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同性カップルでも「結婚に相当」の条例案、なぜ生まれた? きっかけつくった渋谷区議に聞く【LGBT】

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HASEBEKEN
猪谷千香
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東京都渋谷区は、同性カップルに対して「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例案を3月議会に提出する。可決されれば、全国でも初めての制度となる。近年、性的マイノリティ(LGBT)に対する理解を深めようとする動きが各地で活発化しているが、同性婚を含めた法的な整備は、他の先進国に比べて議論も遅れている。

そこへ今回、渋谷区から発信されたニュースは全国を駆けめぐった。いまだ日本では法的に婚姻関係を結べない同性カップルにとっては大きな一歩となる条例案、きっかけは2012年6月に開かれた議会での、一人の区議による質問だった。なぜ渋谷からこの条例案が生まれたのか? 質問に立った区議、長谷部健さん(42)に聞いた。

■始まりは2012年6月の区議会で行われた質疑応答

僕の友人知人にもLGBTの人がいます。まあ全くもって普通だし、むしろいろいろな分野でその感性が生かされ活躍しています。昔に比べてだんだんと市民権を得てきていますが、国際都市の中では東京はこの分野ではまだまだ遅れをとっています。特に結婚ということではいまだに意見が割れているというのが現実です。日本の法律でも結婚は認めていません。

そこで、渋谷区は、区在住のLGBTの方にパートナーとしての証明書を発行してあげてはいかがでしょうか。

2012年6月の定例議会で質問に立った長谷部さんは、こう提案した。長谷部さんは、結婚式場で同性カップルの挙式が断られたりすることや、法律で病院のICUに家族しか入れないために自分のパートナーの付き添いができない場合があることを説明。区がパートナーとしての「証明書」を発行することで、同性のカップルも安心して暮らすことのできる環境を整備してみては、と続けた。

提案に対し、桑原敏武区長はこう答弁した。

渋谷区では、平和国際都市として多様な方々を受け入れる中で、その中ではLGBTの方々も含めて、この方々を受け入れる共生社会でなくてはならない、このように思っている次第でございます。
 
今日では、国においても平成十六年七月には性同一性障害の性別取り扱いの特例に関する法律が施行されまして、家庭裁判所の審判により戸籍の性別変更が認められるようになってきた、それも一つのこのステップかなと、このように思いますけれども、議員提案のこのパートナー証明の発行でございます。これが一体どういうような意味を持つのか、あるいはこれを、難しいことを言うようでございますけども、自治事務の範囲内として考えることはできるのかどうか、その辺についても研究する必要があるだろうと、このように思っております。

議会でのやり取りはさらに続く。1年後、2013年6月の定例議会でも、別の区議、岡田麻里さんが証明書について質問。これに対し、桑原区長は「議員御提案のパートナー証明の発行につきましては、国内法や国際法などの関係を考え合わせるとき、制約も大きく、検討すべき課題が多くあると思いますけれども、今後、専門家の御意見等も聞きながら前向きに検討してまいりたいと思います」と答えていた。

こうした議会での質疑応答などを経て、2014年に渋谷区は有識者らによる検討委員会を立ち上げた。当事者である区民からのヒアリングなどを行い、条例案をまとめた。渋谷区によると、区内の20歳以上の同性カップルが対象で、互いを後見人とする公正証書や同居を証明する資料を提出すれば、「パートナーシップ証明」を発行するという。区民と区内の事業者に、証明書を持つ同性カップルを夫婦と同等に扱うよう求め、条例に反した事業者名は公表するとしている。

■LGBT当事者たちの悩みを聞いた区議が提案

条例案のニュースを見ながら、「やっとですね」と語る長谷部さん。渋谷区で生まれ育った渋谷っ子だ。2002年に博報堂を退社後、ゴミ問題に関するNPO法人「green bird」を設立。2003年、区議に当選した。長谷部さんはなぜ、2012年6月の議会で同性カップルを対象とした証明書導入の提案をしたのだろうか?

「LGBT当事者で、一緒に『green bird』の活動をしている杉山文野さんの話を聞いたり、その仲間とも知りあうようになって、実情を知るようになったのがきっかけでした。彼らは『結婚もできないし』と悩んでいたので、だったら『証明書』を出してみたらとジャストアイデアで思いつきました。これなら戸籍制度などをいじる必要もない。それが当事者の人たちの反応がとても良かったので、政策にしようと勉強を始めました」

もともと渋谷区は、LGBTに対する差別を撤廃して性の多様性をアピールするために毎年開かれているイベント「東京レインボープライド」の舞台になるなど、LGBTについての情報発信の拠点にもなってきた。

「渋谷区にもLGBTの方が多く住んでいますし、海外に行けば、彼らのあり方は普通のことです。『人権、人権』と強く主張するというよりも、それが『普通』のことだという空気にしたい。渋谷が国際都市であるというからには、まず渋谷からそれを実現したいと思い、提案しました。それを区長や行政の人たちが受け止めてくれたことがうれしいですね」

■ダイバーシティとして、新しいカルチャーを渋谷から発信

長谷部さんが渋谷区で目指しているのは、ダイバーシティだ。

「2020年には東京オリンピック・パラリンピックも開かれます。特にパラリンピックはこれまで、オリンピックほど注目されてきませんでしたが、ロンドン・パラリンピックのポスターでは、選手たちが手を差し伸べる対象ではなく、リスペクトの対象としてかっこよく描かれていました。

アテネ、北京、ロンドンのパラリンピックでマラソンに出場した高橋勇市選手も、ロンドンが最も声援が多くて走りやすかったそうです。成熟した都市の条件なのかもしれません。また、日本人記者がプロテニスのロジャー・フェデラー選手に「なぜ日本のテニス界には世界的な選手が出てこないのか」と聞いたところ、フェデラー選手は「日本には国枝慎吾(車いすテニスプレーヤー)がいる」と答えたそうです。

世界がそういうふうに変わり始めています。それに乗り遅れてはいけない。渋谷区にとっても、東京オリンピック・パラリンピックはチャンスです」

また、渋谷は新しいカルチャーを発信してきた都市でもある。「いろいろ深くも考えましたが、単純にその方が渋谷として、クールだよ、と思います」と長谷部さんは笑う。

「上海に旅行した時、『ヤバイ』と思った。21世紀がそこにありました。勝ち負けじゃないけど、世界でクリエイティブな街はどこかといえば、パリ、ロンドン、それから東京が入ってほしい。でも、段々それが薄くなっている感じもしていました。少し前には、原宿発、渋谷発のカルチャーがたくさんあった。竹の子族やロカビリー族、DCブランド、渋カジ、渋谷系音楽、コギャル。でも最近はそういうブームがない。

街の底力をあげていくには、やはりダイバーシティだと思います。LGBTを始め、多様な人たちが集まってくることで、新しいカルチャーが生まれる。それから、単純に自分の子供がもしもLGBTだったとしたら、『それはおかしいことじゃないんだよ』と言ってあげたいですね」

条例案は3月の区議会で提出される。条例案の詳細が明らかになれば、「また議論が深まる」と長谷部さん。渋谷区が先陣を切った形だが、世田谷区でも同様の動きがある。渋谷区から東京へ、そして世界へ。新たなムーブメントが起こるのかもしれない。

shibuyakulgbt
(平成27年度渋谷区当初予算案の概要より抜粋)

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