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東京・港区議会で"言論の自由"求め、若手中心の新会派結成 自民、公明、共産は猛反発

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紛糾する東京都の港区議会代表者会議。左が共産党の風見利男幹事長、真ん中が新会派の清家あい幹事長 | 猪谷千香
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統一地方選が終わり、各地で地方議会が本格的にスタートしようとしている。東京都の港区議会では新しい会派「みなと政策会議」が誕生。民主、社民、維新、無所属の少数会派の区議10人が足並みを揃え、公明6人を抜いて、自民13人の第一会派に次ぐ第二会派に躍進した。若手中心の超党派だ。

ところが、この新会派の結成に自民と公明、共産までもが猛反発。議会運営などを話し合う代表者会議が3回にわたって開かれ、新会派が難詰されるなど、紛糾が続いている。自民と公明は、港区議会では第二会派への割り当てが慣例化していた副議長のポストを、あえて投票方式に切り替え、譲らない姿勢を示すという異例の事態に展開しているのだ。

全国の地方議会を見渡せば、国政で敵対する政党同士でも共闘のために超党会派を構成することは決して珍しくない。神奈川県の鎌倉市議会では、自民、民主、無所属の議員による会派がある。東京都の小金井市議会で自民議員が2つの会派に分かれるなど、自民議員団が2派、3派に分裂している議会も少なくない。こうした例は枚挙にいとまがなく、会派のあり方は各地の議会で異なるというのが実態だ。

地方議員たちが、政党という枠を超えて会派にこだわる理由の一つは、会派が大きければ、議会での重要ポストを手に入れやすいということがある。その会派にとって議会運営を安定させることができれば、自分たちの政策の実現性も高くなる。その一方で、最近では一部地方議会において少数会派の活動範囲が狭められるという事態も明るみになっており、少数会派での活動にはデメリットも少なくない

しかし、地方議会で最も大事なことは、議会内のパワーゲームではなく、多様な住民の意思をできるだけ地方政治に反映させる仕組みを作ることにある。そのために、地方議会には何が必要なのか。東京の区議会からレポートする。

■激しいヤジが飛び、紛糾する代表者会議

新会派の「みなと政策会議」は5月1日に結成された。幹事長を務めるのは、4月の区議選でトップ当選を果たした清家あい区議(民主)だ。5月11日、13日、15日と3回に渡って開催された代表者会議では、自民、公明、共産から新会派に対する批判が集中。傍聴した自民、共産の区議からも新会派に対して激しいヤジが飛ぶ、緊迫した会議となった。

清家幹事長が新会派の理念について、「国政イデオロギーや対立軸を持ち込むのではなく、本当に区民の目線に立った政策を進めていきたい」と語れば、各会派の幹事長から「採択で一致できなければ、何のための会派だ」「政党が関係ないというなら、選挙で政党のポスターを作ってはだめ」「ポストが欲しいための数合わせでは」と強い批判が続出した。

また、新会派の「自由な政治活動が保障された、開かれた議会を求めていく」という理念についても、「言論弾圧、言論の自由がないと言いたいのか」「どういったことを想定しているのか具体論を」など、自民、公明の両幹事長から厳しい発言がされた。

代表者会議では、議長や副議長といった議会におけるポストについても話し合われたが、新会派に対して信頼関係が築けないという理由から、自民、公明は投票形式で決定するとしている。港区議会では1991年以降ほぼ毎回、最大会派以外の会派にもポストが割り当てられるドント方式で、議会のポストを決定してきた。少数会派であっても議会運営に携われるという港区議会の伝統が覆される可能性が高くなっている。

新会派は、定数34の約3割にあたる10人で構成されることから、「区民に付託されて当選してきた議員3割の意見を聞いて欲しい」と主張。新会派に批判的な共産も、ドント式の継続を希望している。議論は5月18日午後に開催される4回目の代表者会議に持ち越された。

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激しい応酬が続く港区議会の代表者会議。左から公明の林田かずお幹事長と自民のうかい雅彦幹事長。

■議会内の対立の原因は「言論の自由」

新会派は「各自の思想・信条・言論の自由を最大限尊重し、多様性を重んじる」という綱領を掲げている。議会内での対立が深まった背景のひとつには、言論の自由に関する問題があった。

