タイが新幹線を導入した決め手は? 台湾に続いて世界2例目

5月27日、タイのバンコクとチェンマイを結ぶ高速鉄道に、日本の新幹線を採用することを、日本とタイの両政府が合意した。実現すれば2007年の台湾に続く2例目の新幹線輸出になる。
時事通信社

5月27日、タイのバンコクとチェンマイを結ぶ高速鉄道に、日本の新幹線を採用することを、日本とタイの両政府が合意した。実現すれば2007年の台湾に続く2例目の新幹線輸出になる。朝日新聞デジタルなどが報じた。

路線は、タイの首都バンコクと北部の観光都市チェンマイを結ぶ660〜670キロの区間。太田昭宏国土交通相とタイのプラジン運輸相が国交省内で会談し、協力覚書を締結した。今後は区間内の需要を予測し、採算性を調べるほか、詳細なルートや駅などの建設計画も検討するという。

両国は2012年に、鉄道分野での協力を進めることを合意していたが、新幹線の導入が明記されるのは初めて。日本は車両、線路、運行システムなどの新幹線技術をセットにして売り込みたい考えで、JR東日本、三井物産、日立製作所、三菱重工業が連合で、事業への参加を検討しているという。

ただし、懸念も残されている。首都バンコクの人口は500万人以上だが、チェンマイの人口は20万人余り。高速鉄道の採算性で疑問視されているほか、日本円でおよそ1兆5000億円に上るとされる建設費に、日本がどの程度協力するかは、不透明のままだ。

■なぜ新幹線を選んだのか?

鉄道分野での協力覚書に署名する太田昭宏国土交通相(前列右)とタイのプラジン運輸相(同左)=27日、東京・国土交通省

タイはインラック前首相が新幹線などの高速鉄道導入を計画していたが、2014年5月のクーデターで誕生したプラユット暫定政権は計画を見送っていた。しかし、2月にプラユット暫定首相が訪日した際に東京〜新大阪間を東海道新幹線「のぞみ」の最新車両N700Aで移動するなど、新幹線導入に興味を示していた。

のぞみに乗り込んだプラユット首相は東京駅構内の商業施設について「参考にするべきだ」などと語った。新大阪駅で降車後には「(新幹線は)素晴らしい」と感想を述べた。

中国高速鉄道とどちら良い? タイ首相が「のぞみ」と乗り比べ 東京-新大阪を新幹線移動 - 産経ニュース 2015/02/10 15:18)

だがタイの高速鉄道には、日本だけでなく中国も積極的な売り込みを図っていた。プラユット暫定首相は中国でも高速鉄道を利用しており、「乗り比べ」をした形だった。新幹線導入の決め手となったのは「資金面で有利だったから」と朝鮮日報が報じている。

タイの高速鉄道計画には中国を意欲を示していた。李克強首相が2013年10月、タイで直接売り込みを図るほどだった。今回、タイが中国ではなく日本を選んだ表面的な理由は、高速鉄道建設をめぐる借款の利子の問題だった。中国は事業資金を貸し付けながら、2-4%の利子を取る方針を示したが、日本は政府開発援助(ODA)からの資金提供という形で、利子を1%とする意向を示していた。

Chosun Online | 朝鮮日報 2015/05/30 08:26)

■安倍政権は新幹線をトップセールス

タイのプラユット暫定首相(左)と握手する安倍晋三首相=2015年2月9日午後、東京・首相官邸

インフラ輸出を成長戦略の柱の一つに掲げる安倍政権は、新幹線のトップセールスに力を入れている。安倍首相は訪米中の4月30日、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事と会って、サンフランシスコとロサンゼルスの840km間で予定している高速鉄道に日本の新幹線を売り込んだ

さらに5月25日、マレーシアのナジブ首相と官邸で会談した際に、同国が入札を予定している高速鉄道計画で新幹線が導入されることに期待を表明した

インドのナレンドラ・モディ首相も、2014年9月に来日した際に「日本政府と力を合わせて協力を強化したい」として、高速鉄道網への日本の新幹線導入について意欲を示していた

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