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ピース又吉の「火花」、タレント本の枠を超えた異例のヒット

2015年05月31日 22時08分 JST | 更新 2015年05月31日 22時12分 JST

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【オリコン上半期】ピース又吉『火花』、“タレント本”枠を超えた異例のヒット

2015年上半期の本ランキングが発表され、三島由紀夫賞ノミネートが大きな話題になっていたお笑いコンビ・ピース又吉直樹の『火花』が、小説で唯一、総合ランキングTOP10入りを果たした。そのほかジャンル別では、コミックは『ONE PIECE』『進撃の巨人』を追う作品として『七つの大罪』が浮上。文庫は、めずらしく海外作家の作品が上位にランクインした。

◆タレント本の意識を変革するヒット作の登場

映画が大ヒットした『永遠の0』の文庫をはじめ、ゲーム『妖怪ウォッチ』の攻略ガイド、今年映画化された“ビリギャル”『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』などが話題を呼び、コミックでは『ONE PIECE』『進撃の巨人』が無類の強さを見せた2014年の年間ランキングから半年、2015年上半期の「本ランキング」が発表された。

注目したい傾向は、今回もメディアで取り上げられることの多かった作品や題材にまつわる本が好調な点だ。

その筆頭が、BOOKランキング4位の又吉直樹『火花』。かねてより大の読書家として名を馳せていた、お笑いコンビ・ピースのボケ担当である著者が手がけた初の長編が、3月発売にもかかわらず上位にランクインしてきた。これまでにもいわゆる「タレントが書いた本」のヒットは多々あったものの、文学通をもうならせ三島由紀夫賞にノミネートされるような“実績”を背景に持った作品の登場は初。作家としての才能の片鱗を見せつけたこの作品の登場が、上半期最大のトピックであり、タレント本の意識を変革する第一歩と言っていいのではないだろうか。

一方、テレビでは何かと、外国人から見た日本の魅力や美点を褒めたたえる番組が多いが、日本人自身は意外と海外の事情については疎いものだ。BOOKランキングの2位に飛び込んできた『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・スコット著)は、アメリカ人の著者がフランスの貴族の家でのホームステイを通して身につけた“暮らしの質”を高める秘訣についてまとめたもので、女性層を中心に、海外の風習、文化、思考について知りたいというユーザーサイドの欲求がみて取れる。それも日本人ではなく、他の国の人の目を通して、というところがミソ。“海外に学ぶ”という姿勢は、グローバルスタンダードが求められる現代においては必須であり、今後もこの傾向は高まっていくだろう。

また、より社会性のある分野からの書籍も売れた。ウクライナ紛争やイスラム国の脅威といった多くの人が注目している情勢においても、その背景を含めての知識となるとまだまだ十分とは言えないように思う。そうした世界情勢を平易な文章でまとめた『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』がBOOKランキングの7位。著者は、テレビのニュース解説などでおなじみの池上彰と、元外務省主任分析官の佐藤優。東京オリンピックを5年後に控え、もっと世界のことを知っておかなければならないという人々の欲求が生み出したベストセラーだ。

◆新たな読者層を開拓したコミックとは!?

コミックでは、定番の『ONE PIECE』『進撃の巨人』を追う作品として『七つの大罪』が浮上してきた。昨秋から今春にかけてのテレビアニメ放映、さらに今年に入ってからのゲームを含めたメディアミックス戦略が功を奏し、これまでにない盛り上がりを見せている。ここでもメディアが生み出す相乗効果の大きさが浮き彫りとなっている。

そのほか、この上半期の動向としては、2014年の年間TOP50にそれぞれ4作品を送り込んでいた『暗殺教室』『東京喰種トーキョーグール』がいずれも前年の実績を上回るセールスを記録し、上位に食い込んだ(『東京喰種』は新章の『東京喰種トーキョーグール:re』)。アニメ化はもちろんのこと、実写化(『暗殺教室』)や舞台化(『東京喰種』)など話題が拡大したことが、新たな読者層の開拓につながったのだろう。同じく、実写映画が公開された『アオハライド』も好調を持続している。

文庫でも話題の書が目覚ましい動きを見せた。東野圭吾、宮部みゆき、三上延らおなじみの人気作家陣の作品に交じって異彩を放っているのが3位の『その女アレックス』(ピエール・ルメートル著)だ。長らくこのジャンルにおいては海外作家の作品が上位に入ってくることはなかったが、久々の特大ヒットの誕生となった。その背景には、「本屋大賞 翻訳小説部門1位」をはじめ、国内外のミステリー賞7冠を獲得した“品質保証”が大きく関わっている。とりわけ「本屋大賞」の威光は大きく、これによってメディアで大きく取り上げられたことがヒットへと結びついた。

ネットによって読書環境が大きく変わりつつある「本」だが、その魅力を拡散させるのもまたネットをはじめとするメディアであるのが実情だ。

(文:田井裕規)

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