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EUが直面する「内憂外患」 結束を揺るがす3つの課題とは

2014年07月13日 23時29分 JST | 更新 2014年07月13日 23時29分 JST
Reuters

北大西洋条約機構(NATO)のイスメイ初代事務総長はかつて、西側軍事同盟の目的は「米国を引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込むことだ」との言葉を残した。現在の欧州連合(EU)が直面している課題は、「英国を引き止め、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」という言葉に言い換えられるかもしれない。

<英国を引き止める>

キャメロン英首相は、英国とEUの関係見直しを求めており、2017年にEU残留の是非を問う国民投票を実施すると公約している。つまり、向こう数年の欧州には、EUの権限や英国のEU離脱をめぐる議論がつきまとうことになる。

欧州域内3位の経済力を持ち、金融の中心地であり、軍事・外交面でも突出した存在である英国。仮にEU初の脱退国となれば、同国にとってのみならず、国際社会におけるEUの地位にも深刻な打撃となる。

次期欧州委員長の選出をめぐっては、EU首脳は先月、英国が強く反対していたユンケル前ルクセンブルク首相を最終的に指名した。禍根を残した欧州委員長人事は、来年の英総選挙でキャメロン首相が再選された場合に生じる「不和」を予兆している。

国内でEU懐疑派からの強い圧力にさらされる英国の首相には、外交交渉で強く出過ぎたり、主要同盟国を誤解させたり遠ざけたり、高過ぎる代償を求めたりするリスクがある。実際、ユンケル氏の欧州委員長選出をめぐっては、キャメロン首相はメルケル独首相とぶつかった。

過去40年にわたる英国の強硬姿勢に嫌気が差している一部の欧州大陸の政治家は、英国がEUを離脱した方が後々は楽になると考え、「去る者は追わず」に傾いている。

しかし、ユーロ圏の経済的・政治的な統合深化を邪魔しないという条件付きでなら、英国を引き止めておくことは、まさしくEUにとって最優先課題に違いない。

<ロシアを締め出す>

クリミア併合を強行し、ウクライナへのガス供給を停止し、ウクライナ東部を不安定化させたロシアのプーチン大統領は、欧州に地政学リスクを持ち込んだ。ロシア産ガスへの依存度低減は、EUにとって優先的な政策課題だ。

EU当局者らは、EUとの連合協定を結んだウクライナとグルジア、モルドバの旧ソ連3カ国に対し、ロシアが経済的な締め付けを強めてくることを危惧している。

一方、EU加盟国の間では、ロシア制裁の内容や、ウクライナのEU加盟の是非、ロシアが方針を転換した場合の対応などについて、足並みはそろっていない。

ドイツは、対ロ制裁でエネルギーや貿易面での利益を危機にさらすことに二の足を踏んでいる。フランスは、ミストラル級戦艦のロシア向け輸出の中止を渋っている。英国は、ロシアの富裕層が集まるオフショア金融センターとしてのロンドンの地盤沈下を避けたい。

ポーランドやエストニアといった旧ソ連諸国は、対ロシア強硬策を支持しているが、スロバキアやルーマニア、ブルガリアなどは、エネルギー調達やロシアとの経済関係を危険にさらすことには慎重だ。

EU東部をロシアによって不安定化させないことは欧州共通の利益だが、越えてはならない一線をどこにどう設定するかは、EUにとって大きな課題となるだろう。

<ドイツを抑え込む>

なぜ、ドイツを抑え込む必要があるのか。ドイツは多くの点で、経済的成功と安定した民主主義の先導役であり、欧州とNATOの要だ。

しかし、ユーロ圏危機を通じてEUに対するドイツの政治的支配力が強まったことで、欧州の多くの国では「強国」への警戒感が強まっている。経済政策や財政政策をめぐる各国とドイツの主導権争いはエスカレート確実とみられる。

フランスの弱体化、英国の離脱、欧州委員会の衰弱、ドイツ連邦憲法裁判所の影響力拡大は、いずれもEU内のバランスを変化させており、結果的にドイツの動向に注目が集まっている。

EU主要機関内ではドイツ出身者の存在感がかつてないほど増しており、そのこともフランスや英国では懸念材料になっている。

こうしたドイツ人たちはメルケル首相の駒ではなく、EUの公務員として、欧州連邦のビジョンに忠実であることは間違いない。

ただ、消費より倹約を旨とする「ドイツ的な考え」や緊縮強調姿勢は、欧州が「失われた10年」を回避するには和らげる必要がある。

ドイツ政府は先週、1969年以来となる新規国債発行額がゼロの2015年予算案を閣議決定した。一方で多くのエコノミストは、ドイツ政府は内需を喚起するための減税や公共投資拡大に動くべきだと指摘している。

経済的にも政治的にもEUの「お荷物」とみられることの多い重債務国イタリアは現在、レンツィ首相が改革を進めようとしており、ドイツからの政策の押しつけに抵抗している。

レンツィ首相の攻撃的姿勢は、経済再生に向けた緩和的な財政政策を切望するフランスなど南欧諸国からは支持を受けているが、メルケル首相からは限定的な譲歩しか引き出せていない。ただ、ユンケル次期欧州委員長の描くEUの経済政策から「ドイツ色」を薄める効果はあるとみられる。[ローマ 6日 ロイター]

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