『日本酒入門』回収へ 著者・葉石かおりさん「自著を無断で再編集」と憤る

「作品は長年構築してきた知識の集大成です。安く作れるからと写真と文章をそのまま転載する編集の倫理観の無さに呆れました」

スポーツや趣味の雑誌を出版する枻(えい)出版社が、利酒師でエッセイストの葉石かおりさんの本の一部を無断で再編集し、別のムック本として販売していた。出版社は葉石さんからの抗議を受け、回収を始めた。葉石さんが10月28日、ブログで報告した。

問題となっていたムックは、27日発売の『日本酒入門』(税抜き500円)。同社から3月25日に出版された葉石さんの著書『うまい日本酒の選び方』(同1300円)を再編集したものだ。

葉石かおり『うまい日本酒の選び方』(枻出版社)

『うまい日本酒の選び方』は、葉石さんがナビゲーターとなり全国100蔵200銘柄をすべて利き酒、それぞれのお酒に合う料理とともに紹介するという内容だ。「日本酒ビギナーが疑問に抱く基礎知識、酒に関する用語、そしてみどころは日本酒の造り方を詳細かつ徹底的に見せた」と、ブログで自信を見せていた

葉石さんは同ムック(上)と自著(下)を並べた写真をFacebookなどに投稿。「文章はですます調を変えただけ、ページの構成は比べたらわからないほどまんま」だとして、「作品は長年構築してきた知識の集大成です。安く作れるからと写真と文章をそのまま転載する編集の倫理観の無さに呆れました」「同じ出版社での刊行だからと、そんな使い方をして良いのか、私はただただ疑問」などと怒りをあらわにした

朝日新聞デジタルによると、枻出版社の山本道生編集長は、20日頃葉石さんへの許諾の取り忘れに気づき、発売日の朝に葉石さんに電話しておわびしたという。枻出版社は28日、下記のようなプレスリリースを出した。

10月26日発売の『日本酒入門』に関する件

10月26日に発売いたしました『日本酒入門』に関する件についてご報告いたします。

『日本酒入門』は、過去、弊社にて複数刊行致しました日本酒関連のMOOKおよび書籍を再編集・再構成して制作したものです。その編集、制作過程におきまして、弊社既刊書籍『うまい日本酒の選び方』の著者・葉石かおり様への二次使用の許諾確認に不手際があったことが判明しました。

そこで弊社は、10月27日に『日本酒入門』を全冊回収することを決定し、回収手配を行いました。

本件につきましては、著者をはじめ、関係各位、読者の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫びする次第です。

尚、弊社といたしましては、出版社としての社会的な責任を含め、真摯に対応させていただくと共に、今後このようなことのなきよう管理体制を徹底いたします。

10月26日発売の『日本酒入門』に関する件 |エイ出版社ニュースリリースより 2015/10/28)

プレスリリースを受け、葉石さんが「私は謝罪文ではないと判断します」などとFacebookにコメントした。

鍋島(富久千代酒造)

佐賀の日本酒 写真集(「佐賀酒ものがたり」より)

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