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「ヨルタモリ」好調、その理由を探る

2015年08月06日 22時54分 JST | 更新 2015年08月06日 22時57分 JST

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番宣なしが好感?フジテレビの良心『ヨルタモリ』

『笑っていいとも!』(フジテレビ系)が2014年3月で終了してから約半年、タモリロスの人々に朗報だったのが、『ヨルタモリ』(フジテレビ系)のスタートだった。初回視聴率は6.6%。深夜とはいえ、タモリのフジテレビ復帰番組としては決して手放しで成功と言える数字ではなかった。しかし、その後は上戸彩出演回の10.0%、マツコ・デラックス出演回の11.4%や堤真一出演回の10.5%など、10%を超える回もあり、おおむね好調。そのどこか懐かしい安定感と安心感、くだらなさのなかにもときおりチクっと刺さる社会性も有したタモリネタが往年のテレビファンの支持を受けつつ、番組内のコントで議題に上げたネタがネットで大真面目な議論になるなど、不思議な存在感を放っている。

◆タモリ看板番組からバランスよく“いいとこどり”

そのジワジワくる人気の秘密とはなんだろうか。ひとつには、これまでのタモリの看板番組の良い部分をバランスよく“いいとこどり”していることが挙げられるだろう。数々のミュージシャンが常連客として出演し、おもむろにゲストやタモリとセッションをする様子は、40代以上の視聴者なら覚えている『今夜は最高!』(日本テレビ系)のような、音楽との結びつきの強い大人の番組という空気がある。

また、この番組では、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」ような、トーク番組の一面も持っている。タモリは向かって右側、ゲストはその左側に座り、フリートークでゲストの人となりにゆるやかに切り込んでいくという形も「テレフォンショッキング」と一緒。『いいとも』と違うのは、ゲストのトークを盛り上げるのがタモリひとりではなく、ママである宮沢りえ、常連客である能町みね子やミュージシャンたちも加わっているということである。

「テレフォンショッキング」には、決まった台本がなかったというが、この番組のトーク部分にも、とくにかっちりと決まった段取りは少なく、そのゆるい空気が、逆に、加山雄三、井上陽水、秋元康、松本幸四郎、甲本ヒロト、篠山紀信などの出演自体が驚きの大御所ゲストたちの本音を引き出すのに役立っているように思う。また、りえママを前にしながら、夜番組ならではの下ネタがけっこうな頻度で飛び交うのも、オヤジ世代からは喝采を浴びていることだろう。

◆架空キャラクターとして出演する現実とも虚構ともつかない世界

このほか、番組では、宮沢や能町、ゲストは“本人”として出演しているが、タモリだけは、岩手県・一関市のジャズ喫茶のマスター・吉原さんや、関西出身の建築家・近藤さんなど、架空のキャラクターとして出演している。この架空のキャラクターがいることで、現実とも虚構ともつかない、ゆるい不思議な感覚をもたらしてくれる。もともとタモリは、「何かになりすますのが好き」とのことで、タクシーに乗ったときに、医師になったりして、運転手と延々話したりしていたという。そんなタモリの個人的な楽しみが番組に反映されているようだ。

合間に流れるタモリのひとりコントも、回を追うごとにシリーズ化されて広がりをもったり、深くなっていったりと、じわじわとそのおもしろさに拍車がかかってきているように思う。ときには、くだらなさのなかに現代社会をチクリと揶揄するメッセージをひそませるところにも味がある。まさにタモリならではのおもしろさが、自由で伸び伸びとした空気感のなかでいかんなく発揮されている。

◆“番宣”ゼロをなしえるタモリの人柄とスタッフの気概

昨今のトークやバラエティ番組に出演するゲストは、なんらかの宣伝のために稼働していることが多い。そのため、映画公開時やドラマのスタート時期には、同じような俳優ばかりがあちこちの番組に出演している。

しかし、『ヨルタモリ』では、豪華ゲストが出演しながらも“番宣”をいっさいしない。昨今唯一といってもいいかもしれない、その番組のあり方、視聴者への姿勢は、タモリの人柄と番組スタッフの気概がなしえているのだろうか。そこも番組のよさのひとつとして視聴者に伝わっていることは間違いないだろう。なにかと批判を受けることもあるフジテレビだが、同番組の現場にはテレビマンの気概がしっかりと根付いていることが伝わってくる。それは視聴者からも好感を持って受け止められている。

番組の放送は日曜の深夜。翌日から1週間がスタートするOLやサラリーマンからすると、憂鬱なひとときだが、そんな気持ちをこの番組の“虚構感”が忘れさせ、癒しているのではないかとも思える。現在のところ、視聴率は6%~9%台で上がったり下がったりしているが、往年のテレビファンを魅了している同番組は、テレビ好きにとっての“良心”として、歴史に名を残していくのではないだろうか。大げさかもしれないが、視聴者もきっとそう願っているはずだ。

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