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「笑っていいとも!」終了から1年 なぜ視聴者は「タモリ」を求めるのか?

2015年05月06日 16時37分 JST
時事通信社

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『笑っていいとも!』終了から1年 なぜ視聴者は「タモリ」を求めるのか?

『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の終了から早1年。昼になれば当たり前のようにテレビの向こうにいたタモリが、ある日突然いなくなった…という喪失感を表した造語“タモロス”なる言葉も生まれ、その唯一無二の存在感を改めて実感した人も多かったはずだ。そして『いいとも!』こそ終了したものの、いまだにその影響力は健在で、『ヨルタモリ』(フジテレビ系)開始や『ブラタモリ』(NHK総合)復活など、何か話題があるたびに度々大きなニュースとなっている。視聴者はなぜタモリを求めるのか?

■タモリは“何にでもなれる”存在

そもそも現在の視聴者、特に若者にとってタモリとはどのような存在なのだろう。お笑い芸人でもなく、俳優と呼べるほどドラマや映画には出ていない。やはり「司会者」ということになるのだろうが、はっきりこれだと限定することはできない。逆にいえば、何にでもなれる存在ともいえるかもしれない。

かつて、ビートたけしがタモリの芸風を「日本一の素人芸」と評したことがある。その類まれな才能に対する畏敬の念とともに、自身が理想とする芸風とは相いれない部分があるという、微妙なライバル心も入り混じった表現だったが、まさにこれこそが一言でタモリを表す言葉だろう。司会をすれば、毒気のない、脱力したユル~い進行ぶりながら、周囲の人間の面白さを引き出しつつ、いつのまにか上手くまとめている。『ブラタモリ』や『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)では、超個人的な自分の趣味の世界をダラダラと楽しみ、素人っぽいのだがプロや専門家以上の存在感を発揮する。そして何よりタモリを「嫌い」という人が少ないのだ。

■かつてはブラックな部分が大人にウケていた

タモリの人気は、このユルさや人徳にあるかといえば、それだけではないだろう。今の若者たちは、かつての“黒い”タモリを知らない。そもそもタモリは、「4ヶ国語麻雀」や「ハナモゲラ語」などに代表されるデタラメ外国語芸、イグアナやイボイノシシ、果ては「中洲産業大学教授」といった架空の人物までに至る形態模写、そうしたアングラな芸がマニアックな大人たちにウケて、テレビに出始めた。また、トレードマークの海賊のようなアイパッチ姿も強烈な印象だった。

今でこそタモリといえば真っ黒なサングラスがトレードマークとなっているが、初期の頃のアイパッチ姿は、当時の子どもたちにとってはどことなく不気味にも思われていたようだ。名前もヤモリやイモリを連想させる“タモリ”だし、髪もいつもポマードでべったりと固め、テラテラとしていて、どこか両生類とか爬虫類っぽい。『今夜は最高!』(日本テレビ系)で大人向けのネタなども披露していたが、子ども向けではない。当時人気を博していた志村けんなどの、明るく、わかりやすく、カラッとしたお笑いとは正反対といってもいい存在だったのだ。

■アングラから国民的な人気司会者へ

そんな“大人向け”の“アングラ”よりだったタモリが、お昼の顔としてテレビに毎日登場するようになり、「ビートたけし」「明石家さんま」とともに“お笑いビッグ3”と呼ばれるようになる。当然、タモリ自ら毒気を抜いていかなければならなくなった。それでも『いいとも!』開始当初は、明らかに酔っ払ったまま生放送に登場したり、番組コーナーをすっ飛ばして「テレフォンショッキング」を番組終了まで続けたり、「テレフォンショッキング」で放送事故寸前の超かみ合わない(会話がほとんどない)トークを繰り広げたり……と、ときには毒を放っていた。

しかし『笑っていいとも!』が国民的番組になっていくにつれ、タモリも「司会者」として多数の番組で司会をつとめるようになり、初期の過激な、アクの強いキャラクターもなりを潜めていく。そして無個性のようでありながら、マイペースで、他人に媚びない、安定感のある“大人”の存在となっていった。そうしたタモリの進化と比例するように、タモリがイグアナをやっていたころの子どもたちは大人の視聴者へと成長し、当時はネタとともによく理解できていなかったタモリの存在感を、あらためて再認識していくことになる。同時にタモリの、その“ユルい”けれども“確固”としたライフスタイルに、憧れさえ抱きはじめるようになったのだ。

そして今、タモリはテレビで笑いを提供するだけではなく、美しく、かっこよく老いていく、あるいは枯れていく、知性的な中高年の姿さえ見せてくれている気がする。今のテレビ界において、誰にも取って替わることのできないポジションを確立しているタモリ。今後も“素人っぽいプロ”という絶妙なさじ加減で、テレビを面白くしてくれるだろう。

(文/五目舎)

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