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武雄市図書館の選書でCCCが異例の「反省」 愛知県小牧市「TSUTAYA図書館」計画は住民投票へ

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リニューアルオープン直後の武雄市図書館 | 猪谷千香
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2013年4月、レンタルチェーンTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となってリニューアルオープンした佐賀県の武雄市図書館。スターバックスや蔦屋書店を併設し、初年度は市内外から92万人が来館、武雄市は経済効果が20億円あったという試算を発表、全国的に注目を集めた。

しかし、リニューアル時にCCCが購入した図書1万冊に古い実用書などが多数含まれている問題が発覚。メディアの報道が相次いだことを受け、CCCは9月10日、「より精度の高い選書を行うべき点があった事を反省しております」と異例のコメントを発表した。

武雄市では、市民グループが小松政武雄市長を相手取り、武雄市図書館の業務委託は違法だとして提訴、9月11日に初の口頭弁論が佐賀地裁で開かれる。また、CCCと新図書館計画を進めている自治体は全国にあるが、そのうちのひとつ、愛知県小牧市では10月4日に計画の賛否を問う住民投票が実施されることになった。問題は今、武雄市図書館にとどまらず、全国に広がろうとしている。

■古い実用書や埼玉県のラーメンマップはどうやって購入?

武雄市図書館のオープン時に「売り」とされたのが、「20万冊の開架」だった。実際に武雄市図書館へ訪れると天井近くまで届く書架に本が並んでいる。この空間を実現するために、武雄市図書館では新たに約1万冊の図書を購入している。

しかし、購入された図書のリストを市民らが情報公開請求し、ネットで公開すると、批判が巻き起こった。「公認会計士第2次試験 2001」や「海外金融商品全ガイド 2001」、「ラーメンマップ埼玉 2」(1997年刊行)、「浦和REDSの真実 2002」など、10年以上前に出版された実用書や、武雄市から遠く離れた埼玉県関連の本なども数多く含まれていたからだ。

これらの1万冊はどのように購入されたのか、武雄市教育委員会はこう説明する。

「武雄市図書館は、20万冊の知に出会える場ということで、オープン時に開架のための図書を約1万冊、買い足ししています。通常は図書館司書が選定して購入するという流れですが、この時の図書の購入は、新図書館サービス環境整備業務として、CCCに委託している中の初期蔵書整備として行われました」

新図書館サービス環境整備業務は約4100万円の委託料で行われており、これらの図書購入費はこの中から出されている。その内容について、武雄市は把握していたかという質問に対し、武雄市教委では「把握はしています。司書が確認をして、これはどうかなという本は省く作業はしています」と回答している。

これらの図書購入の経緯について、武雄市教委とCCCに対し、重ねて取材を申し込んだが、9月11日に口頭弁論が予定されていることから、「コメントを差し控えたい」という回答があった。

■CCCが選書した1万冊のうち、1冊も借りられていないのは1630冊

これらの図書はネット古書大手「ネットオフ」から購入された。ネットオフは2010年、CCCがネットオフの30%の株式を取得することでCCCの傘下に入った会社で、現在は資本関係にないという。

この問題について、「女性セブン」(9月10日号)や「週刊朝日」(9月11日発売号)、「週プレNEWS」(9月7日付)など週刊誌を中心に相次いで報じられたことを受け、CCCは9月10日、「武雄市図書館の蔵書について」というコメントを増田宗昭代表取締役社長の名前で発表している。

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)が指定管理者として運営をしております佐賀県武雄市の図書館において、一部メディア等で指摘されております蔵書内容について、以下の通り、対応を決定致しましたのでご報告致します。

 ご指摘の蔵書は、2013年4月のリニューアル開館前に武雄市から業務委託を受け、初期蔵書の強化として追加納入した蔵書になります。追加納入蔵書数10,132冊(当時、CCCが出資するネットオフ等より商品リストを事前に確認の上で購入。※現在は資本関係はございません)、納入金額760万円(装備費、物流費含む)で追加納入した蔵書について、より精度の高い選書を行うべき点があった事を反省しております。

 追加納入蔵書について調査した結果、リニューアル開館から2015年9月9日までの約2年半で一度も借りられていない蔵書が1,630冊ある事が判明致しました。つきましては、弊社にてこれらの蔵書と同等の冊数を新たに選書し寄贈することと致します。(1,630冊寄贈予定)これらの対応を、市当局と相談の上、可及的速やかに実施します。

官民一体となった取り組みとなる武雄市図書館については、これまでと変わらず市当局と連携をし、細心の注意をもって今後の運営に注力して参ります。

コメントによると、CCCでは「より精度の高い選書を行うべき点があった事を反省」、リニューアル時に購入した図書約1万132冊のうち、1630冊が一度も借りられてないことが判明したとして、同数の図書を選書し、武雄市図書館に寄贈することを明らかにした。

■公立図書館が古書店で本を買わない理由とは?

