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2015年01月22日 00時45分 JST

NTTの鵜浦博夫社長、海外キャリア投資に慎重 「適切な時期ではない」

Reuters

NTT<9432.T>の鵜浦博夫社長は21日、ロイターの取材に対し、海外の通信キャリアへの投資について、「いまは適切な時期ではない」と述べ、慎重なスタンスを示した。

グループの海外キャリアへの投資をめぐっては、NTTドコモ<9437.T>がインドの携帯電話会社タタ・テレサービシズに出資したものの、当初見込んだ成長が得られなかったことから、撤退を余儀なくされている。

一方で、足元で強化しているクラウドなどICT(情報通信技術)関連企業のM&A(合併・買収)については必要に応じて今後も実施していく方針を示し、2017年3月期の海外売上高目標200億ドルは通過点に過ぎないと更なる拡大に意欲を示した。

インタビューの詳細は以下の通り。

──この数年間はM&Aを積極化している。今後の方針は。

「ユーザーがグローバル化する中で、われわれ自身もグローバル化する必要があった。既存ユーザーを深掘りし、クロスセルを拡大していく一方で、クラウド型のビジネスはまだ変化していく。自ら持っているR&D(研究・開発)の力だけでなく、ユーザーニーズのスピードに合わせるために必要なM&Aは並行してやっていく」

──2017年3月期に海外売上高200億ドルを目指している。

「マイルストーンとして今年度150億ドルという目標を掲げているが、これはクリアできる。200億ドルは高い目標だが、まったく不可能な目標だとは思っていない。十分に可能性があり、目標に向けて(相互に顧客を紹介しあう)クロスセルやもう一段深化した取り組みをしていきたい」

──策定中の中期計画では海外事業をどう位置付けているのか。

「当然、加速していく必要がある。新興国では一気にクラウドに行くような動きもあり、マーケットは間違いなく拡大していく。その意味では(売上拡大の)可能性はまだあり、200億ドルという目標も基本的には通過点だ」

──海外事業は利益が見えにくい。

「これまでチャレンジャーとしてやってきたので、まずブランド認知力やプロダクト力を高める取り組みが必要だった。その意味では、設備面でも人的な側面でもこの数年間は先行投資期間で、利益にこだわった目標よりも売り上げ拡大、マーケットへの対応力に重きを置いていた。ただ、先行投資の基本的なパーツはだいたいやれたと思っている。これからは利益にも十分に配慮した展開をしていくという意味で、少しマネジメントの仕方を変えていきたい。先行投資を相当やってきたのだから、そろそろ収穫を意識した変化も必要だ」

──利益を出すための変化とは。

「新しいサービスやプロダクト、新しいアライアンスやコラボレーションはまず第一に必要となるが、当然、コストダウンも必要だ。重複投資を避けていくなどの効率化はノウハウがないわけではない。個社での取り組みだけではなく、グループ全体としての効率化も強化したい」

──キャリア投資はもうしないのか。

「従来、通信キャリアはメーンプレーヤーだったが、グローバル化、クラウド化、モバイル化の流れの中で、キャリアはワンノブゼムのプレーヤーとしてさまざまなプレーヤーとコラボレーションしていく存在に変わってきており、その傾向はますます強まるとみている。したがって、従来のような感覚での他国キャリアへの投資はやりたいとは思わない。それぞれの国の通信キャリアとのアライアンスは、グローバルなネットワークを構築していく上で重要だが、単純な意味での通信キャリアとしてのフットプリントの拡大というのは大きく方向が違う」

「(純粋な)投資として考え方ときには、いまは適切な時期ではない。通信キャリアのビジネスが変わっていかなければいけないときに、(キャリアの企業価値は)目先の(測り方をした)企業価値になっている。新しいグローバルな通信キャリアビジネスというものを考え直さなければいけない時期がくるかもしれないと思っており、いまはやる気がないというのが正しい言い方かもしれない」

──総務省が光回線のサービス卸に関するガイドライン案を出した。

「アクセスサービスだけで競争していくマーケットではなくなってきた。多様なプレーヤーが、多様なサービスを生み出す環境に変えていくというのが光コラボモデルを始めるひとつの動機だが、今回のガイドラインの議論はある意味でアクセス系に閉じた議論だった。これまでも一定のルールがあったが、そのルールの中で念のためのガイドラインと受け止めている。この議論は早めに卒業して、携帯キャリア同士のあり方やCATVとの関係といった話ではなく、もう少し大きなマーケットの変化を目指していきたい」

──サービス卸の業績に対する影響は。

「この変化に最初に取り組むのは、これまで通信系のビジネスをやっていたところだが、目指しているのはその次のステップ。卸モデルなのでいったん売り上げは減るが、利益面では十分に期待していただいて結構だ。マーケティングコストを含めて当然コストも意識して取り組んでいくつもりだし、新しい価値が生まれてくればまた売り上げを伸ばす時期が来るだろう」

──従来型の固定電話をどうするのか。

「固定系だけでなく、移動系も音声はそれほど使われなくなってきている。通信キャリアが従来のビジネスでずっとやっていけるとは思っていない。固定系の音声サービスをどうしていくかは大きなテーマ。グローバルの中で比較しても日本の音声トラフィックの減少は早い方なので、どうしていくかという議論は非常に重要だ。現時点でいつまでにどうしたいという答えを持っているわけではないが、持続が非常に困難なものになっているのは事実だ」

──固定電話の話では、ユニバーサルサービスの議論を避けて通れない。

「新しい中期計画の中でひとつのテーマであることは間違いない。ただ、まだユーザーもたくさんいて、収益源であることも事実。大きく変化していくときにサービスとして、設備としてどうしていくかというのは非常に大きなテーマだ」

──今後、NTTドコモへの関与を強めていくのか。

「成長期のときのマネジメントの仕方と、成熟期に入って通信キャリアがどういうビジネスモデルに変わっていかなければいけないかということを考えたときとでは、ドコモとの(関係の)議論も変化してくる。固定と移動とがほとんどシームレスな世界が来ようとしているときに、ドコモが移動体だけの会社ということではまずい。市場の変化が大きいので、任せておいていいというよりも、先行きどう持っていくかという議論の必要性が増してきている」

──通信料金の在り方はどうあるべきか。

「社会インフラという面では、コストを下げて低廉化に努めていくというのはわれわれの責任だ。ただ、利便性が増している以上、ユーザーにとって一定程度のコストはかかる。コストがかかった分だけ価値が増しているという面もあり、家計に占める割合が高まったから一概にけしからんという話ではない」

──現中期計画のEPS目標は達成が難しそうだ。

「EPS目標はあくまでマイルストーン。環境の変化で当初の予定通りにいかなくても、継続的に取り組んでいく。新しい中期計画でもEPSの向上・改善に向けた取り組みを基本的な目標としていくつもりだ」

(志田義寧 編集:吉瀬邦彦)

[東京 21日 ロイター]