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【小平市住民投票】情報開示訴訟判決、市民「知る権利」の訴え届かず

2014年09月05日 21時19分 JST | 更新 2014年09月05日 21時19分 JST
猪谷千香

東京都小平市で2013年5月に都道建設計画の見直しをめぐって行われた住民投票の結果が公表されないのは違法であるとして、住民グループが小平市に情報開示を求めた裁判で、東京地裁は9月5日、住民グループの訴えを退ける判決を下した。住民グループは「市民の知る権利が認められず、残念な判決」として控訴する方針だ。地方自治や行政に市民の意思を反映させるための住民投票だが、今回の判決はそのあり方に揺さぶりをかけた。

■「知る権利」か、「投票の秘密」か

小平市では都道路建設計画が進められているが、予定地にあたる雑木林の保存を求める住民グループの署名活動などにより、東京都では初めてとなる住民投票が実施された。5万1010人もの市民が投票したが、投票率は投票率は35.17%で、小平市が議会で可決した成立要件である50%に満たなかったことから、「不成立」として開票されなかった。これに対し、住民グループは結果を公表してほしいとして、投票用紙の公開を求めていたが認められず、東京地裁に訴えていた。

裁判では、小平市が住民投票の投票用紙は「情報公開条例第7条第1号」(法令秘情報)に該当、誰がどう投票したかを秘密にする「投票の秘密」の侵害にあたるため公開できないと主張。これに対し、住民グループが憲法の「知る権利」や小平市自治基本条例の「市政に関する情報を知る権利」、小平市の情報公開条例の「何人も市政情報の公開を求める権利を保障する」などを鑑みて、小平市の判断は間違っていると訴えていた。

判決では、小平市の主張を適法と判断、住民グループの訴えを退ける結果となった。住民投票条例で投票率が50%に満たない場合は開票しないと議会で議決され、市報でも事前に告知されていたことにも触れている。小平市選挙管理委員会では判決を受け、「住民投票条例や情報公開条例などに基づいた極めて妥当な結果」とコメントした。

■達成不可能な投票率50%を成立要件に突きつけた小平市

判決後、会見を行った住民グループ側の三宅弘弁護士は、「法令解釈を適切にしていただきたかった。判決では投票用紙を公にすると、個人が特定されないとは限らないとしたが、住民投票の記入は◯をするだけで、一般通常の考え方からすれば疑念。この判決は、憲法や情報公開条例を適用すべきというロジックを認めていないため、控訴します」と話した。

また、同じく原告側の中島敏弁護士も「小平市は投票率が50%に達成していないから成立しない、公開もしないと拒んでいます。そもそも、小平市の過去22年間の市長選挙でも投票率は50%を超えたことがない。現市長の選挙でも37%でした。このように都会の選挙では達成不可能な投票率であることをあらかじめ知った上で、住民投票を骨抜きにしています」と批判した。

市民から多くの署名を集め、住民投票の実現に奔走した原告の一人、水口和恵さんは、「住民投票に参加した5万1010人の意思が明らかにされないことに不満とやりきれない思いが残っています。納得できるものではないです」と憤りをにじませた。

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判決を受けて会見する住民グループ側

■「住民投票活用への途を閉ざした」

住民グループにとっては「不当判決」が出された夜、裁判所へ傍聴に訪れていた市民らが集会を開いた。勝訴を信じていただけに、住民グループの活動を支持してきた市民からは落胆の声が聞かれた。

集会の中で、徳島県吉野川可動堰建設をめぐる住民投票の世話人を務めた成蹊大学の武田真一郎教授は今回の判決について「国、地方を問わず、行政は自分たちが決めた政策を変えたくないという傾向があると言われている。判決はこのような行政の画策を追認し、住民投票の活用への途を閉ざした点できわめて問題」と批判した。

武田教授によると、ドイツのほとんどの州では、住民投票について投票率ではなく得票率を成立要件しているという。「多数(過半数)となった意見が投票資格者(有権者)の4分の1以上となった場合に成立するという規定にすれば、2分の1(50%)以上の投票資格者が投票してその意見が多数となったのと同じことになり、棄権者やボイコット運動によって投票自体が不成立となる可能性が非常に低い」からだ。

市民の「知る権利」はどこまで実現し、「住民投票」で行政に市民の声を反映させることはできるのか。舞台は控訴審に移される。

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