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「地方創生、何が本当に必要なのか」 神山プロジェクトやオガールプロジェクトから学ぶべきは、そのプロセス【動画】

2015年03月06日 21時15分 JST | 更新 2015年03月06日 21時15分 JST
猪谷千香

今、「地方創生」という言葉が注目を集めている。政府はさまざまな施策を打ち出し、本格的に地方が「自律的、持続的な社会を創生していくこと」を目標に掲げて、走り始めた。しかし、国や自治体は今までにも「地域活性化」「まちおこし」「過疎化対策」といった名目で、多額の税金を投じて取り組んできたものの、地方の現状は厳しさを増す一方だった。

そこで、これまでの失敗を繰り返さないためには、どうしたらよいのか。ハフィントンポスト日本版では1月28日、「地方創生、何が本当に必要なのか」をテーマにアーツ千代田3331でパネルディスカッションを行った。登壇したのは、国に先んじて地方再生や活性化を実践してきた、NPO法人グリーンバレー理事長の大南信也さん、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さん、株式会社アフタヌーンソサエティ代表取締役の清水義次さんの3人。ハフポスト日本版レポーター、猪谷千香をモデレータに、地方創生について活発な議論を交わした。



■過疎を受け入れ、持続可能な地域をつくる神山プロジェクト

まず、地方創生で注目を集めている徳島県神山町で、グローバルな視点での地域活性化を推進、若者の移住やITベンチャーのサテライトオフィス誘致などに取り組んでいる大南さんから発表があった。大南さんは、四半世紀に渡り地域づくりを進めてきたが、8年前から「創造的過疎」という言葉を掲げている。人口減少による過疎を受け入れたうえで、内容を変えていこうという考え方だ。

「今まで地方は、外部から若者やクリエイティブな人材を入れることで人口構成を健全化したり、あるいは、神山のような中山間の町であれば、農林業の産業政策を行ってきたのですが、全国的にあまりうまくいってないと思う。だから、発想を変えて、多様な働き方が実現できるビジネスの場としての価値を高め、農林業だけに頼らないバランスのとれた持続可能な地域をつくるというのが、この『創造的過疎』です。

過疎地で、一番大きな課題は雇用がないということ。だから、地域で生まれ育った若者たちが故郷に帰ってこられない。それとともに移住者も呼び込めない。その結果、地域を担う後継人が育たないという状況に陥った。私たちは『神山プロジェクト』で、このあたりの課題を解決しようとしています」

その実例として、ITやデザインなどの企業を神山に誘致する「サテライトオフィス」や、仕事を持った人や起業家に移住してもらう「ワーク・イン・レジデンス」の取り組みを紹介した。グリーンバレーでは2007年から神山町の「移住交流支援センター」の運営を任されており、2011年度には転入者が近年では初めて転出者を上回ったという。

「この4年間で神山に入ってきた人たちを細かく分析していったら、移住交流支援センターによって58世帯105名、子供27名が転入しています。その平均年齢は30歳前後。やみくもに過疎に対処するのではなく、2035年に1学年20人いる学校を神山に残そうという年少人口モデルをつくりました。統計通りだと2035年には1学年12.5人になりますが、これを20人にするためには、毎年、子供2人の家族を何世帯、神山に呼べばいいかを計算で出し、「5世帯20人」という答えを得ています。目標でなくて単なる指標ですが、今進めているところです」

神山では、「人の流れ」が変わってきているという大南さん。

「ワーク・イン・レジデンスでは、例えば神山にパン屋さんがないから、『パン屋さん来てください』と募ります。職種をある程度、限定することによって、結果的に町のデザインにつながっていきます。すると、商店街の人の流れも少しずつ戻ってきていまして、ここにしかない商店街ができあがるんじゃないかなという気がしています。僕が日本の商店街で一番悲しいと思うのは、どこの町へ行ってもとにかく並んでいるのは同じチェーン店。どこなのか識別がつかないような町を日本人はここ40、50年、延々とつくり続けてます。そういう動きは必ず、振り子と同じで逆さまに振れる時があります。その時に人々が求めるのは、このような血の通った商店町だと思います」

