エボラ出血熱、生死を分けたものは何か 44人のカルテ分析

ここまでの死者数が約5000人に上る今回のエボラ出血熱の流行。感染者の生死を分けているのは何なのか──。29日に医学誌に発表された感染例の研究が、その答えを見いだすヒントを与えてくれるかもしれない。
Reuters

[シカゴ 29日 ロイター] - ここまでの死者数が約5000人に上る今回のエボラ出血熱の流行。感染者の生死を分けているのは何なのか──。29日に医学誌に発表された感染例の研究が、その答えを見いだすヒントを与えてくれるかもしれない。

医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に掲載された同研究は、シエラレオネの病院でエボラ熱と診断された患者106人を対象に、5月25日─7月18日に行われた調査データに基づいている。

データが保管されていたナースステーションがエボラに汚染されているのではとの懸念から、記録の一部は焼却処分されたが、研究チームは計44人のエボラ患者の詳細なカルテを分析することができた。

研究を行った米テュレーン大学のジョン・シーフェリン博士は「エボラ患者に関するこれだけ多くのデータを集めることができたのは、今回が初めて」だとし、エボラ治療にあたる医師の診断に役立つと語った。

同研究では、発症までのウイルス潜伏期間は6─12日で、患者の74%が死亡した。致死率を年齢別で見ると45歳以上では94%だったが、21歳未満では57%となっている。

また、最も共通する症状は発熱で、89%の患者にみられた。頭痛(80%)、衰弱(66%)、めまい(60%)、下痢(51%)、腹痛(40%)、おう吐(34%)がそれに続いた。

だが、シーフェリン博士は「非常に軽症な人もいるし、重症な人もいる」とし、ウイルスにどう反応するかは個人差が大きいと指摘する。

また、患者が治療にやって来た際、体内のウイルス量に大きな差があり、それが生死を分ける要因になっている可能性があるという。例えば、ウイルスの数が血中1ミリリットルあたり10万個未満の患者では致死率が33%だったのに対し、同1000万個以上の患者では94%に跳ね上がった。

また、さまざまな症状の中でも、今回の流行では下痢が「大きな特徴」だとシーフェリン博士は指摘。治療にあたる医師は、静脈内への輸液投与を積極的に行う必要があることを示唆した。

一方、過去の流行において主な症状であった出血を示した患者は、同研究ではわずかに1人だった。

研究者の中には、エボラ熱流行のさなかに資金を感染の阻止ではなく、研究に使うことに疑問を持っている人もいる。しかしシーフェリン博士は、こうした研究が医療従事者に新たな治療や診断方法を見つけるうえで重要な見識を提供するとの見方を示した。

(Julie Steenhuysen記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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