「サマータイム、東京オリンピックで導入を」森喜朗元首相の発言に「サービス残業増える」など反対意見続出

森喜朗元首相が、東京オリンピックの開催に合わせて「サマータイム」の導入を検討すべきだとする考えを示したが、「サービス残業が増える」などの反対意見が出ている。

森喜朗元首相が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて「サマータイム」の導入を検討すべきだとする考えを示した。オリンピックが開催される時期は暑さが厳しいためマラソンなどの競技の実施に懸念が出ていることから、時計の針を進めることで涼しい時間に実施できると指摘したという。10月24日、時事ドットコムなどが報じた。

森氏は講演で「一番暑いときにマラソンをしたら倒れる人がいっぱいいるんじゃないか」と懸念を示し、首相に会った際に「思い切って2時間くらいのサマータイムをやったらどうか」と伝えたことを明かした。これに対し、首相は「なるほど、考えておく。しかし役所は反対するんだよな」と答えたという。

時事ドットコム:森氏、サマータイム提唱=五輪暑さ対策、安倍首相にも伝達より 2014/10/24 16:40)

サマータイムとは、日が長くなる夏場、標準時を繰り上げる制度。ドイツやカナダ、ニュージーランドなど約70カ国で導入されている。アメリカでは3月の第2日曜日の午前2時に、時計の針を1時間進めて、午前3時にする。太陽の出ている時間帯を有効に利用することで、省エネルギーに結びついたり、余暇の時間が有効に使えたりなどの効果があるとされる。

■東京は最も暑い時期

オリンピックが開催される2020年7月24日〜8月9日は、ちょうど真夏の暑さが重なる時期だ。東京の2014年8月の最高気温は36度ブルームバーグは2013年8月に最高気温が38度になったことを指摘し、これ以上の気温になれば、少なくとも過去120年で最も暑い環境下での開催となりそうだと指摘する。記事によると、ジャーナル・オブ・スポーツ・サイエンス誌の調査では、過去最も高い気温の中行われたオリンピックのマラソン競技は1900年のパリ大会だったとされる。気温35度から39度の間で開催されたが、半数を超えるランナーが暑さにより途中棄権に追い込まれていた。

しかし、オリンピックの時期は10月などの涼しい時期にずらすことは難しい。オリンピック招致を長年取材してきた記者はこの理由について「欧米のテレビでオリンピックの放送時間を確保するため」と解説する。9月に入るとサッカーの欧州チャンピオンズリーグの戦いが本格化し、アメリカ・プロフットボールのNFLも開幕するなど、他のスポーツと競合することを、国際オリンピック委員会(IOC)が懸念しているのだという。

また、欧州のゴールデンタイムも競技時間に関係する。2012年ロンドンオリンピックの男子マラソンの開催時間は現地時間の午前11時にスタートしたが、ニューヨークでは午前6時にあたる時間だった。これ以上早い時間に開催すると、アメリカ中が夜中になってしまう。

では東京での開催はどうか。仮に現在の制度で午前11時に開催したとすると、ニューヨークでは午後10時、ロサンゼルスでは午後7時、ロンドンでは午前3時となる。

この時間の東京の気温をみてみると、2010年から2014年までの7月24日〜8月9日の各時間帯の平均気温は、午前11時には30度を超える。

この状態で日本に2時間、時間を進めるサマータイムが導入されたとすると、現在の午前9時スタートとなり、30度以下の時間に競技をスタートできることになる。もちろん、海外の時間はそのままだ。

■日照時間は日本のなかで大きく違う

しかし、東京だけでなく日本全国で考えてみると、地域によって日照時間が大きく異なる。大阪市立科学館の学芸員の一人は、「夏至の日では日の出は北(東)に行くほど早くなります(北海道は沖縄より2時間近く夜明けが早い)。 しかし、日の入りは日本全国ほぼ同時です。 昼の長さも北(東)へ行くほど得をする」と指摘。「サマータイムは関東にとっては便利かもしれませんが、西日本では弊害の方が多くなります。 とても不平等な制度」としている。

■反対意見も続出

この報道に、ネット上では「サービス残業が増える」「マラソンのスタート時間を変更するだけでいい」などの反対意見が出ている。

なお、日本でも1948年、日本を占領していた連合国軍総司令部(GHQ)によってサマータイムが導入されたことがあったが、評判が悪く4年間で中止された。仕事は早く始まるが帰る時間は一緒となり、結局残業が増えることになったことが理由だった。

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