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【マタハラ】広がる被害者の声 ネットで署名8000人、9月23日にはシンポジウムも

2014年09月22日 18時42分 JST | 更新 2014年09月23日 19時32分 JST
猪谷千香

妊娠や出産をきっかけに解雇・雇い止めされたり、降格されるなどの嫌がらせを職場で受けるマタニティ・ハラスメント(マタハラ)をなくそうという声が広がっている。女性が妊娠、出産しながら働き続けるために、労働基準法や男女雇用均等法、育児介護休業法などでさまざまな法的な保護がされているが、徹底されておらず、被害に遭う女性が後を絶たない。

そこで、政府が進めている女性の管理職登用などを促す法案に、法律の遵守を徹底することの明記を求めるキャンペーンがネット上で行われ、現在までに8000人を超える署名が集まっている。9月18日には、妊娠を理由に職場で降格されたのは法律に反するとして、広島市の病院に勤めていた女性が病院を運営する団体に損害賠償を求めた訴訟の上告審弁論が最高裁で開かれ、同日、傍聴していたマタハラ被害者のグループの交流会も開かれた。また、9月23日にも東京でシンポジウムが開催、マタハラの実態が報告されるという。

■最高裁まで争われている「マタハラ」とは?

マタハラ被害者が中心となり、「安心して妊娠、出産、子育てしながら働き続けられる社会の実現」を目指して活動している「マタハラNet」では、9月18日に最高裁でのマタハラ訴訟の弁論を傍聴。その後、都内で弁護士や研究者、被害者の女性たちと交流会を開き、マタハラ訴訟の原告弁護人である下中奈美弁護士が訴訟の経緯などについて解説した。

訴訟では、理学療法士として広島市の病院に勤めていた女性が、第2子妊娠をきっかけに請求した異動により、副主任の役職を外されたことが、男女雇用均等法で禁じている「不利益処分」に当たるかが争点となっている。この訴訟は断片的な報道が多く、ネットでは「軽い業務への転換を自ら希望したのに、異動で役職を外されたのを不服に思うのはわがまま」など女性に対する批判もあった。

しかし、下中弁護士からは、女性が一度目の妊娠で同じ請求をした際には役職は保持されたことや、被告側が主張する「異動先の部門には当該役職がなかった」ことの合理的説明がないことなどが、詳しく説明された。さらに、下中弁護士によると、育児休暇後に職場復帰しても、役職は外されたままだった。女性は4年間もこうしたマタハラと戦ってきたという。その訴訟の判決は、10月23日に下される。

■10年かけて積み上げてきたキャリアが妊娠、出産でリセット

女性の場合は訴訟という手段をとったが、実際にはマタハラに遭っても泣き寝入りする女性が少なくない。交流会には、「働く女性とマタニティ・ハラスメント」(大月書店)の著者で、立教大学社会福祉研究所特任研究員の杉浦浩美さんも参加。「今、こうやって当事者の方たちが発言をして自分たちで社会にこの問題を訴えていらっしゃることに、感慨深いものがあります」と話した。

杉浦さんは2001年から、働きながら妊娠、出産している女性が抱える問題を研究している。しかし、ある男性研究者に「働く妊婦さんの問題についての研究がない」と話したところ、「研究がないということは問題がないということじゃないかな」と言われたという。

「当時はそういう認識で、働く妊婦が大変なので配慮してくださいと言ったら、仕事を辞めればいいというのがまかり通っていた。2000年代から、それがおかしいということが社会的なコンセンサスになってきて、2013年には、連合による『マタニティ・ハラスメントに関する意識調査』も行われ『マタハラNet』などの動きも出てきました」

杉浦さんはこんな事例も紹介した。

「私が調査した女性のなかには、『キャリアリセット』という言葉を使う人もいました。例えば、何年もかけて積み上げたキャリアが、半年や1年の産休・育休をとるだけで、降格されたり、昇進試験を受けられなくなったりなど、リセットされてしまうこともある。どうしてそんなことがまかり通るのか。それから、残業や出張も断らずに、リスキーなギリギリのラインで就業継続している女性もいる。それでゴールを迎えてしまえば、『うちの女性社員は頑張り屋さん』で済まされる。それではだめです。アウトな時は、切迫流産などの危険もあります。もっとセイフティネットを広くとった中で女性労働者が働ける環境が必要です」

■9月23日には「たかの友梨」の労働実態を報告するシンポジウム

マタハラ被害は後を絶たないが、マタハラに対する認知は徐々に広がり始めている。マタハラNetではキャンペーンサイトの「Change.org」で9月23日18時まで、「女性活躍推進新法にマタハラ防止のための一文を!」というネット署名を呼びかけている。現在は8000人を超える署名が寄せられている。

政府が秋の臨時国会で、女性活躍推進のための新法の提出を目指していることに対し、「政府が本当に『女性が輝く日本』を目指すのであれば、女性管理職を増やす以前に、こうしたボトムの問題こそ直視し、女性が安心して出産し、働き続けられる環境を整えることが不可欠であるはず」として、始めたもの。法案に労働基準法や男女雇用均等法、育児介護休業法の順守を徹底することの明記を求めている。すでに9月10日には一度目の署名、5896筆を厚生労働省雇用均等政策課に提出。9月23日までに集められた署名を9月24日に再度提出、記者会見も行う予定だ。

また、9月23日には東京都千代田区で、シンポジウム「ブラック企業時代の『マタハラ』を考える 女性労働の現状と課題」が開かれる。マタハラNetからは被害の実態を報告。また、ブラック企業対策弁護団からは「たかの友梨」の労働実態などが報告される。

マタハラNet代表の小酒部さやかさんは、「いろいろなハラスメントがありますが、マタハラはとにかく深刻です。私たちが声をあげることで社会を変えていきたいです」と話している。

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