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安倍首相、「広島原爆の日」の挨拶 "去年のコピペ"疑惑を検証する

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8月6日、広島への原爆投下から69年目を迎え、安倍晋三首相が平和記念式典で挨拶した内容を巡って、「昨年の挨拶と同じでは」との疑惑が持ち上がっている。

ネット上で話題となり、世田谷区議会の上川あや議員がツイートしたところ、3000を超えるリツイートを記録している。

改めて上川議員がやったように、首相官邸が発表している2014年2013年のテキストを文書比較ツールにかけた。

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スピーチはおおまかにわけると、前段の挨拶、政府の取り組みの説明、締めの挨拶の三部構成になっている。冒頭から比較してみよう。

■冒頭の挨拶はほとんど同じ

【2013】広島市原爆死没者慰霊式、平和祈念式に臨み、原子爆弾の犠牲となった方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます。今なお被爆の後遺症に苦しんでおられる皆様に、心から、お見舞いを申し上げます。

【2014】広島市原爆死没者慰霊式、平和祈念式に臨み、原子爆弾の犠牲となった方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます。今なお被爆の後遺症に苦しんでおられる皆様に、心から、お見舞いを申し上げます。

まず、最初の段落はまったく同じだ。

一番最初に違いが出るのは2段落目冒頭の、69年目というところ。ここは当然として、次が2013年は「一発の爆弾」だったのが、2014年には「一発の原爆」に改められている。しかし、実際に安倍首相がスピーチした内容を動画で確認すると、2014年も「一発の爆弾」と読んでおり、実は変わっていない。

【2014】年前の朝、一発の爆弾が、十数万になんなんとする、貴い命を奪いました。7万戸の建物を壊し、一面を、業火と爆風に浚わせ、廃墟と化しました。生き長らえた人々に、病と障害の、また生活上の、言い知れぬ苦難を強いました。

【2014】年前の朝、一発の原爆が、十数万になんなんとする、貴い命を奪いました。7万戸の建物を壊し、一面を、業火と爆風に浚わせ、廃墟と化しました。生き長らえた人々に、病と障害の、また生活上の、言い知れぬ苦難を強いました。

次の3段落目も多くは同じ文章。「蝉しぐれが今もしじまを破る、」の部分が2013年から削られているが、これは2013年が晴天のなか行われたのに対し、2014年は雨。上川議員の指摘通り、天候に合わせて削除したのだろう。

【2013】犠牲と言うべくして、あまりに夥しい犠牲でありました。しかし、戦後の日本を築いた先人たちは、広島に斃れた人々を忘れてはならじと、心に深く刻めばこそ、我々に、平和と、繁栄の、祖国を作り、与えてくれたのです。蝉しぐれが今もしじまを破る、緑豊かな広島の街路に、私たちは、その最も美しい達成を見出さずにはいられません。

【2014】犠牲と言うべくして、あまりに夥しい犠牲でありました。しかし、戦後の日本を築いた先人たちは、広島に斃れた人々を忘れてはならじと、心に深く刻めばこそ、我々に、平和と、繁栄の、祖国を作り、与えてくれたのです。緑豊かな広島の街路に、私たちは、その最も美しい達成を見出さずにはいられません。

続いて4段落目は趣旨は同じだが、表現に細かい違いがある。

【2013】私たち日本人は、唯一の戦争被爆国民であります。そのような者として、我々には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。

【2014】人類史上唯一の戦争被爆国として、核兵器の惨禍を体験した我が国には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。

■実績を語る部分には大きな違い

前段の挨拶を終え、核軍縮ハイレベル会合など、昨年からの実績について説明する次のパートからは、まったく違う文章になっている。

【2013】昨年、我が国が国連総会に提出した核軍縮決議は、米国並びに英国を含む、史上最多の99カ国を共同提案国とし巻き込み、圧倒的な賛成多数で採択されました。
本年、若い世代の方々を、核廃絶の特使とする制度を始めました。来年は、我が国が一貫して主導する非核兵器国の集まり、「軍縮・不拡散イニシアティブ」の外相会合を、ここ広島で開ます。

【2014】私は、昨年、国連総会の「核軍縮ハイレベル会合」おいて、「核兵器のない世界」に向けての決意を表明しました。我が国が提出した核軍縮決議は、初めて100超える共同提案国を得て、圧倒的な賛成多数で採択されました。包括的核実験禁止条約の早期発効に向け、関係国の首脳に直接、条約の批准を働きかけるなど、現実的、実践的な核軍縮を進めています。
本年4月には、「軍縮・不拡散イニシアティブ」の外相会合を、ここ広島で開催し、被爆地から我々の思いを力強く発信いたしました。来年は、被爆から70年目という節目の年であり、5年に一度の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催されます。「核兵器のない世界」を実現するための取組をさらに前へ進めてまいります。

