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横田めぐみさんの夫、金英男さんは今 韓国で忘れ去られる拉致被害者

2014年07月05日 14時16分 JST | 更新 2014年07月05日 14時22分 JST
AFP時事

[全州(韓国) 3日 ロイター] - 金英男(キム・ヨンナム)さんが1978年に韓国の西沿岸部で行方不明になったとき、まだ16歳の少年だった。その後、ヨンナムさんは北朝鮮にいることが判明し、日本人拉致被害者の横田めぐみさんと出会い結婚した。

北朝鮮は、2人が娘1人をもうけたが、めぐみさんは自殺したとしている。日本はめぐみさんの消息に関する北朝鮮の説明を受け入れてはいない。一方、ヨンナムさんに関する最後の情報は、北朝鮮で暮らしているというものだった。

だが、この2人に対するそれぞれの母国での受け止め方は全く対照的だ。

拉致されてから35年以上が経過する中、めぐみさんは日本における拉致問題の象徴的存在となった。

安倍晋三首相は在任中の拉致問題解決を掲げており、1日に中国・北京で開催された日朝政府間協議の結果、事態が進展する可能性も出てきた。

一方、韓国拉致被害者500人以上の1人とされるヨンナムさんの存在は、母国で完全に忘れ去られている。

ヨンナムさんの姉キム・ヨンジャさんは2日、インタビューに応じ「安倍首相が解決に向け明らかに努力しているのを見ると、私たちの政府は何をやっているのかと思わざるを得ない」とし、「私たちにできることは何もない」と目に涙を浮かべた。

<スパイ養成の教官>

めぐみさんは、北朝鮮が2002年、スパイ養成を支援させるために1970年━80年代に拉致したと認めた日本人被害者13人のうちの1人。そのうち5人は日本に帰国したが、北朝鮮はめぐみさんを含む残りの8人は死亡したと説明している。

日本政府は拉致被害者として17人を認定しており、死亡したとされる8人と、北朝鮮によって拉致された可能性のある他の行方不明者に関するより確かな証拠を要求している。

安倍首相が拉致被害者の救出を使命とする一方で、韓国政府は自国の拉致問題解決に消極的な姿勢を示している。

韓国政府が拉致被害者家族に対し、北朝鮮の支持者という烙印(らくいん)を押したという批判もある。

2000年当時、金大中(キム・デジュン)大統領による「太陽政策」のおかげで行方不明者への支持が高まり、そうした不名誉は和らいだが、韓国海軍の哨戒艦沈没事件や延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件(ともに2010年)が起きて以降、韓国は北朝鮮との対話の扉を閉ざし、拉致問題も立ち消えとなった。

拉致被害者家族の多くは地方の貧困層もしくは労働者階級であり、訴える手段はほとんどないという。韓国人拉致被害者家族会の崔成竜(チェ・ソンヨン)さんは「日本では、拉致被害者家族のもとに政府関係者がやってくるだろうが、韓国政府はそうはしない。ここでは、被害者家族が政府当局者と会うのは事実上不可能だ」と語った。

韓国統一省のある当局者は匿名を条件に、日朝政府間協議を受け、韓国が拉致問題解決に向けて北朝鮮と再び交渉する計画は当面ないとした上で、「政府は人道的見地から、引き続き拉致被害者が帰国できるよう努力する。拉致問題解決の機会があれば、いつでも北朝鮮と対話する」と述べた。

<統一事業>

52歳になるヨンナムさんは高校生のとき、友人らと休日に出かけた島で行方不明になった。姿を消した状況は明らかになっておらず、海で溺れたと考えられた。家族もヨンナムさんが死亡した可能性があるとしていた。

それ故、1990年代初めに訪れた韓国の諜報員2人から、ヨンナムさんは生きて北朝鮮にいると聞かされたとき、姉のヨンジャさんは衝撃を受けたという。「恐ろしかった。北朝鮮にいるなんて全く考えたことがなかった」と当時を振り返った。

ヨンナムさんは2006年、北朝鮮の景勝地である金剛山で行われた南北離散家族の再会事業で母と姉と対面を果たした。その際、1986年にめぐみさんと結婚したこと、めぐみさんがうつ病などを患い、94年に自殺で亡くなったことなどを話した。また、娘1人をもうけたが、めぐみさんの死後、北朝鮮の女性と再婚したとも伝えた。

また、このときヨンナムさんは自身が行方不明になったときの状況も説明。ボートの中で居眠りして流されてしまい、北朝鮮に助けられたとしているが、韓国では一般的に受け入れられていない。

めぐみさんの両親は今年3月、モンゴルの首都ウランバートルで孫にあたるキム・ウンギョンさんと初めて面会した。

しかし、ヨンジャさんが弟とまた再会できる希望は薄れつつある。ヨンジャさんがヨンナムさんに仕事は何かと尋ねると、「統一事業」と答えた。また「それなら、韓国に来てくれないか」と別れ際に懇願すると、ヨンナムさんは「それは難しいだろう」と答えたという。

(Ju-min Park記者、翻訳:伊藤典子、編集:橋本俊樹)

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