錦織圭「大きな壁に立ち向かい、乗り越えられた。自分の成長を感じた」【会見詳報】

テニス・ATPワールドツアーファイナルズで日本人初のベスト4に輝いた錦織圭選手が、帰国翌日の11月18日、日本記者クラブで会見した。全米オープンで決勝に進出するなど充実した1年を振り返り、「自分の成長を感じた」と話した。
Taichiro Yoshino

テニス・ATPワールドツアーファイナルズで日本人初のベスト4に輝いた錦織圭選手が、帰国翌日の11月18日、日本記者クラブで会見した。全米オープンで決勝に進出するなど充実した1年を振り返り、「自分の成長を感じた」と話した。世界ランキング5位に上昇し「自分の位置も守らないといけない。違うプレッシャーもかかってくる」と、来年の課題もあげた。

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一問一答は以下の通り。

◇◇◇◇◇

錦織:今年は今までの中で一番飛躍した年になり、ランキングも5位で終わることができて、本当に充実した1年でした。日本でたくさん自分のことを知ってもらえてテニスの楽しさを報道していただき嬉しく思います。来年もこの調子でオフにしっかりトレーニングして今年以上の結果を残したいと思います。

Q まずは記憶に新しいところでツアーファイナルズ。改めてベスト4の結果をどう思いますか?

A もちろん本当に充実した1年を通して、ツアーファイナルズでも自分の力をしっかり出せたと思っているので満足している部分もありますし、同時にベスト4に残ってファイナル(セット)まで持ち込んで負けた悔しさもあるので、うれしさと悔しさと半分くらいですね。

Q 決勝戦が不戦敗だった。あと1つ勝ってればもしかして、という気もするのですが…

A そうですね、フェデラーのけが自体は残念なニュースではありますけど、自分もそれだけ決勝まで近づいてきてるのは励みになるしモチベーションにもなるので、そこまで来れたことを実感できることも大きな経験値になると思います。

Q 試合直後のインタビューで「1週間いろいろなことを学んだ」とおっしゃっていました。何を学んだのでしょう?

A 大きな舞台でトップ8人しか残れない大会で自分のテニスをしっかりできて、プレッシャーだったり、大きな壁に立ち向かえ、また乗り越えられたというのも、自分の成長を感じる場面でもあった。最後ジョコビッチに自分の力を出せず、気持ちの部分で少し揺らいだ部分もあったので、そういうのもいいレッスンというか、経験となってこれから生きてくると思うので、もちろん負けたことは悔しいですけど、そこからしっかり、この敗戦をすぐに学べたこともこの試合だったので、これから生きてくると思います。

Q 第2セット、これは行くんじゃないかと思って、第3セット第1ゲーム、あそこで気持ちがどう揺れたんですか?

A そうですね。1セット目、本当に何もできずに「こんな選手に勝てるのかな」というぐらい圧倒されて、2セット目はほんの少しのチャンスをリスクを負って攻めましたし、相手が少し硬くなったところを一気に追い詰めて2セット目が取れた。いい流れで入ってましたけど、そこで一瞬、相手がナンバーワンの選手で、自分が何かしないと勝てないんじゃないかと、急に自分にプレッシャーかけてしまい、そこからミスが続いてしまったので、そういう場面でも常に平常心でいること、相手を過大評価しないことが、試合中でも落ち着いてやらなきゃいけないということが学べた試合でした。

Q 怪我をしているようですが、手首の調子は?

A 多分大丈夫だと思います。少し痛みはありますけど、試合ができない程度ではなかったので、小さなけがも乗り越えて試合もベスト4まで入っていけたので、気持ちの部分で強くなったと実感しています。

Q 1年を振り返って活躍されたわけを伺えたらと思います。世界ランキング17位から5位へと飛躍の年となりました。今年が始まった時点で想像していましたか?

A もちろん目標にはしていたが、想像まではしていなかったので、去年の終わりの目標が10位で、グランドスラムでベスト4に入ることが掲げた目標だったので、大きく超えて達成できたことはうれしかったです。

Q ご自分でもこの1年、驚いている?

A そうですね、驚いたことはたくさんありますね。バルセロナでクレーコートで優勝して、マスターズで初の決勝に行けたり、USオープンでも初めて決勝に残れたというのも、びっくりもありましたし嬉しかったことなので。特に後半はどんどん結果が出て、体もついてきてくれたので、正直驚いている部分もあります。

Q 一番、ご自分でも何が変わった点ですか?