■民間と公共の不動産リノベーションを組み合わせ、地域を再生

次に、福岡県北九州市の「小倉家守プロジェクト」や、神山町と同じく地方創生で注目を集めている岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」にも関わっている清水さん。都市生活者の潜在意識の変化に根ざした建築のプロデュース、プロジェクトマネジメント、都市・地域再生プロデュースを行ってきた中での知見を述べた。

清水さんは、全国でプロジェクトを進めているが、小さな民間不動産を使う「小さいリノベーションまちづくり」と地方自治体などが持つ大規模な公共不動産を活用する「大きいリノベーションまちづくり」の組み合わせができれば、地方都市が変わる可能性を指摘。「民間不動産、公共不動産、共に都市が衰退していく場所では、空間資源が過剰に余ってくるという現象が特徴的です。そこに着目して、その中に面白いコンテンツを入れ込むことによって町が変わっていくんじゃないか、というやり方をしています」と話した。

清水さんは、「小さいリノベーションまちづくり」として、2010年からスタートした北九州市の都市政策「小倉家守構想」とともに、空間資源を使いながら都市型産業集積を作り出すことを目的に、民間投資によるリノベーションプロジェクトを実施。60メートル四方の地区に集中的に民間投資を行ってきた。

また、「大きいリノベーションまちづくり」として、岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」を紹介。塩漬けになっていた町有地10.7ヘクタールを民間主導の公民連携事業という形で再生するもので、「徹底したマスタープランを作成したことが不動産事業として大事だった」と指摘した。

「オガールプロジェクト」では、2012年6月に町の図書館と産直マルシェなどの民間テナントが同居する公民複合施設「オガールプラザ」がオープン。公共施設の維持管理費を民間テナントの家賃共益費、固定資産税で賄っている。この他、「オガールプラザ」の前にある広場や、バレーボール専用コートなどが入った「オガールベース」という民間事業棟も誕生している。また、木質バイオマスをエネルギー利用した「エコハウス」の分譲もスタート、エコタウンをつくろうとしている。

「オガールプロジェクトを通じて、町の人口を維持、それから、農業が基幹産業ですので、農産物の生産、加工、流通、林業も復活できるかどうか今、チャレンジしているところです。オガールへ集客して町の新しい中心を作るだけでは、町は栄えません。その周辺とつなぐということを最初から計画しています。町中を回遊してもらうために、インフォメーションデザインを重視しながらやっていますので、周辺にある産直も軒並み売り上げが上がっているという状況です。こうした『小さいリノベーションまちづくり』『大きいリノベーションまちづくり』の重ね合わせを地方都市でやってみると、少しは地方の活性化につながることができるんじゃないかと思っています」

■全国の失敗例「墓標シリーズ」から学ぶ、未来の成功例

3人目に登壇したのは、全国各地でまち会社の立ち上げやその経営を通じて、地域再生に取り組んでいる木下さんだ。熊本で地元の不動産オーナー等との共同出資による「熊本城東マネジメント株式会社」を設立、ずさんな管理を見直して175店舗のごみ処理事業を一括契約に切り替えるなど、ファシリティマネジメントの改善に取り組み、毎年500万円規模の改善を図る取り組みをしている。同様の事業を、札幌、盛岡、熱海、城崎など各地でもパートナーと共に展開。経営の視点から市街地や商店街の抱える問題点を実地で解決してきた。

神山町、北九州市小倉町、紫波町などの具体的な事例の紹介に続き、また違った視点から地方再生について語った。まずは、学生時代から東京・早稲田の商店街の活性化を取り組んだ経験から、視察の問題点について指摘した。

「当時、全国から視察に来ていただいたんですね。ピーク時には年間400団体ぐらいの視察を受けていました。でも、全国でまともに残ったのが1つもなかった。それで気づいたのですが、全国の地域活性化に携わる人の多くは、自分たちにとって都合のいいタイミングで都合のいい事例だけに注目して、皆で視察に行って、予算が回ってきて事業をやって、飽きたら違う事業をまた真似るっていうのをずっとやっていくっていうのは問題だよね、と」

