【残業代ゼロ法案】閣議決定 労基監督官の過半数は「反対」していた

政府は4月3日、一定の年収以上で高度な専門職に就く人を労働基準法の時間規制から除外する、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代ゼロ制度)を盛り込んだ労基法改正案を閣議決定した。
BUSINESS SCENE Four persons in a meeting
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Indeed via Getty Images

政府は4月3日、一定の年収以上で高度な専門職に就く人を労働基準法の時間規制から除外する、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代ゼロ制度)を盛り込んだ労基法改正案を閣議決定した。政府の成長戦略の目玉の一つだが、労働組合などからは「残業代ゼロ」と批判されている。2016年4月の施行をめざす。時事ドットコムなどが報じた。

■残業代ゼロ制度の対象、年収1075万円以上の専門職

残業代ゼロ制度の対象者は、研究開発や金融ディーラー、ファンドマネジャーなど、高度な専門的知識があり、平均年収を3倍「相当程度」上回る人。具体的には法案成立後に厚生労働省が省令で決めるが、年収は1075万円以上と想定されている

対象者は、労基法の労働時間規制(1日8時間、週40時間など)から除外され、時間規制がなくなるため「残業」の概念がなくなり、深夜労働、休日労働への手当も出なくなる。その上で、働きすぎを防ぐため、下記のいずれかの措置をとる。

  • 1、年間104日の休日
  • 2、1日のなかで一定の休息時間を確保
  • 3、在社時間に上限を設ける

この制度とは別に、一般の労働者の長時間労働対策として、年間10日以上の有給休暇が与えられている従業員に、年5日の有給休暇を取得させることを企業に義務づける。また、大企業で実施されている月60時間を超える残業の割増賃金を50%以上とする規定を、4年後の2019年4月から中小企業にも適用するという。

■「企画業務型」裁量労働制、対象拡大へ

改正案には、想定した時間より長く働いても追加の残業代が出ない「企画業務型」の業務にも裁量労働制を広げることを盛り込んだ。

あらかじめ定めた労働時間に賃金を支払う仕組みの裁量労働制の適用対象を、これまでは企業の中枢部門で経営に関わる企画を作る人などに限っていたが、新商品の企画立案と一体で営業を行う「課題解決型の営業」や「工場の品質管理」業務にも拡大する。

厚生労働省によると、裁量労働制で働く事業場の約45%で、1日12時間を超えて働いている労働者がいるという。今回の対象拡大で、働きすぎの人が増えるおそれがある。

厚生労働省によると、企画業務型の裁量労働制で働く人は推計で約11万人いる。労働時間は1日8時間までが原則だが、制度をとりいれている事業場の45・2%で実労働時間が1日12時間を超える働き手がいる。

「残業代ゼロ」法案を閣議決定 裁量労働制も拡大:朝日新聞デジタルより 2015/04/03 15:25)

■労働組合、監督官の過半数が反対「長時間、いっそう深刻化する」

労働者保護の根幹をなす「労働時間規制」から除外する制度の創設に、労働組合などからは「長時間労働を助長する」と批判の声が上がっている

厚生労働省の審議会では、経営側が「柔軟で効率的な働き方ができる」とする一方、労働組合側が「残業代がなくなり、長時間労働や過労死を招きかねない」などと強く反対の声が上がっていた。

毎日新聞によれば、残業代ゼロ制度について、労働組合の全労働(森崎巌委員長)が労働基準監督官、約2000人を対象にアンケートを実施したところ、過半数が「反対」と答えたという。厚労省の「身内」の監督官に反対の声が根強いという実態が浮かんだ。

ホワイトカラー・エグゼンプションの導入に「賛成」は13.3%、「反対」は53.6%、「どちらとも言えない」が33.1%で、反対が半数を超えた。

同制度の導入による影響については、「長時間・過重労働がいっそう深刻化する」が73.4%、「長時間労働が抑制され効率的な働き方が広がる」は4.2%、「わからない」が22・4%で、懐疑的な立場が多数を占めた。

残業代ゼロ:労働基準監督官の過半数「反対」 - 毎日新聞より 2015/04/03 15:00)

■塩崎厚労相「働きすぎを是正、多様なニーズに対応」

塩崎恭久・厚生労働相は、「働き過ぎを是正するとともに、働く人の多様なニーズに対応した働き方の選択肢を設けるもの」として以下のように語った。

塩崎厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、「改正案は、ワークライフバランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、働く人の多様なニーズに対応した働き方の選択肢を設けるものだ。法案に盛り込まれた『裁量労働制』の適用範囲の見直しや、『高度プロフェッショナル制度』の創設は、経済のグローバル化の進展の中で、日本の労働生産性を向上させ、働く人の意欲や創造性を一層発揮させる。これらの施策は、日本の働き方改革の重要な柱であり、今の国会で早期に成立させてもらいたいし、そのための努力をしたい」と述べました。

成果で報酬 労働基準法改正案を閣議決定 NHKニュースより 2015/04/03 11:18)

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