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エボラ出血熱の対策、中国富裕層からの寄付はほとんどなし 不足する「慈善意識」

2014年11月04日 20時28分 JST | 更新 2014年11月04日 20時28分 JST
Reuters

西アフリカから感染が広がるエボラ出血熱。中国政府は対策に1億2000万ドル(約136億円)以上を拠出しているが、米国に次ぐ多さを誇る同国の富豪からは今のところ、少なくとも公にはほとんど寄付が行われていない。

世界第2位の経済大国となった中国。多くの富裕層が生まれ、成功を収める企業も増えているが、慈善の文化はまだ根付いていない姿が浮き彫りになっている。英国の団体チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)が各国の慈善活動に対する寄付の度合いを算出している「世界寄付指数」によると、中国は世界でも最下位に近い。

中国政府の統計によれば、同国の2013年の慈善団体への寄付金総額は989億元(約1兆8300億円)。一方、ナショナル・フィランソロピック・トラスト(NPT)の統計では、米国の民間寄付金総額は年間3350億ドル(約38兆円)超となっている。

中国はアフリカにとって最大の貿易相手国であり、大手中国企業の多くも現地で投資をしている。通信機器メーカーの華為技術(ファーウェイ)やインフラ建設の中国交通建設などは、エボラ熱で約5000人の命が奪われた西アフリカでも事業を展開している。

華為技術の広報担当は、アフリカは重要な市場だとの認識は示したが、過去最悪のエボラ感染に見舞われた国々での慈善活動や個別の事業活動については言及を差し控えた。

世界食糧計画(WFP)は先月、中国の企業や富豪に対し、エボラ対策への寄付拡大を呼びかけた。WFP中国代表部のブレット・リアソン氏は「大きな寄付に前向きな動きはまだ一切ない」と語った。

<道路と病院>

慈善活動の専門家は、エボラ感染が最も深刻なリベリアやギニア、シエラレオネでは、中国の建設会社は資材や労働力の提供を通じて地域社会への貢献が可能だと語る。キミング・ベンチャー・パートナーズのマネージングパートナー、ゲリー・リーシェル氏は「建設会社が『緊急道路の整備と病院の建設を支援する』と申し出るのは簡単なはずだ」と指摘。「医療インフラ展開の一部で彼らが寄与できれば、それらは非常に有益なものになり得る」と述べた。

しかし、この問題で中国の国有企業は、政府主導を望んでいるとの見方もある。ジョンズ・ホプキンス大学で中国アフリカ研究所(CARI)の所長を務めるデボラ・ブローティガム教授は「企業が自主的に名乗り出る可能性は低い」とし、「彼らは緊急支援に経験がある政府の方が何をすべきか良く分かっていると思っている」と語った。さらに「中国企業は、こうした国への現金寄付が適切に使われるとも信じていないだろう」と付け加えた。

中国外務省は、アフリカで事業を行う企業に対し、それぞれのやり方で地域貢献するよう奨励しているとするが、具体的な内容については触れていない。同省の林松添アフリカ局長は10月31日の記者会見で「企業には強みを生かして支援するよう促している。これらの国々に在留する中国国民は、安全でいられる限りは経験を共有する責任がある」と述べた。

リベリアのダドリー・トーマス駐中国大使は、武漢鋼鉄(集団)公司の傘下企業や国有ファンドの中国アフリカ開発基金との間で、寄付の可能性をめぐって協議していると明かした。同大使によると、中国の大手建設企業1社からも10万ドルの寄付を確保したが、それ以外はまだ具体化していないという。

中国軍と関係のある製薬会社、四環医薬は、実験段階のエボラ治療薬をアフリカに数千回分提供し、現地での臨床試験を準備している。

中国社会科学院でアフリカ研究の責任者を務める賀文萍氏は「(西アフリカでの)中国の関与は年を追うごとに増している。従事する範囲も以前より大幅に大きくなっている」とし、「企業はエボラの打撃を受けた国々を支援すべきだ」との見解を示した。

同氏によると、西アフリカなどの発展途上地域で事業を行う中国企業は、地震や洪水などの自然災害の発生時に、地域への支援活動に貢献する傾向が強いという。

<信頼の欠如>

中国で慈善活動が定着していない理由の1つには、慈善寄付をめぐる一連のスキャンダルにより、非営利団体に対する信頼が欠如していることが挙げられるかもしれない。

前出のリーシェル氏は、約10年前の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時の政府の対応のまずさも、そうした信頼の欠如を助長したと指摘。「一般市民のレベルでは、SARSについて政府がいかに不透明だったかを見るにつけ、『こうした問題では政府は信用しない』という風潮があるかもしれない」と述べた。

中国で長者番付をまとめている胡潤研究院が先週発表した「慈善家ランキング」では、アリババの馬雲(ジャック・マー)会長が寄付総額約24億ドルでトップとなった。同研究院によると、中国の慈善寄付の多くは、社会奉仕や災害支援よりも教育分野に向かっているという。

米マイクロソフトの創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏は今年4月、人民日報への寄稿で、中国の企業家は国の内外で貧困者のためにさらに尽力するよう呼びかけた。同氏が創設したビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金は9月、エボラ出血熱の緊急対策に5000万ドル(約53億円)を寄付すると表明した。また、マイクロソフトの共同創業者であるポール・アレン氏は、1億ドル以上の寄付を行っていることを明かしている。

(原文:Megha Rajagopalan記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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