続く、原爆症認定についての取り組みも、2013年からの前進をアピールしており、文面は異なる。

【2013】今なお苦痛を忍びつつ、原爆症の認定を待つ方々に、一日でも早くその認定が下りるよう、最善を尽くします。被爆された方々の声に耳を傾け、より良い援護策を進めていくため、有識者や被爆された方々の代表を含む関係者の方々に議論を急いで頂いています。

【2014】今なお被爆による苦痛に耐え、原爆症の認定を待つ方々がおられます。昨年末には、3年に及ぶ関係者の方々のご議論を踏まえ、認定基準の見直しを行いました。多くの方々に一日でも早く認定が下りるよう、今後とも誠心誠意努力してまいります。

■締めの挨拶もほぼ同じ

最後の挨拶も同じといっていい。「旧倍」が「倍旧」に、「恒久平和」が「世界恒久平和」に言い換えるなど、ごく細かい違いのみ。ご冥福と御冥福は表記の揺れ、「お祈りします」と「お祈りいたします」に至っては、実際の動画では「お祈りいたします」と読んでおり、変わっていない。

【2013】広島の御霊を悼む朝、私は、これら責務に、旧倍の努力を傾けていくことをお誓いします。結びに、いま一度、犠牲になった方々の冥福を、心よりお祈りします。ご遺族と、ご存命の被爆者の皆様には、幸多からんことを祈念します。核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。

【2014】広島の御霊を悼む朝、私は、これら責務に、倍旧の努力を傾けていくことをお誓いいたします。結びに、いま一度、犠牲になった方々の冥福を、心よりお祈りします。ご遺族と、ご存命の被爆者の皆様には、幸多からんことを祈念します。核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、世界恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。

■2013年を“下敷き”にしたことは確実

こうして比較してみると、2014年のスピーチは2013年を元に、実績部分のみ書き換え、前後の挨拶部分はほぼそのままであることがわかる。

では、第一次安倍政権時の2007年8月6日の挨拶はどうか。一目瞭然、2013年、2014年と趣旨は似ているが、全く別の文章だ。

2013年と2014年の第二次政権下での挨拶にはない、特徴的な文言がある。

「今後とも、憲法の規定を遵守し」――。

 本日、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式に当たり、原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。また、今なお被爆の後遺症に苦しまれている方々に、心からお見舞い申し上げます。

 広島は、焦土から立ち上がり、国際平和文化都市として、大きく成長しました。今日まで、広島の復興と発展に尽力された多くの皆様に心から敬意を表します。

 今から六十二年前の今日、原子爆弾がこの地に投下されました。広島の広範な地域で十数万ともいわれる尊い命が一瞬にして奪われ、多くの方々が傷つき、今も残る耐え難い障害に苦悶されています。

 七万戸に及ぶ建物が破壊され、市民の財産の大半が灰燼に帰するなど、ここ広島の地は廃墟と化しました。

 我が国は、戦後六十二年の間、ただひたぶるに国際平和への途を歩んでまいりました。広島、長崎の悲劇は、この地球上のいかなる地においても再び繰り返してはなりません。我が国は、人類史上唯一の被爆国として、この悲惨な経験を国際社会に語り継いでいく責任があるのです。

 私は、犠牲者の御霊と広島市民の皆様の前で、広島、長崎の悲劇を再び繰り返してはならないとの決意をより一層強固なものとしました。今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していくことを改めてお誓い申し上げます。

 また、国連総会への核軍縮決議案の提出などを通じて、国際社会の先頭に立ち、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向け、全力で取り組んでまいります。

 政府は、被爆者の方々に対して、これまで保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護施策を充実させてきました。本年四月からは、原爆特別養護ホーム「矢野おりづる園」を新たに開設したところです。今後とも、被爆者の方々の切実な声に真摯に耳を傾け、諸施策を誠心誠意推進してまいります。

 終わりに、犠牲となった方々の御冥福と、被爆者並びに御遺族の皆様の今後の御多幸、そして広島市の一層の発展をお祈り申し上げます。

 
平成十九年八月六日
内閣総理大臣 安倍晋三


(「広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式 内閣総理大臣挨拶」より 2007/08/06)

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原爆投下直後の広島
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