そこで木下さんは、地方の仲間とともに「一般社団法人エリア・リノベーション・アライアンス」を立ち上げ、各地域が連携して、その取り組みを体系化していくという事業を始めた。

「『アライアンスプロジェクト』と呼んでる事業では、一緒に組んでる地域のリノベーションプロジェクトや、ファシリティマネージメント、道路や公開空地の利用といった事業を開発しています。規制緩和の手法のドキュメンテーションを自治体に対して提供したり、プロセスの共有化を図り、各地で立ち上げた事業からの利益で持続する経営モデルを組み立てています」

さらに、「エデュケーション」事業では、情報をeラーニングなどで正確に地方の情報を求める人に伝達。「シンクタンク」事業では、その実践者で独自に調査研究を行っている。また、清水さんらと共に公民連携事業機構を立ち上げ、東北芸術工科大学と提携、公民連携の知識や実践を身につけるための「公民連携プロフェッショナルスクール」を2015年度から開始する予定だ。

木下さんは、シンクタンク活動の一環で2014年に公開した「墓標シリーズ」で注目を集めた。全国で失敗している再開発事例を実例名で公表した調査だ。その必要性についてこう語った。

「個別の自治体を非難するつもりではなく、やはり過去の失敗から学ばないと次なる成功どころか失敗を繰り返してしまう。皆、基本的に地域をよくしようと善意でやっているからこそ、過去の失敗は失敗として客観的にその原因や経過の分析をしないと、またどこかの地域で同じことが起きるのです。良かれと思ってやったことが結果的に地域を破滅に導くということが過去にたくさん、ありました。我が町を破壊しないためには失敗例に学ばなきゃいけない」

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左から大南さん、木下さん、清水さん。民間という立場から、地域活性化について語った。

■重要なのは結果ではなく、プロセスを真似ること

事例紹介後は、まずこれまで政府や自治体で取り組まれてきた「地域活性化」の問題点について意見が述べられた。

木下さんは、「一つの事例だけを見るというのがよくない」と従来の手法を批判した。

「例えば、iPhoneという優れた製品があるから、そのまま同じものをつくろうという話を皆が始めちゃう。でも、技術力がないからiPhoneのつくり方を教えてくれるコンサルを派遣してくれ、設備投資する金がないから補助金を出してくれ。それでもはや劣化に劣化を重ねたパクリ製品とも言えないレベルのものを皆でつくってしまうわけです。自力でコピー商品を作る以下のレベルです。事例はあくまでその地域の中で、たとえば神山町や紫波町のように10年、20年かけてやってきて出てくるものであって、結果、最後に出た『一滴』をそのまま他の地域に持っていっても全然意味がない。

重要なのはプロセスを真似ることです。その10年20年かけてきた積み上げを自分の地域でもやらなくてはならない。でも、地道にやっていくプロセスって大変なんですよね。プロセスを真似せずに、とりあえず「答え」だけ教えてくれというのは、入試の答えを教えてもらって東大受かりたいっていうのと同じです。そうではなく勉強方法を学ばなくてはならない。例えば神山町に今、視察に行くと、『そうか、光ファイバー引いてサテライトオフィスつくればいいんだ』とか、紫波町にいけば『オガールみたいに図書館に産直つければ良いのか』みたいな全く本質と異なる話になって、それを支援する制度をつくろうとか全くもってナンセンスな話になってしまう。そういう誤った成功事例からの理解が今までの失敗の連続の原因です」

これに対し、清水さんは「これはものすごく大事なところで、プロセスをどうつくるかってことが本当の関心事になってほしい」と語った。

「大南さんは大南さん、私は私で、それぞれの場所で、どういう人間とどういう人間を組み合わせてそこに外部のどういう必要な人を入れてきて、これが民間で事業が成り立って自走できるようにするにはどうしたらいいかという、このプロセスをつく?

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