庵野秀明さん「僕は壊れました」 うつ状態だった彼が、ゴジラ総監督を引き受けた理由

2016年夏に公開予定の特撮映画「ゴジラ」の最新作の脚本・総監督を、人気アニメ「エヴァンゲリオン」で知られる庵野秀明さんが担当することになった。4月1日に映画会社の東宝が発表した。
GO WITH STORY Japan-film-anime-Anno-Miyazaki,INTERVIEW by Alastair HIMMERJapanese animator, film director and actor Hideaki Anno answers a question during his interview with Agence France-Presse at a Tokyo hotel on October 26, 2014. AFP PHOTO / TOSHIFUMI KITAMURA (Photo credit should read TOSHIFUMI KITAMURA/AFP/Getty Images)
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TOSHIFUMI KITAMURA via Getty Images

2016年夏に公開予定の特撮映画「ゴジラ」の最新作の脚本・総監督を、人気アニメ「エヴァンゲリオン」で知られる庵野秀明さんが担当することになった。4月1日に映画会社の東宝が発表した。監督・特技監督は「ガメラ 大怪獣空中決戦」や「進撃の巨人」で知られる樋口真嗣さんが担当する。2人はアニメ会社「ガイナックス」の創立メンバーで「エヴァンゲリオン」でもタッグを組んでいた。

庵野さんは、プレスリリースの中で「僕は壊れました」として、2012年の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」公開以後、うつ状態になっていたことを告白。その上で「エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない状態を実感し、引き受ける事にしました」と新作ゴジラの総監督を引き受けた胸中を明かしている。庵野さんのコメント全文は以下の通り。

【庵野秀明氏コメント】

我々は、何を作ろうとしているのか。

そして何故、空想特撮映画を作る事を決めたのか。

2012年12月。エヴァ:Qの公開後、僕は壊れました。所謂、鬱状態となりました。6年間、自分の魂を削って再びエヴァを作っていた事への、当然の報いでした。明けた2013年。その一年間は精神的な負の波が何度も揺れ戻してくる年でした。自分が代表を務め、自分が作品を背負っているスタジオにただの1度も近づく事が出来ませんでした。2014年初頭。ようやくスタジオに戻る事が出来ました。それから、1年以上かけた心のリハビリにより徐々にアニメの仕事に戻っています。

そして、2015年。旧エヴァの放送から20年後の今、すでに2年以上もお待たせしている、シン・エヴァンゲリオン劇場版の完成への実現に向けた作業も、なんとか進められています。僕の周囲の方々、そしてアニメファンの皆様が、再び完結に向かうというモチベーションを支えてくれているからです。本当に、感謝します。

と、同時に今は、空想特撮映画を形にする作業も行っています。始まりは、2013年1月末でした。東宝の方から直接「ゴジラの新作映画の監督をお願いしたい」と、依頼を受けました。精神的にも不安定でしたし、「無理です。エヴァもあるし、出来ませんよ」と、その場は固辞しました。が、東宝の誠意と盟友樋口真嗣監督の熱意に心が動かされ、同年3月、監督を引き受ける事にしました。

過去の継続等だけでなく空想科学映像再生の祈り、特撮博物館に込めた願い、思想を具現化してこそ先達の制作者や過去作品への恩返しであり、その意思と責任の完結である、という想いに至り、引き受ける事にしました。今しか出来ない、今だから出来る、新たな、一度きりの挑戦と思い、引き受ける事にしました。エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない状態を実感し、引き受ける事にしました。

同年5月、作品として描きたい、描くべき主題を決めました。そして同年6月、G作品メモという企画書を東宝に提出、プロット等の作成を開始。ゴジラが存在する空想科学の世界は、夢や願望だけでなく現実のカリカチュア、風刺や鏡像でもあります。現在の日本でそれを描くという無謀な試みでもあります。

正直、世界資本に比べると制作費も制作時間も極端に少ない日本の現場で、様々な内容面に関する制約の中で、果たしてどこまで描けるのかはわかりません。ただ、映画としてのプライドを持ち、少しでも面白い映像作品となる様に、本作もシン・エヴァも全力で作っていく事が、今の僕に出来る事だと思って作業を進め、映画の方向性や脚本内容等で紆余曲折あり、現在に至っています。制作者が何を書いても言い訳にしか過ぎず、善意と悪意の前に晒される事態を重々承知の上で、こんな時代のこの国で日本を代表する空想特撮作品を背負って作る、という事を少しでも理解していただけたらという願いから、拙文を寄せています。

最後に、自分を支えてくれる周囲の人々と、作品を支えてくれているファン・観客の皆様の御蔭で再び、映像が作れる、という事に改めて感謝します。ありがとうございます。

脚本・総監督 庵野秀明

庵野秀明さん(左)と、樋口真嗣さん

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