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プーチン大統領の対ウクライナ「二重戦略」、親ロシア派劣勢で軟化も

2014年07月15日 22時59分 JST | 更新 2014年07月16日 23時51分 JST
ロイター

ウクライナ東部での戦闘が激化するなか、ロシアのプーチン大統領は、話し合いによる問題解決を支持する姿勢を示す一方、分離派への武器供与を続ける二重戦略を採用しているようだ。

元駐ウクライナ米大使で、現在はブルッキングス研究所のシニアフェローを務めるスティーブン・パイファー氏は「プーチン氏はこの数週間、裏表のある行動を取ってきた」と指摘。「ロシアが外交的な問題解決に協力したいと考えていることを示す状況がある一方、ロシアからウクライナに武器が流入し続けている」と語った。

数カ月間にわたって好戦的な発言をしてきたプーチン大統領は3週間前、 ロシア議会上院の連邦会議に要請し、ロシア軍に付与したウクライナへの軍事介入権を撤回させた。さらに今月10日には、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領と電話会談を行い、ウクライナでの停戦の必要性で一致した。

米政府関係者の間では、プーチン大統領の態度が変わった理由をめぐって議論が活発化している。

オバマ政権当局者は、欧米による制裁がロシア経済を減速させただけでなく、ウクライナ東部の混乱を拡大させようとするプーチン大統領の試みを阻害したと評価している。

だが、元米外交官らはこうした制裁は効果を上げたものの、ロシアの狙いを阻止する主な要因ではないと指摘。ウクライナ新政権が成功していることや、分離派の失敗が主因だと主張する。

2月まで米国の駐ロシア大使を務めていたマイケル・マクフォール氏は「ウクライナの動向が第一の要因だ」とみている。

5月に就任したウクライナのポロシェンコ大統領は、予想以上にうまく同国軍の戦闘能力を高めた。一方、同国東部の親ロシア派の、支持拡大に向けた取り組みはうまくいっておらず、同地域の大部分の市民と関係を築けていない。

「分離派は長居して歓迎されなくなっている。市民はうんざりしている」と、パイファー氏は指摘する。

ポロシェンコ大統領は14日、ロシア軍の将校らがウクライナ国内の親ロシア派勢力に加わり、ウクライナ軍と戦闘を繰り広げていると非難。また、ウクライナ当局者は11日、同国兵士23人が死亡したロケット弾攻撃について、ロシアの武器が反体制派に流入していることを示していると指摘した。ロシア当局者は反体制派への武器供与を否定している。

2010─2014年1月まで米国家情報会議(NIC)に務め、ロシア情勢に詳しいユージン・ルーマー氏は、ポロシェンコ大統領の就任以降の強力な手腕が、ロシア軟化の鍵になっているとみている。

同氏によると、ポロシェンコ大統領は東部和平案を示す一方、分離派への断固とした軍事行動を仕掛けているが、同時にプーチン大統領にはより柔軟な方針を取っている。

ルーマー氏は「(ポロシェンコ大統領が)ロシアへの追加制裁に反対する意向を表明したことは嬉しい驚きだった。彼は政治家らしい。取引に前向きであることをロシアに示している。それは重要な展開だ」と語った。

<国家主義>

ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)のロシア局長を務めたトーマス・グラハム氏は、プーチン大統領がウクライナ東部に進攻し、同地域を併合することは望んでいないと指摘。同大統領の狙いは、ウクライナ政府への影響力を維持することだとの見方を示す。

グラハム氏は「実際の狙いはウクライナ政府に対する影響力を持つことだ。そして最低限、同国が敵対せず、欧州に急速に接近しないことを確実にすることだ」と語った。

元駐ウクライナ米大使のパイファー氏は、ポロシェンコ大統領は軍事面で過度に攻撃的になるリスクがあると分析。ウクライナ軍は今月、人口約13万人の東部ドネツク州スラビャンスクを奪還した。

しかしパイファー氏は、分離派が最後の抵抗の構えを見せるドネツク市の奪還については、はるかに困難だろうと指摘する。多くの市民や分離派の命を犠牲にする軍事作戦は、ウクライナ政府に対する国民の見方を変える可能性がある。

同氏は「ポロシェンコ氏にとっては、強く出過ぎないことも重要になる。国民の反感を買う軍事作戦は望まないだろう」と述べた。

カーネギー財団のロシア専門家で、クリントン政権でNSCに務めていたアンドリュー・ワイス氏は、プーチン大統領も国家主義によって自身への政治的な懸念を招いたと指摘する。

同大統領は、ウクライナ東部で親ロシア派の愛国精神をあおっておきながら、見放したとしてロシア国内の右派の政治家から批判されている。

ワイス氏は「彼らが殺害されたり、敗北した場合、ロシア政府に対応を求める強い圧力がかかるだろう」とみている。[ニューヨーク 14日 ロイター]

(David Rohde記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:橋本俊樹)

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