Huffpost Japan

「10年後、あの時に何もしなかったと後悔したくない」 政治と若者をつなぐ「YouthCreate」代表・原田謙介さん

投稿日: 更新:
HARAKEN
Yuko Kawashima
印刷

第47回衆議院議員総選挙の投開票が、12月14日に行われる。しかし、私たちにとって政治は今、決して身近な存在ではない。2年前、2012年12月に行われた前回の衆議院議員総選挙では、投票率が59.32%と戦後最低を記録した。中でも20代の投票率は、前々回の49.45%から激しく落ち込み、全世代で最低の37.89%だった。若者は政治に関心がないといわれてきたが、低投票率でそれが浮き彫りになってしまった。

若者は政治から離れ、また政治も若者に届いていないようにみえる。リンクが切れてしまったこの2つの存在をつなげるために活動している、NPO法人「YouthCreate」代表、原田謙介さん(28)に聞いてみた。1986年生まれで、インターネットの普及とともに育った「ハチロク世代」である原田さんが政治に関心を持ち、投票に行くのは一体、なぜ?

■「選挙で何かが変わっても、自分たちの将来は変わらない」という若者

まず、若者の政治離れの理由をあらためて考えてみよう。原田さんの周囲にいる20代は、政治に対して「自分には関係ない」「そもそも関心がない」など、その温度感は冷めているという。

「理由は色々あると思いますが、一番多いのは、選挙で何かが変わろうが、政治がどう動こうが、自分たちの生活や将来は良い方向に変わらないよね、というイメージ。その背景には、政治への不信感があると思います。政治って、自分とは遠い『向こう側』で勝手にやってて、そんなに良いものじゃないし、若い世代が声を上げたとしても数の多い高齢者世代には勝てないでしょ、という人は多いですね」

原田さんたち世代は、物心ついた頃から日本はデフレ経済だった。高度経済成長はもちろん、バブル経済も知らない。

「小中学校の時、将来君たちは大変になるから資格を取りなさいとかよく言われていました(笑)。昔の明るい状況を知らないので、政治家の人たちが昔のような景気を取り戻すというのがいまいち、ピンとこない。生まれてから現在までこれが普通だったので、特に悪い状況だとは思ってないんですよね」

政治家と若い世代のズレは、そんな感覚の違いにも由来しているのかもしれない。しかし、原田さんは多くが政治に無関心といわれる世代でありながら、政治に関心を持って活動している。きっかけは、「政治のことを知らなかったから」だ。

高校生の頃から、「世の中に広く関わりたい」と思っていた原田さん。「よくわからないけど、大事なことに関係ありそう」な政治を知ろうと、東京大学に進学後、実家の岡山県に地盤のあった国会議員の事務所に飛び込み、インターンとして働いた。国会議員の仕事や選挙の手伝いをしながら、政治の現場で実感したことがある。

「政治って大事だなって思いました。政治家、スタッフ、行政、彼らを取材するメディアを含めて、全員とはいわないけれど、地域を良くしたい、日本を良くしたいという思いがあることに気づきました。でも、そういう政治に関わっている人の思いが、若い人には伝わってなかった」

一方、大学の友人たちも、政治に強い関心を持つ原田さんに対して、「ハラケンは変わってるな」と言うだけで、興味を持ってはくれなかった。それにも関わらず、2008年にリーマン・ショックが起こると、友人たちは「就職できなくなるのでは」と不安がっていたという。

「これではいけないと思いました。結果として、政治は投票に行ってくれる上の世代を優先するし、若い世代は政治と自分は関係ないと思っている。そういう負の連鎖が起こっていることに、強い違和感を覚えました。そこで、当時大学生だった僕ができたことは、周囲に投票に行ってもらって、少しでも若い世代の意思表示をすることでした」

haraken

若者と政治をつなぐ活動を続けている原田謙介さん
(東京都千代田区・Library Shop&Café Hibiya)

■お互いを知らなかった政治家と若者が出会って起こる「化学反応」

原田さんは、「20代の投票率向上」を目標に掲げ、2008年に学生団体「ivote」を設立した。政治家と若者が居酒屋で交流できるイベントなどさまざまな企画を実施。大学卒業後も活動を継続し、2013年にはNPO法人として「YouthCreate」を正式に立ち上げた。

原田さんたちが目指すのは、「子ども・若者」が日本や自分の住んでいる地域へ主体的に関心を持って政治参加を行うこと、「子ども・若者」の意見が政治・行政の議論の場に乗る状況になること。そして、政治への関心を持つことが、「かっこいい」と思われる社会を作ることだという。

「若い世代と政治は敵ではないと思います。ただ、お互いのことを知らない結果、お互い相手が何を考えているのかわからないイメージになっている。若者が『どうせ政治家は何もやってくれない』といい、政治家も『若者は社会のことを何も考えていない』となるのはとてももったいないし、すごく悔しい。少しでも接点を作れば、関係性が変わってきて、日本の将来も変わるのかなと思っています」

原田さんが手探りで始めた活動は、広がりをみせている。

「当初から現在まで、柱のひとつとして続けているのが『Voters Bar』。10月に開催されたもので18回目になりました。市議会議員や区議会議員など地域の議員と若者を集めて、色々な形で交流の場を作っています」

これまでお互いコミュニケーションを取ったことのなかった議員と若者。どんな化学反応が起こるのだろうか?

