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「ケンカをしたらログを残します」夫婦で仕事、家事、子育て。漫画家ユニット「うめ」の働きかた

2015年08月21日 22時12分 JST | 更新 2015年08月22日 00時40分 JST

連続ドラマ化された「東京トイボックス」シリーズなどのヒット作で知られ、現在は『スティーブズ』を連載中の人気漫画家「うめ」。その正体は、小沢高広さん(シナリオ・演出)と妹尾朝子さん(作画・演出)による夫婦ユニットだ。

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仕事、家事、子育て、さらには住まいも職場もすべてが一緒。そんな2人が、仕事上のパートナーとして、夫婦として、そして2人の子を育てる親として、上手くやっていくための秘訣とは? 

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(左)妹尾朝子さん(右)小沢高広さん

■仕事もプライベートもすべて地続き

――こちらの自宅兼仕事場は、1年前に建てたばかりだそうですね。

小沢:最初は建築士さんが仕事場と生活空間をきっぱり分けてくれたんです。玄関がひとつあって、右が仕事場、左がプライベート空間というように振り分けてくれたんですけど、途中で「そもそもこの仕事、一日中ずっとやってるんだからプライベートもオフィシャルもない」って気づいて、全部地続きにしてください、と変更をお願いして。

妹尾:3階建てなんですけど、1階は寝室と倉庫で、いずれ子供部屋にするつもりです。この2階がキッチンとリビング兼、仕事場と打ち合わせスペース。3階がお風呂と洗濯場と屋上です。 

小沢:キッチンのすぐ隣がガラス戸で隔てた仕事スペースです。僕、料理担当なんですけど、煮物とか作りながら仕事ができるんですよ(笑)。以前に住んでいた戸建ては仕事場が3階でキッチンが1階だったから、火を点けっぱなしにできなくて。何ならそこ(キッチンと自席)だけあれば生きていけます(笑)。

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キッチンのすぐ隣に仕事スペースがある

――空間としては区切られているけれども、ガラス戸ならリビングのお子さんたちの姿も見えるので安心ですね。

小沢:そこは想定外のメリットでしたね。長女が去年、小学生になったんですけど、そうなると友達が遊びに来るじゃないですか。でもガラス戸を閉めておくと、なんとなく声は聞こえるしちらちら姿は見えるけど、何をしているのか詳細まではわからないというちょうどいい距離感。よっぽど危ないことでもしない限りは仕事の妨げにならないので、子供が小さいうちはこれいいな、と思いましたね。

妹尾:まったく声も聞こえない、姿も見えないだとちょっと怖いしね。もっと大きくなったら1階で遊べばいいわけですから。

■漫画家ユニットが結婚を決めた理由

――プライベートでは小学2年生の長女と4歳の次女、2人の姉妹の子育て真っ最中だそうですね。育児をテーマにした初のエッセイコミック「ニブンノイクジ」も連載中ですが、結婚を決意したのはどんなタイミングでしたか?

小沢:子供ができたからです。2007年に妊娠がわかったとき、最初は「でも籍入れるの面倒くさいよね」ってお互い言ってたんですよ。

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妹尾:結婚という形に2人ともとくにこだわりはなかったので。

小沢:でも妊婦健診の用紙をもらいに役所に行ったら、「なんで籍を入れてないんですか?」って逆に聞かれて。「面倒くさいから」って答えたら「はあっ!?」って顔をされました(笑)。それで役所の人から「籍を入れないことはできるけど、この先いろんな手続きが煩雑になりますよ」「出す書類が増えますよ」と言われて、そっちのほうが面倒だなって。結婚する面倒くささと、結婚しない面倒くささ。秤にかけたとき、日本の社会はどうやら結婚しないほうが面倒くさいようにできているんですよね。

■暮らしながら働き、働きながら暮らす毎日

――今の生活のタイムスケジュールを教えてください。

小沢:僕は毎朝3時半くらいに目が覚めます。ただ、子供が横で寝ているので、よっぽど忙しくない限りはそこで本を読みます。本を読むのも仕事なんで。活字ならiPhone、漫画ならiPad。暗がりでも読めるのが子持ちにとっては電子書籍の一番のメリットです。それから4、5時くらいには起きて仕事を始めて、6時半からお米を炊いて朝食の準備。7時15分に子供らを起こして食べさせて、長女が8時くらいに学校に出かける。

妹尾:私はそのあいだに洗濯機を回したり、ゴミ捨てをしたり、子供が使った食器を洗ったりして。うち、大人は朝はあんまり食べないんです。

小沢:次女を保育園に連れて行くのは僕の担当。で、帰ってくると洗濯物が干し終わっていて、ルンバを回しながら妹尾がWii-Fitで体操をやっている(笑)。

妹尾:もう7年くらいずーっとやってるんですよ。こないだ、ウィーボくん(Wii-Fitのキャラクター)から「同じメニューをずっとやり続ける柴犬タイプですね」って言われて、「クリエイターなのに柴犬タイプって……」とちょっとショックでした(笑)。

