G20「機動的な財政政策」で合意、日本は財政再建の意欲示す

オーストラリア・ケアンズで行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済の成長はばらつきがあり、雇用創出に必要なペースを下回っているとの認識で一致。
ロイター

オーストラリア・ケアンズで行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済の成長はばらつきがあり、雇用創出に必要なペースを下回っているとの認識で一致。成長と雇用を促すため財政政策を機動的に実行することで合意した。

麻生太郎財務相は10%への消費増税は経済状況を勘案して今年中に判断すると説明。2020年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標へ新たな計画を準備すると表明した。

<各国の事情に応じて財政出動、思惑にずれ>

G20は会合後の声明で、米国などを念頭に「いくつかの主要国の力強い経済状況を歓迎する」としたが、「世界経済の成長にはばらつきがある」と指摘。「地政学的緊張を含め、下方リスクが残っている」との認識を踏まえ、「短期的な経済状況を勘案し、機動的に財政戦略を実施する」と明記した。

特に欧州ではデフレ懸念も台頭しており、財政収支がバランスしているドイツには財政出動の余地があるとみられている。麻生財務相も財政戦略の議論に関して「国によって事情は違う」としながらも、「たとえばドイツは財政収支が完全にバランスしている」と説明。対応の余地があるとの認識を示した。

ただ、ドイツのショイブレ財務相は、持続的成長には持続的な財政・構造改革・投資が必要だと指摘。需要拡大に向け、追加措置をとる余地は小さいとの認識がG20で共有されているとの見方を示した。

一方、米国のルー財務長官は、G20では「欧州の景気回復には一段の措置が必要との認識を強めた」と強調した。

<5年間で2%の成長引き上げへ、追加策必要>

今年2月、シドニーでのG20で合意した、今後5年で2%の成長を引き上げる目標については、国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)が各国の施策をレビューした結果、現時点では1.8%の追加成長が可能と評価された。声明では、さらに2%の目標実現へ「追加的な施策の特定を引き続き進める」こととした。

また、G20声明では、金融市場の動向に関して、低金利などの環境下で金融市場が過度なリスクに向かう可能性に留意するとした。また、米国が利上げ局面に入っていることを念頭に、金融政策を変更する際には、世界経済への影響に留意するとの表現も盛り込んだ。

<日本は財政再建を約束>

麻生財務相はG20で日本経済や成長戦略について説明、消費増税の影響はあったが均してみれば成長は続いていると述べた。さらに財政再建に関連して、2015年度のPB赤字半減に向けて取り組む必要があること、さらに10%への消費増税について「経済状況を総合的に勘案して、今年中に適切に判断する」と伝えた。また、2015年度予算策定後には2020年度のPB黒字化目標達成のため新たな計画を準備する必要があると表明、財政再建への意欲をコミットした。

また、G20として合意した成長促進に関する日本の対応については「今年第3四半期のGDPなど経済指標を見極めたうえでどうするか決めたい」と述べるにとどめた。

日銀の黒田東彦総裁は2%の物価安定目標に向けた量的質的金融緩和(QQE)について説明、「国際的理解が十分得られていると感じた」との認識を示した。

<為替で特段の議論なし、黒田総裁「問題あるとは思っていない」>

最近の為替市場では、米国と日・欧の金融政策の方向性の違いからドルが買われ、1ドル109円台まで上昇しているが、今回のG20では為替相場について「特段の議論はなかった」(麻生財務相)という。G20声明も、「G20における為替相場のコミットメントの順守を続ける」とし、金融政策によって為替水準を誘導しないとの取り決めを守ることを再確認する内容にとどまった。

麻生財務相自身、現在の為替動向はファンダメンタルズに沿った動きか、などといった記者団の質問にはコメントせず、「リーマン・ショックが起きたときは108円で今と同じ価格だった」と述べた。

一方、黒田東彦日銀総裁はケアンズに到着した際、記者団に対し、「今の(円相場の)動き自体について何か問題があるとは思っていない」と発言。足元の円安を容認する姿勢を示している。

[ケアンズ 21日 ロイター]

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