統一地方選前、2013年12月の臨時会で当時の井筒宣弘議長(自民)は、自身の長い議員生活では先輩から教えを乞うたことなどに触れ、「最近、インターネットや出版物において、自分の議会活動の成果を過度に主張することが見受けられますが、このようなことは厳に慎まなければなりません」(議事録より)などと若手議員の情報発信に釘を刺す発言をしていた。

議長として異例の発言だが、「出版物」とは具体的に現在2期目で、新会派に加わる横尾俊成区議(無所属)が1期目だった2013年10月に上梓した著書「『社会を変える』のはじめかた」(産学社)を指している。横尾区議は著書の中で、自身のアイデアがどのように実現されたかを書いてたところ、「すべて自身の提案によって実現したと読者に誤解される」として、他会派の議員たちが問題視。2014年3月には、横尾区議に対して5つの会派が公開質問状を出すという騒動に発展していた。

急先鋒だった自民党議員団からは以下のような質問が出された。

いちばん問題だと思うのは、政治家の多数派は、「強いビジョンを持った人」ではないということです。ビジョンや理念などを持たない政治家のほうが成功するといっていいかもしれません。
多くの場合は、政治家が代表しているのは、影響力の大きい組織や人、つまり、全国組織を持つ業界団体や労働組合、地元の町会、自治会長などの声です。高邁なビジョンや理念を掲げるより、この人たちの意見をそのまま汲めば、票がたくさん集まる。その方が効率的なわけです
と書かれていますが、これは港区議会では誰を指すのでしょうか。具体的に示してください。また、この本から察するに、町会や商店会、消防団等の意見を訊くことは悪だということで宜しいのですね。

昨年末の議会にて議長から異例の訓戒があった。これはあなたの事だとは思わなかったからこそ、その後も積極的な挑発的宣伝活動を行っているであろう。あの訓戒に対して感想は。

これに対し、横尾区議は以下のようにそれぞれ回答している。

当該の記述は、前職での経験や知人との議論等から一般的に感じたことを述べた部分であり、具体的に港区議会のことを指してはおりません。また、町会や商店会、消防団等の意見を聞くことは非常に大切だと考えています。P176にも書いた通り、「町会や自治会など昔からまちのなかで活動している人たち、商店街の人たち(中略)などに呼びかけて、いろいろな人の協力を求めながら」ともにまちの理想の姿を描くことが区議会議員にとって大切なことだと思います。

議長の言葉を重く受け止め、今後の議会活動に取り組んで参ります。

このような質問が自民からだけでも14も出された。結局この問題は、各会派からの要求に応じ、横尾区議が謝罪をすることで決着が図られた。しかし、その後も本の回収を求める自民党のうかい雅彦幹事長に対し、横尾区議は弁護士を通じて、要求を撤回しない場合は、言論の自由に対する侵害や名誉毀損、選挙妨害などで刑事、民事上の法的手続きを進めるという趣旨の内容証明を送るなど、大きな軋轢を残している。

また2014年7月にも、井筒議長は議員に対して、「議員のマスコミ等への対応について」という通達を出している。通達では、新聞、雑誌、テレビなどの取材があった際には「慎重に対応し」、「議会全体に影響を及ぼす場合」があるために、議長への内容報告を求めるというものだ。ある女性議員が受けたマスメディアの取材がきっかけとなり、未然にトラブルを防ぐために出された通達とのことだが、異例であることには間違いない。

区議会内の空気は少数会派にとって、言論の自由の阻害にもつながりかねない状況になっていたと複数の区議は話す。こうした諸問題が複雑に絡まりながら、若手を中心とした区議10人による新会派結成へとつながっていった。

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統一地方選前に発行された港区議会の自民党議員団の区政報告。「港区議会最大会派として、これまで中心となって区内の色々な課題を解決してまいりました。自民党以外の他会派が一人や自分たちだけで実現したかのような記事が見受けられますが、自民党が主導し議員全員の協力を仰いで実現したことばかりであることは言うまでもありません」という文言が目立つ。

■文京区議会で、超党派議員による最大会派「ぶんきょう未来」が誕生

港区議会で見られるような問題の、どこに解決の糸口があるのか。同じく東京の文京区議会を見てみよう。前期では民主4人、無所属2人、維新1人の7人構成されていた会派「改革ぶんきょう」があったが、今回の選挙結果を踏まえ、新たに別の維新1人、無所属3人とともに、10人による超党会派「ぶんきょう未来」が誕生した。第一会派である。

