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短観が示す深刻な人手不足 物価後押しでも成長に足かせ

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10月1日、9月日銀短観では、人手と設備の不足が根深い構造問題となっていることが浮き彫りとなった。都内で8月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino) | Reuters
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[東京 1日 ロイター] - 9月日銀短観では、人手と設備の不足が根深い構造問題となっていることが浮き彫りとなった。供給力の不足感は需給ギャップ改善を通じて物価上昇に寄与する一方、人件費上昇や建設要員不足によって、事業の遅れや計画に比べ設備投資の実行が下振れする現象をもたらしている。

供給力改善が遅れれば、成長力回復に支障が出かねず、名目3%・実質2%成長を掲げるアベノミクスにとって、大きな障害になりつつある。

<雇用不足、深刻な状況に>

今回の短観では、業況感が悪化した業種が多かったが、雇用人員判断や設備判断は不足方向に進行した。

企業が雇用の過剰か不足かを示す「雇用人員判断」において、大企業から中小企業まで全規模全産業で不足超過となった。これは2008年3月以来のことだ。

特に中堅・中小企業での不足超過幅は大きい。消費税引き上げ後の景気停滞局面にもかかわらず、あらためて人手不足の深刻さが明らかになった。

現場では、技術者不足を背景に、大企業が待遇の改善や賃金提示額の引き上げを行っており、中小企業から人材が流出している例も後を絶たない。

8月ロイター企業調査では、労働力の十分な確保が以前より難しいと感じている企業は61%に上っている。

日銀では、こうした雇用不足の動きから、来春の春闘でも賃金上昇につながるとして、物価上昇の最大の支援材料として期待する声もある。 成長率が低くても、日本経済の供給力の低さで、物価は上昇を続けるとの黒田東彦総裁の見方に沿った流れが、進行しているように見える。

<設備不足も強まり、需給ギャップ改善が物価押し上げ>

また、企業が設備の過剰か不足かを示す「生産・営業用設備判断」では、大企業・製造業は2ポイント不足方向に改善した。リーマンショック以降続いていた設備過剰感が解消される一歩手前まで来ている。

老朽化設備の維持・更新が必至となっているほか、人手不足感から省力化投資の必要に迫られる企業も多いとみられる。設備投資計画は例年になく9月調査で上方修正されており、企業の投資意欲は強い。

雇用や設備といった日本経済の供給力の不足感は、需給ギャップの改善をもたらし、結果として物価には上昇圧力がかかる。

日銀は需給ギャップを推計するために、設備判断と雇用人員判断をもとに「短観加重平均DI」を作成しているが、今回の9月短観では、これが6月からさらなる需要超過に改善する見通しだ。物価には押し上げ要因となり、日銀にとっては2%の物価目標達成に自信を深める要因となりそうだ。

このDIを独自に試算しているニッセイ基礎研究所によると、6月の5.6から9月は8.5の需要超過となる見通し。「景気下振れを示す指標が相次ぎ、一服感が出るとみられていた人手不足が根深いもとであることがわかった」(上野剛志シニアエコノミスト)と見ている。

<コスト高の事業リスク、供給制約になりかねず>

一方で、需要に対して供給力が不足していることは、企業にとっては事業の遂行が遅れ、コスト高も招くリスクを高めるといった現象もうかがえる。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「現在の人手不足は、需給改善を喜ぶよりも、供給制約になって企業活動を阻害することが警戒される。仕事があっても、それに応じられないリスクとして、建設・サービス分野では人員確保が重大な経営課題になってきている」と指摘する。

人件費の上昇は、企業にとって利益圧迫要因となる。8月ロイター企業調査では、今年度経常利益への影響があるとの回答が、全体の4割を超えている。輸送用機器で8割、建設・不動産では6割、小売は5割の企業が減益要因の可能性があるとしている。

ニッセイ基礎研の上野氏も、人件費が上昇し続ければ「今後は企業の事業リスクなどにもなりうる」とみている。

景気の唯一のけん引役として期待されている設備投資にも、人手不足やコスト増の影響が及び始めている。短観では年度の投資計画は上方修正され、企業投資意欲は強い。しかし、ここへきて実行したくても移せない事情も隠れていることに注意が必要だ。

9月ロイター企業調査では、上期の投資計画案件で様子見ないし先送りしている案件があると回答した企業は、全体の4分の1弱を占めた。理由の1つは需要の不透明感、もう1つが人手不足やコスト高で計画見直しを余儀なくされているという点だった。

様子見案件があるとの企業からは「目標利益が達成できるか判断が難しい状態」(電機)など景気不透明感を挙げる声が目立つ。

加えて「コストの想定外の上昇」(繊維)や「人手不足で工事業者が決まらない上、資材高騰も足踏み要因」(小売)といった声が挙がる。

短観で浮き彫りとなった雇用と設備の不足感は、需給ギャップ改善による物価上昇には寄与する。

しかし、日本経済の供給力の制約要因にもなる。安倍晋三政権は「3本の矢」によって、名目3%、実質2%成長ができる活気ある日本経済への復活を掲げている。だが、今のまま供給制約が存在し続けると、物価が2%に向け着実に上昇しつつ、成長率は未達という現象が起きることになるだろう。

政府が、供給制約に対し、どのような対応策を示していくのか。今後は、その点にも市場の注目が集まりそうだ。

(中川泉 取材協力:竹本能文 編集:田巻一彦)

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