A うーん、いちばんは新しいコーチがついて、自分のテニスが明らかに変わっているので。それがトップにいける要因だったかなと。

Q マイケル・チャンコーチに替わって、いちばん目からウロコだったのは?

A 思った以上に自分の攻めるボールが増えたというのと、昔はそこまで攻撃力はなかったですけど、マイケルに替わってから前に出ることを意識させられたり、もちろんテニス以外でも、練習のときもコートの時間を増やして練習もやってましたし、もちろん厳しいので、その分自分が強くなったとは思います。

Q 今シーズン、フルセットでの勝率が8割。この要因はやはり、体も強くなったけど、メンタルでも強くなった?

A そうですね、気持ちが強くなってるのは大きいですね。昔から接戦を制することは何となく得意だったので、最後まで諦めないことと、ファイナルセットに入っても集中力を切らさずプレーできてるのは大きいかなと思います。

Q 競って競って、粘って粘って自分のペースに持ち込むという錦織さんのスタイルが確立した?

A 最後まで諦めずにやってるので、1、2セット目で相手の弱点をしっかり見極めてるのも、ファイナルセットで勝ててる要因かと思います。

Q ご自分で「あっ、あのときが自分のターニングポイントかな」という試合は?

A いちばん初めの要因は全豪オープンのナダルとやった試合だと思います。3セットで負けはしましたけど、今までにない充実感で。テニス自体も変わってきてると自分も感じた瞬間でしたし、ナダルを追い詰められたという部分も、負けながらも自信は得たんで、より自信を持つきっかけになった試合でした。

Q いちばん印象に残った試合は、ナダルとの試合ですか?それとも全米の決勝?

A えー、そうですね、きっかけはナダルとの試合だと思いますけど、今年は何個もありましたね。いちばんはやっぱりUSオープンの決勝戦。日本でも2回目優勝できたのも思い出になってますし、最後、ツアーファイナルに初めて出たのも思い出に残っています。

Q 全米オープンのときに「勝てない相手はない」とコメントしていました。実際に終わって今でもそう思っていますか?

A 一瞬「こんなに差があるんだ」とジョコビッチの1セット目で感じたんですけど、その中でも2セット目を取れたので、自分に言い聞かせる意味でも自分を強く持って、最後自分を信じきれなかったというのが敗戦の大きな要因です。もっともっと自分を信じて「勝てる」と思わないとトップにいけないと思うので。昔はいろんな選手を尊敬しすぎて、世界ランキングトップの選手と対戦するときに試合に入る前に負けていたんですね。それがメンタルも強くなってきた。それが僕にも足りなかったことだし、アジアの選手にいちばん足りてないことだなと感じます。

Q 本当に錦織さんは世界トップレベルの選手なのにすごく謙虚で、試合直後に「ごめんなさい」と言っていたのが海外でも驚きを持って受け止められていた。海外の選手と互角に戦う上で逆に日本人の強みは感じますか?

A 僕の場合はアメリカに早い段階で行って、トップの選手を間近で見られたので、そのおかげと言ってはなんですけど世界がより近く感じられたので。一番の出だしは「修造チャレンジ」の合宿で鍛えられて、世界を意識したんですけど、やはり気持ちの部分がいちばんは苦労したことなので、そこはまだまだ磨いている途中だと思うんですけど。

Q かつて「修造チャレンジ」で、修造さんから「体が小さいことを言い訳にするな」と言われているシーンを拝見したことがあります。今もしも「日本人が体格的に劣る」と言われたら、どう言い返しますか?

A そうやって聞かれることは多いので、事実、最後のツアーファイナルズでもいちばん背が低くて、写真で見ると一人だけ子供のようで。その中でも他の選手が持ってないスピードだったりテクニックだったり。パワーの部分では負けてるかもしれないけど、他の部分でテニスは補えるので、それぞれが違うスタイル。そこはテニスの面白さだと思うので。背が低いから、パワーがないからといって悔やんだことは1回もないので。

Q 日本人の子供達が聞いたら励みになると思います。錦織さんの「100%どんなときも出し切るコツ」は?

A ただ単に僕は負けず嫌いなので、どんな勝負でも負けたくない。そういう思いがあるからこそ、勝つ楽しさを経験して感じてるので、それがいちばんのモチベーションかなと。

Q これから壁となるのはビッグ3(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)。いま錦織さんにとって正直怖い選手は?

A うーん、3人みんな怖いですね。簡単に勝てる相手ではないので、トップ10の中でも違うテニスを持ってますし、みんなプレースタイル違うのでやりにくいですけど、やっぱりフェデラーが僕にとっていちばんの壁ですね。プレースタイルもそうですし、展開がとても速いので、自分のテニスで勝つにはいちばん苦労する相手です。

Q 「フェデラーはアイドルだ」とおっしゃってましたけど、錦織さんになくてフェデラーにあるものとは?