「よくあるのが、議員も普通の大人なんだと若者にわかること(笑)。特に地方で開いた時は、地元のお店や小学校の話題なんかで盛り上がる。普通なんだけど、でも、地域のことを考えている熱い大人なんだと伝わるようです。議員にも若者が真剣に将来や社会のことを考えているということがわかる。参加する若者の半分ぐらいは投票には行っていませんが、政治に対して興味はあります。そういう若者たちを可視化して、議員に知ってもらうのも大事なことです」

議員と若者との「出会い」は少しずつ、変化をうながしている。たとえば、愛媛県松山市で開催された「Voters Bar」。環境の分野に強い議員と地元大学の環境系サークルの学生がその場で意気投合、大学でのイベントに議員をあらためて招くなど、新たな「つながり」を生んでいるという。

また、2013年7月から解禁された「ネット選挙運動」でも、原田さんたちの活動は政治に影響を与えた。ネット選挙運動解禁を目指し、原田さんが発起人となって、若い世代が「One Voice Campaign」を立ち上げ、ソーシャルネットやイベントを通じ、さまざまな呼びかけを行った。大きなムーブメントとなった若者の声が、ネット選挙運動の実現を後押し。それは、当時の安倍首相が発信したYouTubeの動画でも触れられている

■愛媛県松山市で20代前半の投票率が上昇している理由

少しずつ、目標に向けて進んでいる原田さんだが、まだまだ若者の投票率は低い。そこで、原田さんが注目するのが、愛媛県松山市だ。

「2013年の参議院議員通常選挙、そして4月に行われた市議会議員選挙と、2回連続して20代前半の投票率が上昇しています。しかも、他の世代の投票率が下がる中で、です」。その背景には、市内にある松山大学キャンパスに全国初となる期日前投票所を設置したり、啓発活動の企画を選挙管理委員会とともに行う学生スタッフ「選挙コンシェルジュ」たちのはたらきがあったりしたからではという。

「僕たちは、若者に投票へ行こうと呼びかけるだけじゃなくて、政治家や行政に、双方に働きかけていこうと思っています。政治家や行政が熱意を持てば、若者もそれに応えて動きます。本当に20代、30代にもっと訴えたいのであれば、政治家は公式サイトに若い世代向けの政策をまとめて、アイコンを用意しておくだけでも変わってきます。政党が若者向けのマニフェストを出してもいい。そして、発信だけじゃなくて、それをコミュニケーションに近づけていくのが理想です」

しかし、若者が投票に行く「メリット」は本当にあるのだろうか? そんな疑問に対する原田さんの回答は明快だ。

「投票行っても何も変わらないというのは、間違いです。行ったら変わります。若い世代は人数が少ないから政治は動かないと思っているかもしれませんが、若者の投票率が上がったり、自分の政党に若者の支持が集まったりということになれば、票数は少ないかもしれませんが、動き自体に力がある。じゃあ、若者世代が抱える不安について考えようとか、国会の場でそれを議論しようとか。数よりも、若い人たちの動きを見せることが影響力になると思います」

haraken

■「まず、自分の悩みや関心ある分野がマニフェストにあるか?」で選ぶ

有権者の投票行動と意識を探るため、公益財団法人「明るい選挙推進協会」が2014年に行った調査では、20歳代の若者の半数が現在の生活に満足していると回答している。しかし、一方で「これからのあなたの生活はよくなると思いますか」という質問に対して、肯定的に答えた若者は約2割に過ぎない。また、「現在の政治にどの程度満足していますか」という問いでは、「大いに満足」は0%だったのに対し、「やや不満足」「大いに不満」と答えた20代は70.2%となっている。

「デフレ経済しか知らない僕たちにとっては、今までの時期も決して悪いものではありませんでした。しかし、同時に10年後の自分たちの未来に不安を持っている人も多い。今、投票して声を上げておかないと、10年後に何もしなかったと思うことになるのは、悔しくないですか? 僕が投票する理由の一番は、後悔するのが嫌だからです」

12月14日は衆議院議員総選挙の投開票日。「でも、やっぱり政治のことはよくわからない」という人に、原田さんはこうアドバイスしている。

「漠然と政党のマニフェストや候補者の公約を見ても、確かにわかりづらいです。ですので、まずは自分のことを考えてほしいと思います。自分が何に困っているのか、あるいは、どういう分野に興味あるのか。たとえば、スポーツが好きだという人は、そこにスポーツに関する政策が入っているか。自分が気になる争点や社会的な関心事から考えてもらえれば。または、政党のマニフェストでどのような順番で政策が掲げられているのかも参考になります。高齢者向けの社会保障なのか、若者向けの少子化対策なのかなど、その政党が訴えたいことがわかります」

若い世代であれば、その候補者のTwitterやFacebookなどもチェックするだろう。「投開票日直前のラスト10個ぐらいの投稿を見ればいい」と原田さん。「街頭演説と同じです。きちんと最後まで政策を訴える人に、僕は投票します。発信するのも、理解するのも難しいけど、雰囲気や情勢ではなく政策で選んだ政党、政治家に、自分たちの未来を託したいと思いますね」

政治と若者をつなごうと、奔走する原田さん。さて今度の衆議院議員総選挙、若者はどう動く?


【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています

他のサイトの関連記事

総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について