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「私はオネエではありません」 能町みね子さんと考える、オネエの定義

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「オカマキャラの男のこと」「女言葉を使うゲイの人」「体は男だけど心が女の人」

そんな曖昧なイメージで「オネエ」という言葉を認識している人は多いのではないだろうか。

「私はオネエではありません」

文筆家の能町みね子(のうまち・みねこ)さんが、日本テレビにそう抗議したことが注目を集めた。発端となったのはバラエティ番組「今夜くらべてみました」(2015年8月4日放送回)の中で、「オネエタレント」の1人として事前に確認なく経歴を紹介されたことだ。

能町さんは、性別適合手術を受け、戸籍を男性から女性に変更している。今あらためて考える「オネエ」の定義とは? 今回のポイントはどこなのか? 前編に続いて能町さんに話を聞いた。

mineko

■「オネエ言葉」が「オネエ」が誕生した?

――「オネエ」の定義について、どのように考えていますか。

自分で「オネエ」を名乗っている方を否定はしないんですけど、まず私は「オネエ」っていう分け方自体に対していいイメージがないんですよ。私が知っている限り、「オネエ」って「オネエ言葉」という単語から来ていますよね。

――「~だわ」といった、ちょっと古風な言い回しですよね。日常的にそんな言葉遣いをする女性は今ではほとんどいませんが。

知人のゲイが「新宿二丁目の方言」なんて冗談っぽく言ってましたけど、以前から「アタシ~だわ」「~なのよ」みたいな言葉遣いが「オネエ言葉」と呼ばれていたんですよね。
最初は、女装しているかどうかは関係なく、「オネエ言葉を使う男性同性愛者」を「オネエ」と呼び始めたんじゃないかと思うんです。それがいつの間にかテレビで広まっていった。昔、『オネエ★MANS!』(日本テレビ系で2006~09年まで放送)っていう番組もありましたね。

――オネエ言葉を話すタレントなどで構成されたバラエティ番組ですね。植松晃士さん(ファッションプロデューサー)、假屋崎省吾さん(華道家)、IKKOさん(美容家)などが多数レギュラー出演されていました。

それまで、昔は「オカマ」、その後は「ニューハーフ」という呼び方があったけど、セクシュアル・マイノリティが少しずつ正しく認識されるようになってきて、男を好きな男が全員女装するわけじゃないんだ、という事実も知られるようになった。「ニューハーフ」と言う言葉も古くなると同時に差別的なテイストもまとい始めて、「じゃあ今までの『オカマ』や『ニューハーフ』をなんて呼べばいいのか?」ということが決定されていないときにこの「オネエ」という便利な言葉が出てきたんだと思います。そこからだんだん「生まれが男性で、男が好きであれば全員オネエ」という、最も雑な分け方になったんじゃないですかね。

だから、私みたいな存在でも、あるいは佐藤かよさんや椿姫彩菜さんでさえも、「元は男」というところだけを取り上げて永遠にオネエというジャンルに入れられつづける。それはもはやレッテル貼りですよね。

本人が「オネエ」という呼び名に誇りを持っているのなら別にいいんです。でも「オネエ」と呼ばれる人全員がそういうわけではない。だからこそ明確に、「オネエ」として扱われることを許さない私のような存在もいる、と表明したかったんです。他人が勝手に「あの人はオネエだ」と決めてはいけない。

mineko

――「オネエ」という言葉は「テレビ用語」の側面が強いのかもしれません。

ああ、そうですね。テレビのタレントさん以外で「私はオネエだ」って自称している人を私は見たことがないですね。「オネエ」という言葉は、セクシュアリティ以前に、タレントとしての立場、芸能活動する者としての肩書きにあたるのかもしれません。

■他人に雑なレッテルを貼るという暴力

――「オネエ」という存在を糾弾しているのではなく、レッテルを貼ってひとくくりに扱ってしまう乱暴さ、そこが抗議の核心だということですね。

そうですね。とくに特定の個人に対して安易にレッテルを貼って「自分たちと別の世界にいる人」としてくくるのは、視界から排除しているのも同然で、差別にもつながる暴力的な行為だと思います。

ただ、私もこれまで「こういうジャンルの人ってこうだよね」と、分析した結果の偏見を面白がる本をけっこう書いてきています。「自分は当てはまるな」と思った人に面白がってもらえればいいと思って書いていますが、無意識に個人のレッテル貼りに移行してしまわないように自戒も込めておきたいです。個人に対して「あなたの肩書きはこうだ」と決めつけるのはすごく失礼なことなので、気をつけたいな、と。

――その後、番組の担当者からの謝罪はあったのでしょうか。

一度先方から事情を説明したいというメールが来ましたが、謝罪・訂正する意志はなさそうなので改めて質問事項を何件かメールしたところ、それから1カ月近く無視されています。このままうやむやにするんでしょうね。私としては、わざわざテレビでもう一度訂正されるのもセカンドレイプみたいで嫌なので、個人的に謝ってもらって今後こういう話題のときに気をつけてもらえればそれでいいんですが。

――先入観や偏見に向き合っていくことは、エネルギーも消耗するし時間も取られるのでは。

疲れますね。だから結構、休み休み(笑)。私はTwitterとかにワーッて書いたりしますけど、一方で「このイラついた時間を持続させたくない」とも思っちゃうんですよ。「常にこういう発言をしている人」と認識されるのも嫌なので。だから、おいしいものを食べただとか、どうでもいいツイートをちょくちょく挟んだりして(笑)。まあ照れくささもあるんですけど。でも腹が立ったことや悲しいことは絶対に忘れないので、自分の中でバランスを取りながら、ですね。

mineko

阿部花恵

能町みね子(のうまち・みねこ)
1979年、北海道生まれ。コラムニスト、漫画家。著書に『くすぶれ!モテない系』『縁遠さん』『言葉尻とらえ隊』など。現在、『ヨルタモリ』『久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポンGOLD』などにレギュラー出演中。

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