ニュース

東南アジア、中国の海洋進出に対抗 自前の軍需産業を育成

2014年08月13日 17時26分 JST | 更新 2014年08月13日 17時27分 JST
Reuters

[クアラルンプール 12日 ロイター] - 南シナ海での領有権問題をめぐり、中国との緊張が高まる東南アジア諸国。急増する軍事予算を国内での技術開発に注ぎ込み、欧米の武器メーカーへの依存を低下させることで、自国の防衛産業を築こうとしている。

インドネシア、タイ、マレーシアなどは、欧州のエアバスや米ロッキード・マーチンなど巨大防衛企業との大型契約を破棄することはないが、自国企業に防衛機器を製造するよう呼びかけを強めている。

2016年の東南アジア地域の防衛費は前年比10%増の400億ドル(約4兆円)に達する見通し。すでに国産の防衛機器を輸出している国もある。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国にとって、程度の差こそあれ、国内防衛産業の育成は長い間、安全保障の面ではもちろんのこと経済的な目標であり、地域の軍事バランスを維持するうえでも老朽した設備の近代化に支出を拡大してきた。安全保障の専門家は、南シナ海での領有権を主張する中国の活発な動きにより、こうした目標の緊急性が過去数カ月で一段と高まったと指摘する。

ASEANは、軍事力増強の理由として中国を名指しすることは避けている。先週末にミャンマーで開催されたASEAN外相会議の共同声明でも、中国には直接言及せず、緊張が高まる状況を前に「深刻な懸念」を訴えるにとどまった。

「これで東南アジア各国政府が確実に主権を念頭に置くようになる」。こう語るのは、防衛関連調査会社IHSジェーンのアジア太平洋地域担当アナリスト、ジョン・グレバット氏。「中国の活動が領土の保護という問題を提起したことは明らか」だと指摘するう。

昨年の軍事費が1450億ドル超と推計される中国は、南シナ海の約9割の領有権を主張している。今年に入り、ベトナムも領有権を主張する海域に石油掘削装置(リグ)を設置するなど強引な行動に出ており、東南アジア諸国の外交官を警戒させている。

また中国は、軍艦を配備せずとも、沿岸警備隊を増強することで同海域での存在感を強めた。これに同じような形で対抗しようとする国もある。ベトナムは沿岸警備船や監視船32隻の購入に11.5兆ドンを充てている。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータによると、2013年の東南アジア全体の防衛費は、前年比5%増の359億ドル。2016年までには400億ドルに届くとみられている。SIPRIによると、同地域の防衛費は1992年から2倍以上に膨れ上がっているという。

<自国防衛産業の発展>

東南アジア諸国の防衛機器調達では、政府がロッキード・マーチンやエアバス、独ティッセンクルップなど西側メーカーからジェット機や潜水艦などを購入する形が中心だ。

とはいうものの、現在はインドネシアのレーダーからシンガポールの潜水艦まで、各国政府は自国の防衛技術発展に役立つような機器購入に傾いている。規模と範囲においてはまだ記録的とは言えないものの、最近の防衛機器調達リストを見てみると、自国企業を組み入れる傾向が強まっているのは明らかだ。

1つの例を挙げると、マレーシアの造船大手ボーステッド・ヘビーインダストリーズは、仏造船会社DCNSと90億リンギットの契約を結び、自国海軍の艦艇6隻を建造する。

同社副会長のAhmad Ramli Mohd Nor氏はロイターに対し、「すでに巡視船の第一世代の知的所有権を保有している。これが海外市場に参入するプラットフォームになるだろう」と述べた。

また、過去5年間で防衛支出が2倍以上に増加したインドネシアは今年、仏国防・電機大手タレスと1億6400万ドルに上る防空システムの契約を結んだ。契約条件の1つとしてタレスは、インドネシアの国営電子機器企業レン・インダストリにレーダー製造技術と知識を移転しなくてはならない。

同様に、シンガポールも独ティッセンクルップ・マリン・システムズから潜水艦2隻を購入すると発表。その条件には戦闘システム開発で自国企業の関与を挙げている。

<シンガポールが旗振り>

シンガポールは武器輸入大国である一方、東南アジアでは防衛産業が群を抜いて進歩している国でもある。

シンガポールは1971年にマレーシアに初めて武器輸出したのを皮切りに、ナイジェリアからブラジルなどに防衛機器を輸出してきた。

SIPRIによると、同国の防衛関連大手シンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリング(STエンジニアリング)の売上高は、2012年には18億9000万ドルに上った。

突破口となったのは、2008年にSTエンジニアリングの子会社が英国に部隊輸送機を供給する3億3000万シンガポールドルの契約を結んだことだ。主要な西側の武器供給国に対する初めての輸出であり、特定分野においては世界で戦えることを証明してみせた。

防衛経済学の専門家である英クランフィールド大学のロン・マシューズ教授は「シンガポールは海外との契約では双方にとっての最善の利益を掲げ、多くの規制や非現実的な期待に束縛されることもない」との見方を示した。

とはいえ、当面は東南アジア防衛産業の台頭が世界的企業を脅かすことにはならないと専門家はみている。欧米諸国の軍事予算が縮小傾向にあるなか、武器製造メーカーにとって、東南アジアの右肩上がりの防衛費は魅力的に映るだろう。

現在は同地域の企業が高度な技術力に欠けていることから、大型受注をめぐって大手企業と真っ向勝負することにはならない。

その代わり、東南アジアの企業は弾薬や小型船舶、修理・補修といった分野に焦点を合わせ、補完的な役割を担うことが可能だ。だがそれも、世界市場に参入するようになるなら、時と共に変化していく可能性はある。

コンサルティング会社マッキンゼーのシニアパートナー、ジョン・ダウディ氏は「世界的な防衛企業にとって、短期的にはチャンスだが、長期的にはチャレンジだ」と語った。

(Yantoultra Ngui記者 翻訳:伊藤典子 編集:宮井伸明)

【関連記事】

関連記事

南沙諸島の画像集