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「2つに分裂した国だった」大統領選でわかった、ブラジルが直面する11の現実

2014年10月31日 15時47分 JST | 更新 2014年10月31日 15時55分 JST
EVARISTO SA via Getty Images
Re-elected Brazilian President Dilma Rousseff celebrates following her win, in Brasilia on October 26, 2014. Leftist incumbent Dilma Rousseff was re-elected president of Brazil, the country's Supreme Electoral Tribunal said, after a down-to-the-wire race against center-right challenger Aecio Neves. Rousseff, who had 51.45 percent of the vote with 98 percent of ballots counted, was declared the run-off winner. AFP PHOTO / EVARISTO SA (Photo credit should read EVARISTO SA/AFP/Getty Images)

10月26日、ジルマ・ルセフ氏がブラジルの大統領に再選された。激戦となった大統領選を通して見えてきた、ブラジルに関する11の事実は、今後のブラジルを考える上で知っておいて損はないだろう。

1. ブラジルが分裂した国であることを浮き彫りにした

労働者党のジルマ・ルセフ氏は、約5450万票を獲得して再選された。しかし、第2回投票でルセフ氏に反対し、対立候補のブラジル社会民主党アエシオ・ネベス氏に投票した人は約5100万人もいた。支持者は地域間で分かれており、ルセフ氏は北部・東部で多くの票を獲得し、ネベス氏は南部や南東部、中西部で票をのばした。

2. 大多数の人々は、現在の政治に満足していない

有効票の過半数がルセフ氏へ流れた。しかしネベス氏が獲得した5100万票の他に、710万票の無効票があったことは無視できない。この無効票を投じた人たちは、ルセフ氏もネベス氏も支持していないということになる。つまり、ルセフ氏への反対票を投じた人たちを含めると、投票に行ったうちの大多数が、現在の政治に満足していないということを意味する。また、棄権票は合計で3010万票だった。

3. 選挙運動が対立候補への攻撃になった

今回の大統領選挙戦では、政策議論は後回しにされた。もう1人の候補者だったブラジル社会党のエドゥアルド・カンポス氏が飛行機事故で亡くなる前は、第1回投票でルセフ氏が優位に立っていたのだが、カンポス氏の死亡を受けて出馬することになった同党のマリナ・シルバ氏の人気が急に高まったことで、ルセフ氏陣営は、なりふり構わぬ選挙活動を開始した。

労働者党はシルバ氏を徹底的に中傷する戦略をとった。テレビでの選挙活動の大半を敵対候補への攻撃にあて、またシルバ氏が公約として掲げた「ブラジル中央銀行の独立」に関して事実とは異なる主張を展開した。ブラジル中央銀行が独立したら国が貧困と飢餓にさらされる。

シルバ氏は、一時は事前の世論調査でルセフ氏と並んだが、その後反対派が急速に増えた。結局第1回投票で彼女は3位に終わった

4. 選挙は中傷合戦に

第2回投票では、労働者党が対立候補のネベス氏に対する落選運動を激化させた。労働者党は、ネベス氏を“女性嫌いで父親好きの息子”という印象に仕立てあげ、1991年に弾劾されたブラジルの前大統領フェルナンド・コロール・デ・メロと結びつけようとした。

労働者党からの攻撃に反撃せず第1回投票で敗北したシルバ氏とは違い、社会民主党は労働者党の攻撃に対して徹底的に抗戦体制を敷いた。このため、選挙運動の最後の3週間はお互いへの中傷と個人攻撃の嵐となった。ネベス氏はルセフ氏を「傲慢で不誠実」と呼び、ルセフ氏はネベス氏を酒飲みで、ドラッグを使用したことがあり、女性に暴力をふるう人間だとほのめかした。