A 結構あると思うんですけど、感覚の良さだったり、スーパーショットを平然と出すところだったり、あとは展開の速さですね。サーブ&ボレーも、ボレーもうまいので、いろんなプレースタイルを試合の中で出せるので、決まったプレーをしてこないことがいちばんやりにくいですね。

Q ナダル選手はどんなところが違うプレースタイルなんでしょう?

A いちばんしつこい選手ですね。どんなところでも食らいついて取るので、100%ショットを打って決め切らないとなかなか決まらない。1ポイントとるのに苦労しますし。普通の選手だと1試合の中で雑なポイントあったりするんですけど、彼は全ポイント100%でできるので、そこも強みですね。

Q ジョコビッチ。全米オープンで勝ちました。次は勝ちますね?

A そうですね。行けるといいですけど、勝ったこともある選手なので、勝てないわけではないと思うんで。今年いちばん最後、誰も手がつけられないようなテニスをしていたので、1位にふさわしい選手ですね。

Q これからトップ3と戦っていくわけですが、ナンバーワンをめざすとき、自分ののびしろはどこですか?

A まだまだ直さないといけないところはたくさんあるので、細かい部分をしっかり直して、サーブもそうですし、無駄なミスも減らせると思うので。強くプレッシャーに打ち勝っていけるようにならないといけないですし。

Q チャンコーチから「次はここを強くしていこう」と言われたポイントは?

A あまり言えないですけど(笑)、これからオフシーズンしっかりチャンコーチともトレーニングしますし、体力面も追い込んでいかないといけないので、大変な1カ月にはなると思いますけど、テニスも良くなっていくと思いますので、このまましっかりいいテニスをしていければと。

Q 少しゆっくりした話を。前回、帰国されたときは「ノドグロが食べたい」とおっしゃっていましたが、今回は?

A しっかりと休むことだけをめざして。ノドグロもきのう食べたので満足しています。

Q オフは短いということだが、何か楽しんですることは?

A 今週はいろいろ仕事があってあまりフリーな時間はないが、実家に帰れる時間もあるので、家族との親戚、友達とゆっくり、テニスのことをこの2週間は忘れてラケットも握らず、なるべくテニスは忘れてゆっくりしたいです。

Q 都内のテニススクールではジュニア会員が増えているようですけど、これから目標になる存在になったと思いますが?

A うれしいですね。子供達がテニスを始めて強くなって、ライバルと一緒にコート上で戦えるのが僕にとっていちばんモチベーションだし嬉しいので。今、テニスコートが減っていたり、現状もしょうがない部分ではありますが、なるべくテニスというものが大きくなって、たくさんの人が楽しんでくれるとうれしいです。

Q 錦織さんは13歳でアメリカに渡ったのですが、海外にいたからわかる、日本のテニスを巡る環境。もう少しここが変わったらと思うことは?

A 難しいですね。コートを増やしたり指導者を増やしたり、難しいと思いますけど。日本にも整ったクラブがあったり、ナショナルトレーニングセンターを僕自身も活用させてもらっているので、これから僕みたいな選手がたくさんでてきて強くなってくれば、自然と底も上がってくる。まずは僕が頑張ることと思っています。

Q 何か子供達にメッセージは?

A いちばんは練習を積むこと。特に子供の頃、練習量が必要だと思うので。まずスポーツを楽しむこと。その中でも簡単に強くなれるわけではないので、大きな夢を持つことも大切ですし、困難に打ち勝つことも、日常生活に生きてくることですので、あきらめずに夢を持ち続けることですね。

Q 来シーズンどんなプレーを見せたいでしょうか?

A もちろん今年以上の成績を残したいですし、グランドスラムの決勝に残ってくるのが来年の目標なので、マスターズでも優勝を目指せる位置にいると思うので、来年はまた優勝を目指して頑張ります。

Q これからは追われる立場でプレッシャーもきつくなってくると思いますが?

A それが来年の挑戦になると思うので、すでに気持ちの部分で構えてる部分もあるので。今年はずっと無我夢中で挑戦してきましたけど、ここからは自分の位置も守っていかないといけない。違うプレッシャーもかかってくると思うので、そういうのとも戦いながら来年は頑張ります。

Q 来年、4大大会で優勝する自信は?

A なくはないですけど、決勝に残るのがどれだけ大変かも感じたので、もちろん目標にして頑張りたいです。

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