「ISILを壊滅させるにはもっとやらなければいけないことがある」ケリー国務長官独占インタビュー

大国・アメリカは今の難民問題をどう考えているのか――。アメリカのケリー国務長官がハフポストの独占インタビューに答えた。
HuffPost

大国アメリカは今の難民問題をどう考えているのか――。

9月上旬、アメリカのジョン・ケリー国務長官が、ハフポストUS版の独占インタビューに答えた。ここでは、ヨーロッパで緊迫する難民問題と、環境問題について語った部分を紹介する。(聞き手:サム・ステイン ハフポストUS版シニア・ポリティクス・エディター)

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――難民危機についてお話しましょう。今年に入って、ここで、益々差し迫った問題になっています。難民危機です。

非常に緊迫していますね。

――我が国はもっと手助けできないのでしょうか?

ここで強調されるべきことは、問題の根源に対処する必要があるということ。そもそも、人が大量に国外脱出するのを防がなければいけないと思います。

――シリアの市民戦争の解決の気配はなく、その解決は今すぐに起こることでもありません。私たちができることは何ですか?

いや、我々がシリア人を守るためにできることはもっとあります。明らかに、彼らが苦しまなくていいように、体制を整えなければいけません。仮設住宅、十分な食料が提供されなければいけません。

――我が国はもっと難民を受け入れなれないのですか? ドイツは80万人を受け入れています。

確かに、永住を基準にして受け入れるとは言っていないですね。我が国には、ヨルダンとレバノンに大規模な難民キャンプがあります。それぞれにいろんな国の人がいます。トルコにも難民キャンプがあります。今の問題に対処するために、差し当たり、難民キャンプの体制を整える必要があるでしょう。

こうしたことが、多くの国が根本的な問題に焦点を当てるきっかけになると信じていますし、そう願っています。

――今朝、シリアの3歳の男の写真を見る機会がありましたか?

もちろんです。

――どう思いました?

本当に心をかき乱す、やるせない写真です。いろいろな意味で。同じぐらいの孫が私にもいますし。

――過激派組織「イスラム国」(ISIL=IS)に大統領が宣戦布告をしてもうすぐ1年になります。最近の報告で、軍諜報部の報告が根本から改ざん、脚色されていたとありました。わかりませんが、政策立案者に影響を与えるか、イスラム国作戦の状態の真実を隠したのでしょうか? これらは見ましたか?

軍の報告と何ですか?

――私の記憶では、国防総省を査察官が調査している報告書があるということです。この情報部が出したイスラム国作戦の状況に関する報告書、これについて、我々は、実際に起こっていることよりも、良い状況をしきりに話しているのではないかという報告書です。これを見たことがありますか?

これは見たことがありません。ないですね。私には初耳です。ただ、私宛のどの報告に関しても、余計な手を加えるようなことをした人がいるとは思えません。

この件が大きな課題だということはわかっています。ある部分はある場所において、うまくいきます。そして他の部分ではうまくいかないということもあります。しかし、ISIL(イスラム国)を壊滅させるには、もっとやらなければいけないことがあるのは確かです。

――1年経っての進展をどう見られますか?

地域によっては前進したところもあると思います。我々は10万人の人々をティクリートに戻しました。ISILに占拠されていた故郷へ、イスラム教スンニ派の人々は戻ることができました。ラマディ奪還作戦もやりました。実際にどんどん前進し始めています。スンニ派部族は、戦いに参加し始めています。

しかし、まだまだやらなければいけないことはたくさんあります。モスール(イラクの都市)は、まだISILの支配下にあります。国のクルド人で構成される場所では、大きな抵抗が見られます、はっきり言ってかなり力を持ったISILに対する抵抗です。

シリア北部では、最近になって進展がありました。しかし、まだあまりに多くの人がすり抜け、組織に入り、あまりに多くの兵士が採用され、持続可能であってはならないのに、いまだ続いているのが現状ですね。

――進展を楽しみにしています。あなたは、イラン合意(欧米など6カ国とイランによる核問題の最終合意)もやりました。キューバとの関係改善もやりました。任期中に、次は何をしようと思っていますか?

(12月に行われる)国連気候変動パリ会議で同意を得たいですね。これは、我々にはとても重要な、最優先の課題です。全力を注いでいます。私がアラスカへ行って、各国の外相と会合をしたのもそのためです。

この件は私が中国を訪問した2年前から始まっていて、中国との歴史的合意によって、中国の参加の道を開いたことから始まったと思います。そして、それがパリで形になるのを願っています。

――今起こっている大きな論争は、北極評議会でのあなたの始めてのスピーチで、北極でのクリーンエネルギーの可能性について話しました。北極評議会の議長国としてのアメリカの最初の行動は、アラスカの沿岸を掘り起こすシェルに与えることでした。これには、少し矛盾したメッセージがありませんか?

いや、そうは思いませんよ。オバマ大統領が大統領になる数年前からの借りを譲り受けましたから。借りは存在しました。シェルや他の会社は、何年か後には、どこかでいずれ掘り起こす予定だったんです。いきなり石油から離れるということは、できないわけですから。そして北極から得られる石油は他の石油よりもクリーンです。二酸化炭素削減の努力に関して言えば、定着するまでには、20、30、40年はかかるでしょう。

――急にきっぱり何かを断ち切るというわけにはいかないようですね。

それだけじゃないですよ。新しい分野においても、アメリカがコントロールしている供給源を持っていたいですからね。

しかし、長期的には二酸化炭素排出ベースの経済から、抜け出すべきです。絶対に、そうしなければいけません。今のペースよりもっと早くやらなければ。大統領はそれを理解していると思います。私は理解しています。我々はできる限り力強くこのことを訴えています。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。