今の声優に求められるものとは?

2000年代後半からのアニメブームにより、アニメファンのみならず幅広い層から注目を集めるようになった「声優」。6年連続で『NHK紅白歌合戦』出場を果たしている水樹奈々を筆頭に、声優の仕事と並行して音楽活動を行う“声優アーティスト”の活躍も目立つようになり、声優の歌手デビューはいまや珍しくなくなっている。
時事通信社

声優ブームが生んだ功罪 今の声優に求められるものとは?

2000年代後半からのアニメブームにより、アニメファンのみならず幅広い層から注目を集めるようになった「声優」。6年連続で『NHK紅白歌合戦』出場を果たしている水樹奈々を筆頭に、声優の仕事と並行して音楽活動を行う“声優アーティスト”の活躍も目立つようになり、声優の歌手デビューはいまや珍しくなくなっている。だが、シーンが活況となる一方で、新人のデビューが相次いだことで飽和状態に陥り、人気が定着しにくくなっているという課題も出てきている。では、定着するには何が必要なのだろうか? 今の声優に求められるものを探っていく。

■「第4次声優ブーム」により相次いだ新人デビュー

声優による音楽活動の歴史は古く、『宇宙戦艦ヤマト』をきっかけに引き起こされた1980年代前後のアニメブームの頃にまで遡る。“声優”という職業が浸透したことや、大人も楽しめる作品が登場したこと、アニメ誌の創刊が相次いだことで、声優自体が人気を獲得するようになり、音楽レコードも盛んに発売された。1990年代に入ると、顔出しをする声優が増え、いわゆる“女性アイドル声優”の時代へと突入。マルチに活躍する声優が増えた。そして2000年代半ば~後半にかけて、『けいおん!』等のヒットにより再びアニメブームが起こったことで、「第4次声優ブーム」と呼ばれる時期へ。アーティスト性や本人のパーソナリティに注目が集まるようになり、アイドル声優に代わる“声優アーティスト”という呼称が使われ始めた。

第4次声優ブームは、優秀な人材を呼び込んだ。声優に憧れる若者が増え、子どもの「なりたい職業ランキング」上位には「声優」がランクイン。アニメ・声優分野に新規参入する企業も相次ぎ、続々と新人がデビューしたことによりシーンも急成長した。しかし、これがある問題を招くこととなる。「最近は(声優の)消費サイクルが早くなっている」と話すのは、とあるアニソン番組のプロデューサー。シーンは活性化したものの急激に増えたことで飽和状態となり、デビュー時にヒットを記録しても、新しい声優がどんどん出てきて、人気が定着しにくいという悪循環に陥ってしまったのだ。

■人気職業故にサイクルが早くなっている

こうした状況のなかで人気を定着させ、水樹奈々に続く新たなスターとなるには何が必要なのだろうか。昨年、ORICON STYLEでは、「タレントを声優に起用することについてどう思いますか?」というモニター調査を実施した。その結果、およそ半数が【起用すべきでない】と答えたが、スタジオジブリに対して「キャラクターに合った声と実力があれば構わないと思う。ジブリは成功例だと思う」(東京都/40代/男性)という意見があったように、タレントを声優として起用すること自体に抵抗があるのではなく、キャラクターと声のイメージが合わなかったり、声優としての演技力や表現力が未熟だったりすると、その違和感から「純粋に作品を楽しむことができなくなる」と感じている人が多いことが分かった。

それはタレントだけでなく、本業の声優も同じなのではないだろうか。マルチに活躍する声優が増えるなかで、度々アニメファンの間で議題に上がるのが、「声優活動を疎かにしていないか?」ということ。“消費サイクルが早くなる”と、まだ充分にキャリアや実力が伴わない時期に主役級の声を担当する声優も多くなるため、そこで人気を得ても、一過性の盛り上がりで終わってしまうことも多い。先のアンケートでは、声優を務めるタレントに対し「本来の声優の仕事を奪ってしまっている」(千葉県/20代/女性)という意見があったが、声優自身もまた“声優ありき”での多方面での活動であり、まずは“ホーム”での基盤づくりが一番大切であるということを忘れてはならない。

その点、水樹や宮野真守など、今現在、アーティストとしてもトップクラスの人気を得ている声優は、ホームである声優活動を大切にしながら、長い時間をかけて声優、アーティストとしての実力を磨き上げ、今の地位までのぼりつめた。今の声優に求められているものは、声優としての実力や伸びしろという下地があったうえでの、マルチ展開も可能なポテンシャルだ。以前、声優養成所の代表が「じっくりと時間をかけて育成していくことも重要」と話していたが、5年、10年と、長い時間をかけて成長していくことで、“誰にも取って代わることができない”ポジションを得ることが重要なのだ。

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