「一番孤独でしんどい」産後を3週間→3カ月に延長しよう。ママと赤ちゃんのために本当に必要なサポートとは

産後うつの問題を抱える日本社会で、今必要とされている産後サポートのかたちとは?

2015年10月15日、東京都内で、これからの産後サポートを考える「3・3産後サポートプロジェクト キックオフフォーラム」が開催された。産後うつの問題を抱える日本社会で、今必要とされている産後サポートのかたちとは? 「3・3産後」に込められた意味とは? プロジェクト発起人のひとりである、NPO法人孫育て・ニッポン理事長のぼうだあきこさんに話を聞いた。

■日本の母子保健システムは産後ママの不安に対応してくれない

――まずは「3・3産後サポートプロジェクト」とはどんなものなのか教えてください。

日本の「産後」を3週間から3カ月間に延長したい、産後3カ月までママをしっかりサポートしよう。一言でいえばただそれだけ、本当にもうそれだけなんです。

今、日本では産後の床上げは3週間から1カ月間が一般的とされていますよね。赤ちゃんの生後1カ月健診で問題がなければ、日常復帰するお母さんがほとんど。ですが、この産後1~3カ月までのあいだは「産後うつ」が最も多く発症する期間であり、産後ママたちが「一番孤独でしんどかった」と挙げる時期でもあるんです。

――無事に出産を終えて自宅に戻り、赤ちゃんとの新生活が始まったばかり。はたから見れば希望に溢れていそうな時期なのに、なぜ「産後うつ」「産後ブルーズ(産後ママが情緒不安定になること。※3・3産後サポートプロジェクトによる造語)」が発症しやすくなるのでしょう?

まずひとつ目は、ホルモンバランスの変化です。産む前と後では女性ホルモンの変化がかなり激しいため、女性は心身ともに不安定になりやすい、ケアが必要な状態にあります。

もうひとつは、日本の母子保健システムが抱える問題点が関わっています。日本では妊娠・出産までは手厚いのですが、産んだ後は「乳児」にばかり重点が置かれ、ママたちがないがしろにされるのが現状。産婦人科の業務は「無事に赤ちゃんを誕生、退院させ、産後1カ月くらいで母親のカラダの回復状態を診るところ」までになっていて、その後のこと、産後1カ月を過ぎたお母さんの不安とか、そういったことにはほとんど対応できていません(※助産師外来、母乳外来、産後ケアを設けている病院もある)。

――同じくプロジェクトの発起人である市川香織さん(文京学院大学 保健医療技術学部 看護学科准教授、助産師)も、出産によって女性たちがいかに大きな傷を負っているのかをフォーラムで話されていましたね。

赤ちゃんが出てくれば出産完了、ではありません。へその緒の先にある胎盤も子宮の壁からはがれて、外へ押し出されてくる。胎盤がはがれた後、子宮には15~20cm大の傷ができるのです。普通、こんな大きな傷を体に負ったら、大出血します。胎盤がはがれるのと同時に、子宮はぐっと縮まって大出血は免れるのですが、それでも産後は出血が少しずつ続く。子宮が収縮するのでおなかの痛みも続く……。つまり、産後は大けがを負った重病人状態なのです。女性たち自身も、実はその事実を知らない人が意外と多い。

3・3産後サポートプロジェクト キックオフフォーラムの様子

■数年に1度、繰り返される産後うつによる自殺

2010年に仙台で日本テレビアナウンサーの女性が、生後5カ月の子を遺して命を絶った悲しい事件がありましたよね。あの1週間後に、産後うつに関する緊急フォーラムを開いたんですね。「ママと赤ちゃんを救えるのはパパしかいないんです」と訴えて。そしたら300人くらいの男性がぶわっと集まりました。

その後も、市川さんと私で、ママたちを産後うつ、産後ブルーズから救うための取り組みをずっと続けてきたのですが、やっぱり女性だけに知識を届けても、産後うつや、産後ブルーズはなくならないということもわかってきた。パパである男性にも、産後ママの心とカラダの状態と産後うつの正しい知識をきちんと伝えなければならない。

最近では「イクメン」という言葉もだいぶ浸透してきたので、ママのケアに光をあてるプロジェクトもそろそろ本格始動しよう、と話し合っていたんです。そんな矢先に、藤沢でまた同じような悲しいことが起きてしまって。

――2015年の3月に、神奈川県藤沢市で35歳の女性が生後1カ月の赤ちゃんを道連れに飛び降り自殺したニュースですね。彼女のケースも産後うつだったのではないかといわれています。

傷ましい話ですが、仙台のときのような悲劇が大々的に報道されると、それからしばらくは産後うつで自殺する人が出なくなるんですよ。なぜならメディアが盛んに報道して、産後うつの情報が広く伝わるから。でもあれから5年が経って、また悲劇が繰り返されてしまった。

あの藤沢の報道を受けて、私たちもやっぱり一刻も早くなんとかしなきゃと話し合いました。でもママだけに届けてもだめ、パパだけでも足りない、産婦人科だって現場に余裕はない。それならば私たちはムーヴメントを作ることに徹しよう、という結論にたどりつきました。

ママやパパはもちろん、祖父母も含めた赤ちゃんを取り巻く「家族」、パパママが勤めている「企業」、それから「地域」に向けて、産後サポートの必要性とサポート期間の延長を伝えていこう。それが「3・3産後サポートプロジェクト」の目的です。

(後編は、11月10日に掲載予定です)

ぼうだあきこ

1968年、千葉県生まれ。雑誌編集などを経て、現在はNPO法人孫育て・ニッポン理事長、ファザーリング・ジャパン理事、ペンギンパパリーダー、他世代交流カフェ「いろむすび」アドバイザー」。2015年10月、市川香織、安田美香とともに3・3産後サポートプロジェクトをたちあげる。20歳と高校生の息子を持つ2児の母。

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