アメリカ軍のドローンは、21歳のイギリス人ハッカーも攻撃する

アメリカ軍のドローンは、イギリス国民も攻撃する。イギリス軍は社会への影響を鑑み空爆に参加しなかったが、ISに参加するイギリス人を拘束または殺害することで同意しているという。

アメリカ軍は8月25日、シリア北部の都市ラッカで、21歳のイギリス人ハッカーをドローン(無人飛行機)で爆撃した。アメリカ政府関係者は「高い確率で死亡した」と述べた。

イギリス軍は社会への影響を鑑みこの攻撃への空爆には参加しなかったが、IS(イスラム国)に参加するイギリス人を拘束または殺害することでアメリカと同意しているという。CNNなどが報じた。

■殺害されたとされるハッカー、ジュナイド・フセイン容疑者とは?

今回攻撃対象となったのはジュナイド・フセイン容疑者。ISではアブ・フセイン・アル=ブリタニの名でも知られており、分析によると、ラッカを車で移動中、ガソリンスタンド付近で車から降りたところにミサイルが当たったという。

ジュナイド・フセイン容疑者

フセイン容疑者は2012年、トニー・ブレア元首相の個人メールアカウントに侵入した罪で6カ月間服役。2013年に保釈されたあと、シリアに渡った。妻で2児の母、元パンクロッカーのサリー・ジョーンズ氏(45)もシリア入りしたとされている。

サリー・ジョーンズ氏

ロイター通信によると、フセイン容疑者はシリアに渡った後、「サイバーカリフ国」でリーダーを務めていた。サイバーカリフ国は2015年1月、アメリカ軍のTwitterとYouTubeのアカウントを乗っ取り、「ペンタゴン・ネットワークはハックされた。アメリカ軍兵士よ、われわれはやって来た。背後に注意しろ」というメッセージを掲載した。

その後、マレーシア航空ニューズウィーク誌のTwitterアカウントをハッキング。フランスの国際放送チャンネル「TV5モンド」をハッキングした際は、外部からの攻撃だけでなく社内システムまで制御し、放送中止に追い込んだ。テレビ局側がプロパガンダが放送されることを懸念した。

2015年8月には「ISのハッキング部門」を名乗る組織が、アメリカ軍関係者約1400人分の名前や住所、電話番号、クレジットカード情報等を公開したが、この事件にもフセイン容疑者が関与していたとみられる。

しかし、フセイン容疑者のハッキングの腕は「それほどでもない」との説もあり、ハッキングよりも戦闘員の勧誘やプロパガンダをネットで拡散する存在として危険視されていたとの分析もある。BBCによると、最近のフセイン容疑者の行動をイギリス政府関係者はとても懸念しており、アメリカ軍の「標的リスト」の3番目に名前があったという。イギリス人としては“ジハーディー・ジョン”の名前で知られるIS戦闘員に次ぐ存在だとの見方もあった。

■空爆に加わらなかったイギリス

今回の空爆はアメリカ主導で行われ、イギリスは参加しなかった。イギリス国内のイスラム教社会に与える影響を懸念したとみられる。

ニューヨーク・タイムズは、イギリス政府がフセイン容疑者ら複数のイギリス人の追跡と拘束、殺害について、アメリカ政府と数カ月前に同意していたと伝えている。イギリス内務省の広報官は「ISはイギリス軍を敵対者とみなすと宣言している。無差別殺人やテロなどを阻止するために、ISとともに戦うことを選ぶ人や、ISの野蛮なイデオロギーに賛同する人は誰でも、(アメリカ軍との)有志連合行動にさらされ続ける」と警告した。

アメリカ軍関係者は今回のフセイン氏の空爆について、「高度な情報収集の成果だ」と述べている。アメリカ軍はソーシャルメディアに投稿される情報からIS戦闘員の居場所を割り出し、24時間以内に空爆を行うという作戦を続けているガーディアンによると、ISに参加して空爆などで殺害されたイギリス人は、50人にのぼるという。

IS(イスラム国)

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