しかし、蔵書強化のために古書店から図書を大量購入すること自体が異例という声がある。ある市立図書館司書はこう指摘する。

「公立図書館が古書店から図書を買う場合、新刊購入できないものというのが原則です。古書を購入をしない理由として、現物の状態が不明であること、会計が煩雑であることなどが挙げられます」

一般的に、どうしても古書店を利用する場合は、すでに絶版になっている地域資料を揃えるためなど、限られているという。理由は他にもある。「無料貸本屋」として図書館を批判してきた出版界への配慮だ。

「利用を安く増やすことを考えれば、全国チェーンやネットの新古書店から、安く買える、きれいな本を大量に受け入れるというのは有効でしょう。しかし、それでは地元の書店にもお金が落ちないし、出版社や著者にも還元されない」

指定管理者制度で他の企業が運営している図書館ではどうだろうか。ある公立図書館で指定管理者業務を受託している館長は首をかしげる。

「私たちの会社が受託している図書館では、新古書店からの資料購入は考えられません。基本的に新刊資料です。どうしても品切れ絶版の資料や地域資料は古書店購入もありますが………」

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Tポイントがたまる武雄市図書館の利用カード。導入時には批判が巻き起こった

■樋渡前市長はCCCが設立した会社社長に就任

さまざまな問題が指摘される武雄市図書館。佐賀新聞の報道によると、市民グループが7月、武雄市図書館のリニューアルオープンに伴う改修で締結された業務委託契約の内容が違法であるとして、小松政武雄市長を相手取り、委託料約1億8000万円を当時の責任者である樋渡啓祐前市長に対し、損害賠償請求するよう求める訴訟を起こしている。

9月11日にその初口頭弁論が開かれるが、その直前にメディアからリニューアル時の図書購入について、報道があった形だ。これに対し、樋渡前市長は9月8日、自身のFacebookでこう述べている。

武雄市図書館の選書の問題について、メディアやネットに出ています。私のFacebookという場でみなさんに経緯や今後の対応策について、きちんとご説明するべきだと思っています。しかし訴訟の最中なので、現時点で詳細のご報告ができません。申し訳なく思っています。すみませんが、もう少しだけ時間をください。

ただ確実にいえるのは、関係者一同、図書館をより居心地の良い場所にしたい、良書との出会いの場としたいという思いで取り組んできたということです。(抜粋)

なお、樋渡前市長は1月に行われた佐賀県知事選にともなって武雄市長を辞任。佐賀県知事選に落選した後、7月にCCCが「スマートフォンを利用して、高齢者サポート・健康増進など、ふるさと(地域)活性を実現することを目的に」設立した、「ふるさとスマホ株式会社」の代表取締役社長に就任している。

■愛知県小牧市ではCCCと提携した新図書館計画が住民投票へ

そして、問題は武雄市だけにとどまらない。現在、武雄市図書館の「集客力」を見て、CCCとともに図書館作りをしようとしている自治体が全国にある。

愛知県小牧市では、CCCなどと提携して新図書館建設計画が進められているが、市民らから反対の声が上がっている。これを受け、小牧市議会で9月10日、計画の賛否を問う住民投票条例が可決。10月4日の市議選と同日に実施される。山下史守朗(しずお)小牧市長は即日、以下のようなコメントを発表している。

争点となっている新図書館建設計画は、現図書館の老朽化や狭隘化の問題解決のみならず、20年に亘って停滞してきた小牧駅前再開発にかかわる市政の懸案を解決するためのものであり、小牧駅前に新図書館を建設する基本設計の予算、民間事業者とのアドバイザリー契約の予算、新図書館に指定管理者制度を導入するための条例改正について、昨年の市議会において共産党を除く全ての議員による賛成のご議決を頂くなど、市として民主的かつ適正な手続きにより進めてまいりました。

その意味では、昨年の議会の議決と矛盾を生ずるかに見えるこの度の議会の判断には、市長として大変困惑しているところであります。(抜粋)

また、神奈川県海老名市立図書館では、CCCと図書館流通センターの共同事業体による指定管理がスタート、10月1日に中央図書館がリニューアルオープンする。これ以外にも、宮城県多賀城市でも2016年3月に多賀城駅前の再開発ビルにCCCが指定管理者となる新図書館が開館予定だ。岡山県高梁市、山口県周南市、宮崎県延岡市でも、CCCと協力した計画が進められている。

しかし、こうした武雄市図書館のあり方は、他の自治体への影響も免れない。官民連携事業においては、公共性と透明性を保つことが必要とされている。武雄市とCCCは、なぜネットオフから図書を大量購入したのか、どういう選書基準があったのか、武雄市民に対してさらなる説明がなされるべきだろう。

【UPDATE】

武雄市教育委員会の浦郷究教育長と当時の責任者だった樋渡啓祐前市長が9月11日、それぞれ釈明文を公表した。浦郷教育長は武雄市の公式サイトで、「書架の高い部分には本の落下防止として柵を新たに設置したこと」など、利用者の安全対策が緊急に必要となり、古書を購入することでコストを抑えたと釈明。樋渡前市長は、この決定について市教委に委ねており、「詳細まで関知していなかった」と自身のブログで説明。「行政手続として問題はなかったにしても、プロセスについて説明を怠っていたこと」について、「私の責任は重い」として謝罪している(2015/9/12 18:45)

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