政府が進める高卒者向けの新しい学校制度に大学教授「ブラックジョークだ」

政府は高卒者などを対象とした、職業教育中心の新たな高等教育機関を設置する方針を固めた。4年制なら大学などの卒業者に与えられる「学士」に相当する学位が取得できる。

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政府は高校の卒業生などを対象とした、ITなどの分野で即戦力を育てる新たな高等教育機関を設置する方針を固めた。既存の大学や短大とは別の新たな種類の学校で、職業教育が中心となる。4年制なら大学などの卒業者に与えられる「学士」に相当する学位が取得できるようになり、新規だけでなく専門学校などが新しい教育機関に移行することも認められる。時事ドットコムなどが報じた。

■どんな教育機関になるの?

現行の大学教育などでは、産業界が求める実務的な教育が行われていないとの指摘がある。新たな教育機関では、教育カリキュラムを教育機関と産業界が共同で作成。これまで大学などで行ってきた「哲学」や「古典」などの素養を養うのではなく、実社会に役立つようなコミュニケーションスキルやプログラミングなどのITスキルを身につけるようにする

■専門学校などが新しい教育機関に移行することも想定

新しい教育機関は、新設だけでなく少子化で学生不足に悩む私立大学や専門学校からの移行も想定される。これまで実践的な職業教育は、専門学校が中心に担ってきたが、教育の質がまちまちなうえ、学位がとれないなどの課題もあった。新しい教育機関では、国が認可することで教育の質を保証。4年制なら「学士」に相当する学位が取得できるようになる。

■専門家「ブラックジョーク」

この政策に対して実践的な教育を行っている大学教授から「ブラックジョークだ」などの意見が出た。中央大学理工学部教授の竹内健氏は、現在政府が掲げているスキルでは海外に太刀打ちできないとツイートした。

元々実務的な教育を大学で行っている竹内氏は、産業界から「もっとぶっ飛んだ研究をしろ」と言われるのだという。竹内氏は安倍政権が進めているイノベーションを生み出すための人材育成戦略について、次のようにブログに綴っていた。

最近、企業のトップの方から言われます。

「社内で変なことを提案する奴が減ってきた」

「お前は大学なのだから、もっととべ」

企業も長期的な研究開発の投資をしずらくなったからこそ、大学は勇気を持ってぶっ飛んだことをしなければいけないのではないでしょうか。

国の財政状況が悪化するとともに、大学の研究費(国家プロジェクト)もすぐに確実に役に立つもの、産業化につながることに重点的に投入するようになっています。

私は偶然、そういった流れの時に企業から大学に移ってきましたので、今まで随分、研究予算では恩恵を受けてきたと思います。

しかし、ショートタームで産業に貢献するだけでは、大学の役割として不十分であると感じるようにもなりました。

イノベーションが必要な時代だからこそ、目に見える小さな目標を狙うのではなく、志を高く持たなければならないと思うのです。

課題解決力、グローバル、産官学連携という政策から真のイノベーションが生み出されるのか - 竹内研究室の日記より 2015/05/29)

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