内田に展開、大久保に当てて落としたところを大迫がシュートを打ったシーンだ。左の密集から右のオープンへ。日本の形が出ている。
  • 21-30日本
    同じ流れが続く。21分の大迫のシュートも今野の縦パスから生まれた。続く22分の吉田のクロスを上げるシーンも、左に密集させておいて開いた右を持ち上がる展開。完全に日本の流れだ。布陣は大きく変わっていないが大久保がより中に入ってきている。これが右にスペースを開け、吉田や内田の持ち上がりにつながっている。
  • 21-30ギリシャ
    日本がこれだけボールが回ると、なかなかギリシャにチャンスが来ない。10分の幅を取ってみても、単発的なパスしか通っていないことがよくわかる。しかし、前の選手の平均ポジションは日本陣内に入っている。間延びしてるわけではない。後ろはしっかり守り、前の選手は飛び出している。26分の決定的チャンスも、右サイドのパス数本で作ったものだ。これがギリシャの戦い方。
  • 31-36ギリシャ
    ギリシャの布陣を見て欲しい。日本のボールポゼッションが続く中、センターハーフのマニアティスがほとんどDFラインに吸収され、ギリシャの両ウイング、左のサマラスとフェトファジディスは両サイドに引きつけられている。これによって、ボランチのカツラニスのまわりにスペースができている。 これはあくまでも平均ポジショニングだが、実際の試合映像を見てもカツラニスの周りに小さなスペースが散発的にできている。大久保を中心に、日本がこのスペースをしたたかに使うことになる。
  • 31-36日本
    一方の日本。中央にいるカツラニスの周りにスペースを突くように、真ん中に日本の選手が固まっている。カツラニスを引きずり出すと、スペースが空く、日本にとって更にやりやすい流れになる中、ゲームを変えるハプニングが起こる。
  • 37-45分日本
    37分にギリシャのパス回しの中心選手、カツラニスが2枚目のイエローカードをもらい、退場となる。ここでギリシャは4-3-3だったフォーメーションを、一人減ったことにより、ウイングのフェトファジディスを下げて、4−4−1に代える。これによって今までカツラニスがほぼひとりで守っていた地域を、2人で守る布陣に変わったのだ。 日本はこれで、敵陣中央付近を使いづらくなってしまった。それに呼応するように、左サイドへの偏りが色濃くなっている。
  • 37-45分ギリシャ
    ギリシャは布陣を変えたが、速攻とセットプレーのため、平均ポジショニング表示から特別に読み取れることはない。しかし、あいかわらず、細かくつなぐのではなくシンプルにサイドに、そしてセットプレーという傾向は変わらない。こうした状況下で前半が終了する。
  • 36分に退場したカツラニスは中心選手
    退場したカツラニスが左右にボールを散らす心臓であることがわかる。
  • 36分までの今野
    今野は左サイドの攻撃の起点になっていることがわかる
  • 36分までの吉田
    吉田もパス回しの重要な起点だ
  • 45-55日本
    後半頭から、日本は長谷部に代えて遠藤を投入する。ボールを持てども点が取れない流れの中、パスの技術と戦術眼に優れる遠藤を入れることで、さらに攻撃のバリエーションを増やすためだ。 遠藤がまず、後半にやったことは右サイドへのボール配給だ。後半、カツラニス退場以降、ほとんど活用されていなかった、内田、大久保にボールをつけ始める。ギリシャの左サイドは攻撃的なサマラスのいるサイドで、守備に不安がある。初戦のコロンビア戦でも左から2失点している。まずはそこの攻略にかかろうという意図だ。
  • 45-55分ギリシャ
    退場以降、ギリシャは守備のネジを締め直す。中盤を4人で守る形に変えたことにより、センターバックの前のエリア、バイタルエリアに人をかけるようになる。カツラニス退場前は両サイドに人が割れてたポジショニングが、全く逆。真ん中にギュッと詰まる布陣に変わっているのがよくわかる。これにより、バイタルエリアに入ってくるボールに厳しく行けるようになった。日本が危険な地域でパスを回すシーンが激減する。48分、バイタルエリアにいた大迫に入るくさびを潰されるシーンが象徴的だ。
  • 56-66分日本
    この時間帯、お互いボールへの寄せが激しくなり、セットプレー、コーナーキックが増えるため、平均ポジショニング表示がほとんど意味をなしていない。横パスがほぼなく、縦に激しい応酬になっている。日本がボールを回しまくるいい流れから、ギリシャの守備陣形の変更を経て、流れが混沌としてきたことが陣形から見て取れる。日本にとって決して良いことではない。
  • 56-66分ギリシャ
    ギリシャも同様。ただはっきりしてるのはサマラスに預けるというお決まりの形であることだ。セットプレーが増えるのはギリシャの望む流れ。
  • 67-75分日本
    セットプレーのピンチを逃れて再びボールが落ち着き始めると、日本の選手のポジショニングが高い位置に維持されているのがわかる。ここから日本はペースを取り戻し、67分に決定的なチャンスを迎える。中央で大久保が仕掛けてラインが下がったところ香川に戻し、香川が右で上がっていた内田に通すと、内田がグラウンダーで中に折り返す。大久保が合わせるが枠に行かなかった。この試合最大のチャンスだった。
  • 67-75分ギリシャ
    ギリシャもしぶとく守る。カウンターで両サイドが上下動を繰り返すため、陣形では見難いが、守備時は完全に真ん中を固めている。開いた左サイドの高い位置に長友が張って、ここから長友のクロスが出始める。71分の内田が外した決定的なシュートも長友のクロスから生まれた。ギリシャの中の守備が厳しい。サイドを攻略して質の良いボールをゴール前に供給できるかどうか、という流れになっている。
  • 76-83分日本
    日本はさらに攻め立てる。はっきり引き分け狙いのギリシャから点を取ろうと圧力をかける。中を固め、下がったギリシャのディフェンスラインに対して、真ん中に人数をかけて押しつぶしを図る。大久保、香川、遠藤、本田が近い位置でプレー、両翼に長友と内田が待ち構える。構図ははっきりしている。日本が押し切るか、ギリシャが耐えるか。
  • 76-83分ギリシャ
    オープンなカウンターの打ち合いの時間が過ぎたギリシャは完全に引き分け狙いに切り替える。全員がほぼ自陣に張り付きの状態だ。相変わらず、真ん中だけからはやられまい、とする意図の見える陣形だ。もうつなぐ気はない。パスの線がほとんどない。
  • 84-試合終了 日本
    日本はサイドバックからのクロスを繰り返す。67分から試合終了までのクロスの本数は、全体の本数のおよそ半数を占める12本。しかし成功はわずかに1本。内田がたびたび右サイドを崩すが、最後のパスが通らない。ただクロスをあげるだけでは、中を固めたギリシャに跳ね返されてしまう。布陣だけ見れば完全に押し込んでいるが、ギリシャに粘られている。唯一通った長友のクロスも、吉田のヘディングが大きくバーの上に。アディショナルタイム以降は吉田を上げてパワープレーも用いるが、及ばなかった。
  • 84-試合終了 ギリシャ
    ギリシャも粘る流れは変わらず。粘って守るのはギリシャの得意なこと。割りきって時間稼ぎに徹して勝ち点1を手にした。
  • 30分から37分まで、日本最高の時間
    カツラニスの退場の数分前、日本は敵陣に深く入り込んで最高の形をつくっていたことがわかる布陣。
  • 理由その1 枠内シュートはペナルティエリア外からのみ
    ゲームを端的に表したデータをいくつか紹介しよう。あれだけ攻め立てながら、日本の枠内シュートはペナルティエリア外のみ。決定機で正確性を欠いたことが浮き彫りとなるデータ。
  • 理由その2 クロスに頼った
    67分以降、日本はクロスを12本浴びせるが、高さに弾き返され有効ではなかった。
  • 理由その3 カツラニス退場後の相手の守り
    サイドばかりでパス回し。バイタルエリアのやりとりがほとんどない
  • カツラニス退場前の15分は崩せていた
    バイタルエリアでボールをつなげている