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小沢:それで2人とも9時から仕事スタート。打ち合わせや取材なんかは午前中に入れます。アシスタントが来るときは10時くらいから。お昼は外食かお弁当。僕が作ることもあります。あとは夕方まではずっと作業ですね。

妹尾:夕方6時になったら私が保育園に次女をお迎えに行きます。

小沢:そのあいだ、買い物あるときは僕が行って晩御飯を作って、みんなで食べて、片付けはたいてい妹尾ですね。子供らをお風呂に入れるのはどっちも半々くらいかな。それで21時半くらいになったら「そろそろ歯を磨いて寝なよ~」って言って寝かしつけて22時には就寝。いやあ、言葉にすると嫌味なほどに規則正しいですね(笑)。

妹尾:でも「これしか手がなかった」という結果なんです。バレーボールの試合のローテーションみたいに、こっちがこう打っているときは、もう一方がこう守っている、みたいな。昔は21時に無理やり子供を寝かしつけて、忙しいときは午前3時まで仕事をしたりしてたんですよ。でも「今日は絶対寝て!」っていう夜に限って寝ないんですよね。それがすごくストレスで。

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小沢:そうそう、子供側も「負けないっ!」みたいな(笑)。でも保育園に入れてから生活リズムが整った。夜型スタイルは完全に諦めて、21~22時に一緒に寝て、早く起きて仕事をすることにした。結局、そっちのほうがストレスがたまらないんですよね。

妹尾:保育園は本当に入れてよかったですね。1月生まれの次女は生後3カ月のクリオネみたいなときから0歳クラスに通ってますけど、園での生活もすごく楽しそうで。先生たちにも懐いていて、「おうちが2つある」みたいな感覚らしいです。

■人間万事塞翁が…

nibunnoikuji

連載中の育児コミックエッセイ「ニブンノイクジ」

■ケンカがこじれたらログをとって画面に映す

――よく聞かれる質問だとは思いますが、公私にわたって常に一緒だと衝突してしまう機会も多いのでは?

小沢:普段、運動していない人が筋トレすると筋肉痛になるじゃないですか? でもずっと鍛え続けると筋肉痛にならなくなる。あれと同じで、今はお互い「ケンカ筋」がついてきましたね。

妹尾:ずっと一緒にいるから当たり前なんですけど、やっぱり最初のうちは衝突ばかりでしたね。今は「その日のうちに解決する」というルールを決めています。そうじゃないと次の日の仕事に響くので。「旦那ともう3日も口きいてない」って話をママ友から時々聞くんですけど、うちの場合は……。

小沢:「そんなお花畑みたいなこと言ってんじゃないよ!」って感じです(笑)。だって話さなかったらうちは仕事なりませんから。ただ、とことんこじれたときはログを取りますね。

――ケンカのログ? 

小沢:お互いが喋っている内容を僕がキーボードで打って、リビングのテレビ画面に映すんですよ。そのログの流れを見ながら「じゃあ、これとこれはひとつの意見でいいよね」「じゃあ問題はこうだよね?」って話し合う。

妹尾:まあ基本的に私が悪いことになるのが多くてむかつくんですが(笑)。

小沢:うちは「ごめんね」で許すっていうのは基本的にしないんですよ。その場の相手への非礼に対して謝ることはあっても、それで問題は解決しないので。必ず、「次はこうする」「それができなかったらこうする」という改善プランを考えて共有する。さすがに文書までは作りませんが、そこまでやって終わりです。

――「父母会の会長をやって、いろいろスリム化してみたよ」もそうですが、情や慣習にとらわれず、徹底した合理的判断に基いて行動している印象を受けます。その上で、仕事も育児もPTAも、楽しみながらやっている姿が素敵ですね。

小沢:保育園の父母会はかたっぱしから変えましたね。やりたくはなかったのですが、前年度の父母会の活動の積極さが正直負担で。会長を引き受ける前に規約を読んで、「これなら相当変えられるな」とわかったのでやりました。ただ小学校のPTAもなかなかですよ。だって最初に渡されたプリントに「PTA行事は原則お母さんが参加してください」って書いてるんですよ!? まあ、最初の役員決めからしれっと僕が行きましたけど(笑)。

妹尾:ちゃんと今年度から「お母さんが参加~」の項目は消してくれたんだからいいじゃん(笑)

――いずれは沖縄にも拠点を持ちたいそうですが。

妹尾:沖縄というか、石垣島が好きで。でも子供がまだ小さいので、子供だけでもある程度放っておける年齢になったら、という感じですが。

小沢:石垣島は適度にコンパクトで飲食店も多いし、山から海まで何でもあって自分にとっては理想の島です。今でもよく通っています。仕事もデジタルで入稿もできるので、10年後くらいには、案外いけるんじゃないかなと思っています。

うめ
小沢高広(シナリオ・演出)、妹尾朝子(作画・演出)からなる漫画家ユニット代表作は『東京トイボックス』『大東京トイボックス』『南国トムソーヤ』など。2010年に日本人漫画家として始めてAmazon Kindleで『青空ファインダーロック』をリリース。現在、スティーブ・ジョブスの若き日を描いた『スティーブズ』を連載中。

阿部花恵

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