5. 支持者の熱狂が制御不能に

大統領選の間、社会民主党・労働者党両党の熱狂的な支持者たちの間で緊張が高まり、両者ともに理性を失っていたといえるだろう。政治的な見解の違いから、友情に終止符が打たれ、恋人同士が引き裂かれ、そしてFacebookでの友達がブロックされた。政治的な熱狂は、選挙期間中のブラジルのソーシャルメディアを、自分とは違う意見に対する頑なで不寛容な姿勢で溢れたものとしていた。

6. ブラジルを一つにまとめなければいけない

大統領選に決着がついて落ち着きを取り戻したブラジルで、ルセフ氏はこれから、分裂したブラジルをどのようにまとめていくかを考えていかなくてはならない。労働者党自身が、労働者党は貧しい人のための政治を行い、社会民主党は金持ちのための政治を行っている、と主張している。それでも勝利演説の中でルセフ氏は、国が分裂しているということを否定したが、それに対してネベス氏は敗北演説で、「ルセフ氏はブラジルを一つにまとめることに優先的に取り組まなくてはならない」と強調している。

7.ブラジルの経済を立て直さなければならない

ルセフ氏がもう一つ取り組まなければいけないのは、ブラジル経済の軌道修正をしなくてはいけないということだ。ブラジルの経済成長は停滞している。2014年のブラジルのGNPの予測成長率は0.3%で、インフレは進んでおり、国の債務も残っている。こういったことがマイナス要因となり、世界の投資家がブラジルを敬遠している。ブラジルはまだまだ大きな可能性がある国だが、ルセフ大統領は、彼女自身が過度な経済介入をしたことで引き起こした経済の不安定な状況を改善しなくてはならない。

8. ペトロブラス社の汚職問題が、大統領を揺るがす可能性がある

ブラジル最大の国有企業のペトロブラス社は、2014年の始めから数十億に上る巨額損失や汚職告発など様々な問題で世間を騒がせているが、このペトロブラス社の公金横領や労働者党を含めた政党にお金を流していたことなどを、ルセフ氏と前大統領のルーラ・ダ・シルヴァ氏が知っていた、とブラジル最大の雑誌 Vejaが、選挙戦が終わる前に報じている。

ルセフ氏は、これらの告発に対しての説明責任を果たさなくてはならないだろう。

9. 政治改革は避けられない

ブラジルの政治改革の必要性は、今回の選挙で全ての候補者が触れたテーマであった。ブラジルでの選挙運動は必ずしも民主的に行われていない。テレビでの選挙運動の放映時間をなるべく長く確保するため、政党間では同盟が組まれており、支援の見返りとして連邦政府が政党に仕事を割り当てているという現状がある。10月26日の勝利演説で、政治改革を行うと約束したルセフ大統領は、民間からの資金調達や大統領の再選をとりやめるかどうかといった問題に取り組まなくてはならない。

10. ルセフ氏は議会の対応に手を焼くことになるかもしれない

連立与党は国会で大多数を占めてはいるが、ルセフ氏は州選挙で敗れた連立を組む党の不満に対処しなくてはならないだろう。下院と上院で大多数を占めるブラジル民主運動党の有力者の中には、労働者党は州選挙に十分な力を注いでいないと批判している人たちもいる。

一方で、ブラジル社会民主党は大統領選挙での敗北で勢いを失うのではなく、与党の手強い対立相手となるべきである。上院議員アエシオ・ネベス氏は2018年の選挙にも出馬するべきだ。

11. シルバ氏も2018年に再出馬するだろう

ジルマ・ルセフ氏が問題なく2018年に2期目を終えれば、労働者党が16年間政権を握っていることになる。しかしその後期待されているのは、労働者党のスターである前大統領ルーラ・ダ・シルバ氏が4年後に再出馬することである。彼の人気を考えれば、今後10年間にわたり労働者党が強い力を持つことは非現実的ではない。

この記事は、ブラジルポストの記者によるポルトガル語の記事を、ハフポストUS版が英語で掲載したものを翻訳したものです。

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