今回の選挙で、自民が6議席から9議席へと伸ばしており、第一会派になるかと思われたが、「ぶんきょう未来」に逆転された形だ。「ぶんきょう未来」の上田ゆきこ区議(無所属)に、議会における会派のあり方について聞いた。

上田区議は2007年の初当選以来、無所属を貫いているが、会派としては現在の最大会派になる以前に、3人会派と1人会派を経験している。少数会派と最大会派のメリット、デメリット双方を知る議員だ。

実は、文京区議会では4年前、交渉会派として幹事長会(各会派の代表による会議、港区議会の代表者会議に相当)に参加できる人数が2人から3人に変更されている。つまり、3人以上の会派でなければ、議会運営のさまざまな意思決定がされる幹事長会に参加できず、2人以下の少数会派にとっては不利になってしまう。

「2年間、1人会派でしたが、その間は幹事長会に出られず、傍聴もできませんでした。予算決算の総括質問も交渉会派でなければできません」と上田区議は振り返る。少数会派なりに戦ってはきたが、「耐え忍ぶ場面もあった」という。

一方、現在の最大会派「ぶんきょう未来」での活動では、どのような効果が生まれるのだろうか。ひとつには、「政策を作る上で各議員から集まる情報量が多く、多角的な視点からの検討が可能になる」ということだ。さらに、上田区議は議会運営についてもこう語る。

「議員にとって大切な仕事のひとつは、議会でまとまるということです。議会は区長と対峙し、区民の意見を伝えていくという前提があります。そのためには第一会派として、区長との間に緊張感がある議会を構成しなければなりません。自民党から主導権を奪って権力を行使したいわけではなく、自民党も少数会派も含めて多様な議論ができる土壌を作り、区民の皆さんから選んでいただいた一人一人の議員が最大限の議会活動ができるということが大事です」

■多様性のある議会を運営していくために必要なこととは

異なる政党や無所属の議員による超党会派のあり方は、有権者にとってわかりづらくもある。そこで上田区議は、国会と地方議会の仕組みの違いを指摘する。つまり、国政は議員内閣制で、国会議員の中から首相が選出され、与党も存在する。他方、地方議会では二元代表制であり、首長と議員は別々に選ばれているという違いがある。

「首長は議会の中から選ばれるものではなく、議会と対等に向き合う立場です。地域住民の代表として、ゴミや自転車、図書館、防災など最も身近な生活問題を取り扱う地方政治の場ではイデオロギーは重要ではなく、一住民の立場での政策判断が求められます」

地方政治の場における会派は、政党とは異なると説明。「私たちの会派は政党とは違い、文京区の議会における政策グループです。地域密着のスタンスで政策を実現していくために議会をまとめ、動かせるよう、協力し合っています」と語る。

会派10人の中では、例えば原発問題など個別の政策について立場が違う場合もある。そういう時、どういう態度で議会に臨むのだろうか。

「より大胆な多様性のある会派を作ったので、『会派ではない』との批判を受けることもあります。でも、議会とはそもそも多様性があり、みんな考え方が違う中で話し合い、ひとつの方向性を見出すものです。それでも考え方が違ってしまう場合は、多数決でも付帯条件をつけて少数派の意見を反映させるなど、合意できる部分を模索していく。それが議会だと思います」

■世田谷区議会では少数会派の討論時間が削減される採択

一方、東京の世田谷区議会では、少数会派の区議たちがTwitterやブログで区議会の体制に批判の声を上げている。きっかけは、5月12日に非公開で開催された区議会全員協議会。最大会派である自民、公明の提案により、一律10分だった委員長報告に対する意見・討論などが、少数会派を対象に削られることが採択されたという。

この採択は今後、議会運営委員会で正式に決定される見通しであることから、少数会派の議員たちは街頭で区民に支援を訴えるなど、阻止のために活動している。

今、社会の多様化が盛んに指摘されている。本来であれば、多様な区民の意思を忖度し、地域のために政策を進めるのが地方議員の務めであるにも関わらず、逆行しているかのようにも見える議会もある。自分たちの町の議会は、きちんと機能しているか。住民を置き去りにして、議会内の権力闘争に陥っていないか。今後、私たち一人一人が地方議会に厳しい眼差しを向ける必要があるだろう。

【UP DATE】
「一律10分だった各委員会における討論」を「一律10分だった委員長報告に対する意見・討論など」と変更しました(5月19日11:37)

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