マクドナルドの売り上げがアメリカでも激減している理由とは?

アメリカのマクドナルドでは近年、売上および利益が激減している。業績不振に陥った問題は、「安くて速い食べものを求める中間所得者層」の心を再びつかめているかどうかにある。
A 100-yen hamburger, left, is displayed for a photograph at a McDonald's restaurant, operated by McDonald's Holdings Co. Japan Ltd., in Tokyo, Japan, on Tuesday, April 1, 2014. While McDonalds Japan business will raise prices of most menu items to reflect Japan's sales-tax increase, the restaurant chain will cut the price of a hamburger to 100 yen from 120 yen. Photographer: Noriyuki Aida/Bloomberg via Getty Images
A 100-yen hamburger, left, is displayed for a photograph at a McDonald's restaurant, operated by McDonald's Holdings Co. Japan Ltd., in Tokyo, Japan, on Tuesday, April 1, 2014. While McDonalds Japan business will raise prices of most menu items to reflect Japan's sales-tax increase, the restaurant chain will cut the price of a hamburger to 100 yen from 120 yen. Photographer: Noriyuki Aida/Bloomberg via Getty Images
Bloomberg via Getty Images

アメリカのマクドナルドでは近年、売り上げおよび利益が激減している。その原因として、「低所得者層はもはや、ビッグマックを買う余裕さえないのではないか」とも言われている。

しかし、それは間違いだ。最近ではむしろ、ビッグマックはますます手頃な価格となっている。マクドナルドが業績不振から回復するためには、アメリカを象徴するブランドである同チェーンが、本来の顧客層である「安くて速い食べものを求める中間所得者層」の心を再びつかめるかどうかにある。

アメリカにおけるマクドナルドのここ11カ月の状態を見ると、売り上げは減少したか、横ばい状態だ(数字は、飲食店の業績評価の主要基準となる「営業期間が1年以上になる店舗」のもの)。同社は10月21日、第3四半期(7~9月期)決算を発表した。それによると、今年9月の既存店売上高は4.1%減少し、1カ月の売上高としてはこの10年あまりで最悪の下落率となったほか、利益も前年同期比で30%減となった。株価も、この半年で11%下落している。

マクドナルドの商品は近年、他のフードチェーン店と比較すると、実質的には求めやすい価格になっている。調査会社テクノミックが発表したデータによれば、マクドナルドは、「パネラ・ブレッド」のようなファスト・カジュアルチェーン店(ファストフードとファミリーレストランの中間にあたる業態)よりも、値上がりのペースが遅いという(下のグラフを参照)。そればかりか、労働統計局のデータからも、より範囲の広い他の食品の価格上昇と比べても、マクドナルドの値上げが緩やかであることがわかっている。

マクドナルドの商品値上げは、2009年から2014年にかけてのファストフードチェーンならびに食品価格上昇と比べて緩やかだ。

メキシコ料理チェーンの「チポトレ・メキシカン・グリル」は今年に入って値上げを実施したが、消費者に動揺は見られず、値上げ直後の四半期で25%という大幅な増益を発表した(前述のパネラ・ブレッドも、好調な売り上げとなっている)。

要するに、マクドナルドの問題は「価格」ではない。いくらであれ、食べたいと思える商品が提供されていないことが問題だといえる。これに対してチポトレは、消費者がもっとお金を払ってもいいと思える、新鮮で質の高い商品を速く提供する店としての地位を確立している(冷凍食品を使わず、毎日生産者から直接届けられるオーガニックも含めたフレッシュな食材を、その場で調理し、提供するというビジネス・モデルが支持されている。以下の動画は、チポトレが公開している「チポトレの料理がめざすビジョン」)。

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スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」は、顧客基盤が低・中間所得者層なので、彼らのおサイフ事情が業績に大きく反映される。しかしマクドナルドは、フードスタンプ(低所得者に配られる公的食料費補助)を受け付けていないこともあり、低所得者層が日頃から足を運ぶ店にはなりにくい。そう語るのは、『All You Can Eat? How Hungry Is America?』(食べ放題って? アメリカの空腹事情)の著者ジョエル・バーグ氏だ。

貧困層は、マクドナルドのようなファストフード店で食事をする傾向が高いというのが定説になっているが、「そうした説は、実際には間違っている」とバーグ氏は述べる。

実際、カリフォルニア大学デービス校が2011年に実施した調査によると、ファストフードの消費量は、年収が上がるにつれて増加している。ただし、年収が約6万ドルまでという条件付きだ。

ただし、「余裕のない人に安いハンバーガーを提供する店」という認識が定着しているとしたら、マクドナルドは、そのイメージを一新する必要がありそうだ。足が遠のいた中間所得者層を納得させることができる新しいイメージが必要なのだ。

マクドナルドが何十年にもわたって経営の柱としてきた「世界中のどのマクドナルドでも同じ味が、手頃な価格で楽しめる」というポリシーは、もはや魅力が失なわれた。そのため同社は現在、「新鮮かつ質の高い商品」を手頃な価格で楽しめるというイメージを消費者にアピールしようとしている。

マクドナルドの広報担当ハイディ・バーカー氏によれば、同社はその一環として、「商品の透明性」を目指したキャンペーンを今月から実施しており、消費者からの質問を募っている(日本サイトはこちら)。

「マクドナルドは、多種多様なバックグラウンドならびにライフスタイルのお客様に見合った商品を提供しています」。バーカー氏はメールでそう語っている。「ダラーメニュー&モア(1ドル~5ドル)から、プレミアムサンドイッチやサラダ、マックカフェのドリンクメニューに至るまで、どんなレベルのメニューにも価値があります」

アメリカ・マクドナルドのドン・トンプソン最高経営責任者(CEO)は10月21日、アナリストたちとの電話会見で、厳しい状況を認めた

「問題は、わが社の価値ならびに商品が、消費者の共感を十分に得ているかどうかだ」とトンプソンCEOは述べた。「それこそが、我々が直面する問題の根幹をなすものだと考えている」

文末スライドショーでは、「各国のマクドナルド、独特のメニュー」を紹介している。なお、マクドナルドは現在、世界116カ国で展開している(日本語版記事)が、店舗の約4割はアメリカにある。

この記事は最初にハフポストUS版に掲載されたものです。

[日本語版:遠藤康子/ガリレオ]

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