和紙が無形文化遺産に 登録された3つの和紙は他と何が違う?

石州半紙と本美濃紙、細川紙の3つの和紙が、ユネスコの無形文化遺産に登録された。これらは他の和紙とどう違うのか。
Agency for cultural Affairs

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は11月27日、フランス・パリで政府間委員会を開き、日本政府が推薦した「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」を無形文化遺産に登録することを決めた。世代を超えて伝統的な技(わざ)が受け継がれ、地域社会のつながりを生んでいると評価した。

今回登録されたのは、「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの和紙。このうち石州半紙は2009年に無形文化遺産に登録済みだったが、2013年に日本政府が、本美濃紙と細川紙を加えた3つを改めて「和紙」の技術として登録し直すよう提案をしていた。

今回登録された3つの和紙は全て、原料に「楮(こうぞ)」のみが使用されており、伝統的な技法を用いて作成されるもの。他の和紙とどのように違うのかその特徴を紹介しよう。

原料は「楮」だけ
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和紙の原料には、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などのほか、パイナップルや竹、木材パルプなどがある。原料の違いによって紙の風合いも異なるとされるが、今回登録された3つの和紙は全て、楮のみを原料としている。

楮は光沢があり、雁皮や三椏に比べると繊維が長いため、美しい和紙を漉くことができる

原料のどの部分を使うかによっても、漉き上がった紙の特徴に違いが出る。楮の皮は外側から順に「黒皮」「甘皮」「白皮」という三層になっているが、本美濃紙細川紙は一番内側のみが使われる。石州半紙は甘皮を残して白皮と共に使い、強度があると言われる。
国産の原料だけを使う
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和紙作りに使われる楮は、フィリピン、タイ、中国など外国からの輸入されているものもあるが、海外産の楮は紙にした時に油の塊が残るなどの問題もある。

そのため、石州半紙は地元産の楮を、本美濃紙は茨城県で栽培される最高級の那須楮(なすこうぞ)を、細川紙は地元産または四国産の楮を原料に限定している。

しかし、国内の楮の生産者は減っている。楮の栽培はあまり手間がかからないが、収入が他の業種に比較して非常に少ないためだ。

そのため日本産の苗木を海外に移植することも行われたが、外国で育つと現地産の特性に変わってしまい、国産の品質を保つことができないという。
だんだんと白くなる
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通常、白い紙を作るための漂白には薬品が使われるが、今回登録された3つの和紙には薬品による漂白が行われない。そのため、だんだんと紙が白くなるという。

例えば、現在よく使われる障子紙は、大部分が塩素漂白されている。塩素漂白をすることで、紙を漉いた直後は紙の白さがより鮮やかになるが、紫外線により黄ばみができる。一方で、塩素漂白をしない場合は、出来上がった当初は鮮やかな白ではないが、紫外線により少しずつ白みを増す。
水が良い
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良い和紙を作るには、水質も重要だ。紙づくりには楮を水にさらして洗うことで皮についたゴミを落とす「川晒し」の作業が必要になるが、この作業にはチリ一つ無い清らかな水が必要となる。

また、石州半紙をつくる石見地方は地盤に石灰岩がなく、紙を変色させる原因となるカルシウムやマグネシウムイオンを含まない軟水が豊富にあるため、1年を通して質の変わらない紙を作ることができるという。

美濃和紙も長良川などの水質に恵まれ、細川紙をつくる小川町も秩父山麓を源とする槻川のおかげで水質が良く、酒造りがさかんで古くから「関東灘」の異名を持つほどだ。
日本固有の「流し漉き」
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今回登録された和紙には、紙を漉く過程にも日本固有の「流し漉き」の方法が使われている。

古代中国で紙が発明されたころからの「溜め漉き」の技法とは異なり、紙料液を漉き簀(す)に入れ全体を揺り動かす技法だ。揺り動かすことで紙の繊維を絡めやすくしており、破れにくいなどの紙の強度を上げることができる。

水に強い
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手漉きによる和紙は、機械漉きによる和紙と比べて水に強いという。特に、天日でじっくり時間をかけて乾燥した手漉き和紙は、水分をゆっくり飛ばすことで、水分を含んだときにも破れにくくなる。

このため、うちわを水に濡らして使う「水うちわ」や、水だけで窓に貼ることができて繰り返し使える「オーナメント」にも、手漉きの和紙が利用されている。

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投稿 by カミノシゴト.

ユネスコによる和紙の紹介ビデオはこちら

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