「同性同士のキスも当たり前の社会に」 ゲイ・レズビアンの人々が生きやすい環境とは【LGBT】

セクシャル・マイノリティ(性的少数者)への理解や同性婚の法制化に向けた議論が進んでいる。東京都渋谷区は、同性カップルに「結婚に相当する関係」を認める条例案を区議会に提出、現在審議中だ。
中野渉

セクシャル・マイノリティ(性的少数者)への理解や同性婚の法制化に向けた議論が進んでいる。東京都渋谷区は、同性カップルに「結婚に相当する関係」を認める条例案を区議会に提出、現在審議中だ。そんな状況の中、明治学院大学のLGBTサークル「カラフル」は3月18日、都内の同大学で、4月4日から公開されるレズビアン・ゲイを題材にしたイギリス映画「パレードへようこそ」の試写会とシンポジウムを開いた。

シンポジウムでは、社会で人を思いやることや、互いの違いを認め合いながら生きていくことの大切さ、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の人々が生きやすい環境について話し合った。司会は前豊島区議で明治学院大出身の石川大我(いしかわ・たいが)さんが務めた。登壇者からは「女性同士、男性同士で恋人とキスをするのを子供達が見て当たり前だと思う。それが普通の社会になれば健全だ」などとの意見が出た。

■登壇者

石川大我さん (司会、前豊島区議、ゲイ)

宮地基さん (明治学院大学法学部教授)

小川チガさん (女性専用イベント&バー「GOLD FINGER」プロデューサー、レズビアン人権活動家)

山縣真矢さん (東京レインボープライド共同代表、ゲイ)

杉山文野さん (東京レインボープライド共同代表、トランスジェンダー)

倉光ちひろさん (明治学院大学LGBTサークル「カラフル」)

関谷隼人さん (特定非営利活動法人ReBit 副代表理事、FtMトランスジェンダーパンセクシュアル)

シンポジウムのパネリストら

■性同一性障害の方は学内で生きづらさを感じていている

石川大我さん(司会、前豊島区議、ゲイ):電通総研によると、20人に1人がLGBTだと言われています。でも、なかなかカミングアウトはしていません。そんななか、今年のゴールデンウィークに(差別を撤廃して性の多様性をアピールするための)フェスティバルが2日間に渡って開かれます。山縣さん、事情をお話いただければ。

山縣真矢さん(東京レインボープライド共同代表、ゲイ):日本でプライドパレードが初めて開催されたのは1994年です。ILGA というインターナショナルのゲイ・レズビアン協会があって、その日本団体の代表の方を中心に東京で開催されました。パレードの名前も2007年から「東京プライドパレード」と変えたんです。2011年に東京レインボープライドというそれまでの東京プライドとはまた違う団体が設立されて、今年で4回目のパレードになります。フェスティバル「東京レインボープライド」は4月25日と26日の土曜日と日曜日で、パレードは日曜日にあります。

石川:最近は、各大学でとても多くのLGBTサークルができてきました。倉光さんに明治学院大学のサークル「カラフル」について聞きたいのですが。

倉光ちひろさん(明治学院大学LGBTサークル「カラフル」):学内で、トイレとか健康診断とかも男女別だったりして、性同一性(障害)の方は生きづらさを感じていているんです。同性愛の方のいわゆる恋愛話とかの時にも、「私は女だけど彼女がいる。でも言えないから彼氏に変えて話している」とか、そういうことでの生きづらいというのは昔と変わらず今もあります。ただ一番変わったなと思うのは、サークルがとても増えたことだと思います。

石川:関谷さん、大学公認団体「ReBit」としては、就職活動は大きなテーマですね。

関谷隼人さん(特定非営利活動法人ReBit 副代表理事、FtMトランスジェンダーパンセクシュアル):ええ。僕はセクシャリティがFtMトランスジェンダー(性同一性障害)で体は女性ですが心は男性で、ホルモン注射や手術とかはしていません。就職活動の際はレディーススーツを着て女性として就職活動をするのか、メンズスーツを着て男性として就職活動をするかで悩みました。レディーススーツで行くことにはそんなに嫌悪感はなかったんですが、女性として就職してしまうとその後の生き方が全て女性になってしまうんじゃないかなとその時は思い、悩んだ結果、どっちでもやったんです。

でも、やっぱり物理的にも精神的にも結構しんどい部分が大きかった。実際は、就職活動の段階でカミングアウトする人、しない人、あるいは就職して就労し始めてからカミングアウトする人、あるいはしない人と、いろんな人がいると思うんです。ともかく、選択肢が減らないようになっていったらいいなと、自分でどれを選択するかをフラットに選べる社会になったらいいなと思っていて、ReBitでもセミナーをしています。

司会の石川大我さん

石川:かつてはゲイであることや、トランスであることをカミングアウトして就職活動をするというのは考えられないことでしたが、今は外資系なんかを中心にLGBT向けの就職セミナーがあるなど、少しずつ受け入れられるようになってきました。チガさんはどうでしたか?

