南海トラフ巨大地震を想定した防災訓練 ひと際目を引いた「マグネシウム空気電池」とは

そう遠くない未来に起こると言われる「南海トラフ巨大地震」を想定し、宮崎県内各地で19日、大規模な防災訓練が行われた。

災害時に活躍 次世代エネルギー「マグネシウム空気電池」の実力

そう遠くない未来に起こると言われる「南海トラフ巨大地震」を想定し、宮崎県内各地で19日、大規模な防災訓練が行われた。同訓練には消防や自衛隊のほか、電業や通信業などの関係機関、幼い子どもや高齢者がいる家族連れなど、多くの地域住民らが参加。中でも参加者の関心を集めたのが、災害時に力を発揮するマグネシウム電池。デモンストレーションでは子どもたちが実際に発電させてスマートフォンなどを充電したり、ライトを点灯するなどの工程を体験した。

◆自衛隊も参加 マグニチュード9を想定した訓練で目を引いたものは…

マグニチュード9クラスの地震を想定して行われた訓練は、日向市や延岡市、門川町などの沿岸部中心に実施。午前8時に大津波警報サイレンが鳴り響くとともに、大津波警報発令のエリアメールが配信され、それぞれの地域で訓練に取り組んだ。

日向市の大王谷小学校の体育館では、水、電気、ガス、携帯電話などのライフラインが途絶えた状況を想定し、避難所の開設や運営の訓練を開始。実際の災害さながらに、歯科医師会や看護協会による災害時の健康相談コーナーが設置されたり、自衛隊による炊き出しも行われた。また、NTTドコモの移動基地局車なども到着し、通信環境の確保についてのデモンストレーションや説明に、多くの人が耳を傾けた。

その中でも多くの人の目を引いたのが、古河電池の小野眞一取締役による、マグネシウム電池のデモンストレーション。非常用に持ち運びも可能な大容量電源ということで、災害時には大いに役に立つ。現在主流のリチウムイオン電池より安価で安全なこともあり、大きな注目を集めている次世代のエネルギーの急先鋒だ。古河電池はもちろん、マグネシウム発電の研究者である東北大名誉教授の小濱泰昭氏、再生可能エネルギー関連事業を展開しているオリコン・エナジーなどさまざまな企業が関わり、その研究・開発が進められている。

古河電池株式会社と凸版印刷株式会社が共同開発した、非常用マグネシウム空気電池「マグボックス」

◆災害時に重宝 マグネシウム空気電池とは

資源となるマグネシウムは、地球上で8番目に多い元素。海水中に0.13%の割合で含まれていることから、ほぼ無尽蔵に存在している。金属マグネシウムは金属リチウムと比べてはるかに安価で、また電力量も高いのだ。これまでのマグネシウム電池は、自己放電を起こして充分な電気量を得られないという課題もあったが、現在は自己放電を防ぎ、長時間にわたって安定的に電気を流せるようになるなど、技術も大きく進歩している。

今回デモンストレーションを行った古河電池の『マグボックス』は、世界初の紙製容器でできた非常用マグネシウム空気電池。水や海水を入れるだけで、スマートフォンを最大30回充電できるほどの大容量の発電が可能だ。長期間保存もできるため、非常用電源として頼りになる存在で、使用後の廃棄が簡単にできるよう、容器も紙製にするなど環境にも配慮している。

訓練に参加した人からは「水を入れるだけで発電するのは手軽でいい」「緊急避難セットの中に入れておきたい」などの感想が聞かれ、非常時の電源確保についての関心の高さがうかがわれた。これまでの大震災からもわかるように、災害時の電源確保は必須。電源がなければ、スマートフォンや携帯電話で情報収集することもできず、それは自分はもちろん、家族の命を左右することにつながる可能性もある。災害時のために今できること、備えるべきものを知っておきたい。

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