ゲームを大きく分けたのは、相手選手の退場だろう。ギリシャは退場になって一人減ったことによって、4−4−1の布陣にして守りぬくことを選び、日本は攻めあぐむこととなった。退場までの時間は完全に日本の目指す形が続いており、前半のうちにものにしていれば、楽なゲームになったかもしれない。

相手が退場になったあと、攻めきれなかった原因は攻撃の選択肢の少なさだ。

守りを固めた相手にはミドルシュート、ドリブルでの仕掛け、ワンツーでの崩し、サイドをえぐってマイナス方向のパスなどが有効だが、日本はギリシャに真ん中を固められて得意の細かいパス回しを封じられると、空いた左右からひたすらクロスを放り込む攻めに終始してしまった。中で守備が待ち構え、高さもある相手に、単純にクロスを上げ続けるだけではなかなか苦しい。攻撃が行き詰まる中、空いたサイドを崩すドリブラー、たとえば齋藤学の投入や、縦にボールを入れられる青山の投入なども考えられたが、ザッケローニ監督は最後の交代カードを余したまま試合を終えた。この采配も議論を呼びそうだ。

その中で光ったのは右サイド。大久保は開いたスペースを見つけては動きまわり、ミドルシュートにドリブルの仕掛けにボールキープと、相手の嫌がることをし続けた。内田も点にはつながらなかったが、たびたび右サイドをえぐる攻撃をしかけていた。

コートジボワール戦から通じるのは「プランB」の乏しさで、得意の崩しの形ができなくなると途端に行き詰まってしまう。これではなかなか得点を奪うのは難しい。

最終戦を残した日本にとって、ギリシャがモチベーションを維持した状態でコートジボワール戦に臨むこと、コロンビアが勝ち抜けを決めて日本戦に臨むこと、この2つが望みだ。

コロンビア戦、日本は勝つしかない。どんなサッカーが見られるだろうか。

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