小川チガさん(女性専用イベント&バー「GOLD FINGER」プロデューサー、レズビアン人権活動家):カミングアウトもしたことはないんです。だけど周りの皆が知っている。セクシャリティの問題って、これっていう正論もなく各々が好きな感じでいいと思う。本当に考え方次第。職場で仕事とプライベートをきっぱり分ける方とかもいますから。

■「生殖器を切れば彼女と一緒にいられる権利を得られる。どうしますか、皆さん?」

石川:いろんな考え方があり、受け入れ側もだいぶ変わってきています。例えば渋谷区が提出した、同性同士のパートナーに対して結婚に相当する関係を結んだ証明書を出すという条例案は、今まさに審議中です。山縣さん、カップル関係も長いということですが、何年付き合ってらっしゃるんですか?

山縣:17年くらいです。何か具体的に困ったということは、実はあまりないです。僕が入院や手術をする時にも普通に立ち会ってもらえたし。家を借りるときも特に問題はなかったんですけど、これから自分たちがどうしていくかという時に証明書のようなものがあったらいいなと思います。

今回は条例だけですけれども、これを突破口に、今は横浜市とか世田谷区とかでも話をしていますけど、地方でもどんどん広がればいい。お互いに後見人制度を使った方がいいのかとか、養子はどうするのかとか、そういうことを考えたりもします。証明書があることでパートナーシップだとか同性婚だとか進んでいけばありがたいです。老後に対する不安というものが少し緩和されるというか、子供もいるわけでもないし、そういう法律とか制度が整備されるということを期待します。

杉山文野さん(東京レインボープライド共同代表、トランスジェンダー):この同性パートナー条例が出てから一つ問題提起したいなと思ったことがあります。同性パートナー条例だから性同一性障害とトランスは関係ないんじゃないの、みたいに思われるんですけれども、大いに関係がある。ストレートな女性のパートナーがいてもう4年半くらいお付き合いしている。見た目は男性と女性だし、恋愛感情も異性愛というかたちでは持っているんですが、戸籍上は女子同士なんです。同性パートナーとかいわゆる同性婚みたいなことができていけば、実はもう戸籍の変更をしなくても一緒にいるということができるんです。

ただ、今僕自身がなぜ戸籍を変更していないかというと、性同一性障害の国令法の戸籍変更のいくつかの条件がある中で、一つ「生殖器を取り除いていること」というのがある。僕自身は子宮卵巣を摘出していないんです。胸を切ってホルモン注射をしている現状の体で、僕はもういいかなと満足しているんです。いいも悪いも、戸籍の変更ができるという選択肢を得てしまったがゆえに、同性パートナーの条例ができない限りは、僕が彼女と一緒にいようと思うと僕の生殖器を切れば彼女と一緒にいられる権利を得られる。どうしますか、皆さん? 生殖器を切ったら好きな人と一緒に入られるという権利を得られるということです。

石川:でも、特に切りたいと思ってないですよね。

杉山:思ってなくても、4年半も付き合ったし、そろそろ責任取らないと、切らないといけないのかな、みたいには思う。切れば彼女と一緒にいられるという権利を得られるし。

シンポジウムのパネリストら

■日本、法制度を変える上で宗教的な障害少ない

石川:でも体にも負担のかかることですね。健康の問題もあるし。同性パートナーを条例で保証するとか法律で保証するっていうことは、実はトランスの方達にとっても重要な事です。同性婚という話もちらほら出てきています。憲法学的にここらへんを整理していただくとどうでしょうか?

宮地基さん(明治学院大学法学部教授):憲法第24条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならないという条文です。この婚姻が両性の合意のみに基づいて成立するっていうところを捉えて、両性、つまり男性と女性がいないと婚姻ができないんだという主張をする人がいます。ただ、この条文は、本来は日本国憲法ができる前の日本で親の同意がないと結婚できないという制度になっていたことを改めて、本人同士が合意していれば他の人がそれを邪魔することはできないという趣旨を表すためにできている条文なんです。だから、これを男性と女性がいなければ結婚できないという意味に読むのは、憲法の本来の趣旨とは違うんです。

石川: さて、5年後の2020年、日本はLGBTにとってどんな社会になっていると思いますか?

小川:東京オリンピックの時に、例えば優勝した選手が女性同士、男性同士で恋人とキスをして、それが日本のワイドショーで流れて、それを日本の子供達が見て、そういうのを当たり前だと思う。私の願いはそこです。それが普通の社会になれば健全だなと思います。

宮地:日本の場合、法制度を変える上で宗教的な障害というのが少ないので、ヨーロッパに比べるとそんなに難しくはないんじゃないかと思っています。日本では、実は男性同性愛というのが犯罪だったことは一度もないんです。だから、決して日本の法制度は性的少数者にとって敵対的なものではない。

日本でも今、迫害を受けているマイノリティがいます。例えば新宿でヘイトスピーチを受けて苦しんでいる在日コリアンの人達を見た時に、LGBTの人達が在日コリアンの気持ちになれるかどうか。そういった少数派の人達が苦しんでいる時にその立場を理解できるかどうか。そういう意志を共有することで今度は自分達も理解してもらえる。そういったマイノリティ同士の連帯、多くの人達の連帯が生まれた時に法制度っていうのは変わっていくと思うんです。

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