【ヤチャイカ】疲れないハイヒール、男性研究者が開発した理由は? 2016年に商品化へ

「疲れないハイヒール」として日本で発明された「ヤチャイカ」が、商品化に向けて具体的に動きだした。

「疲れないハイヒール」として日本で発明された「ヤチャイカ」が、商品化に向けて具体的に動きだした。次世代のデザインエンジニアを支援する「第10回 ジェームズ・ダイソン・アワード」の表彰式が11月13日に都内で開かれ、ヤチャイカは国内準優勝と、国際TOP20に選出された。

発明した中央大学研究開発機構・助教の山田泰之さん(28)は「来年の9月ごろの商品化を目指している。女性にとって欠かせないアイテムになるように頑張りたい」と胸を張った。

ヤチャイカを手にする発明者の山田泰之さん(2015年11月13日撮影)

■試しにハイヒールを履いてみたら「すごく痛かった」

ヤチャイカは、2枚の曲がった板バネとゴム板を用いた衝撃吸収機能を搭載しており、ファッション性と快適性の両立を目指しているのが特徴だ。「YaCHAIKA(ヤチャイカ)」の名前は、世界初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワが宇宙で発した「ヤ・チャイカ」(ロシア語で「こちらはカモメ」)という交信に由来。ヒールの板バネの形状が,カモメが羽を広げて飛んでいる姿にもかけているという。

しかし、なぜ男性研究者がハイヒールを開発することになったのか。

10月30日に放送されたテレビ東京のニュース番組「ワールドビジネスサテライト」(WBS)によると、山田さんは自動車メーカーでサスペンションの研究をしていた。車だけでなく女性の足回りも見過ごすことができず、このハイヒールを開発したという。

この番組中で、山田さんは「ハイヒールは足が痛いという女性がいて信じられなかったので、自分で買って履いてみたんです。すごく痛くて履いていられなかったので、エンジニアとして許せないと思って作りました」と語っていた。

山田さんによると、9月下旬にFashionsnap.comハフポスト日本版が、ヤチャイカを取り上げてまもなく、総合百貨店の「そごう・西武」から商品化のオファーがあったという。海外からの話もあったが、真っ先に手を挙げた同社の熱意に打たれてタッグを組むことになったという。

WBSの番組内で「そごう・西武」チーフバイヤーの伊藤孝一郎さんも「どこにもない商品を提供していくのが我々バイヤーの宿命だと思っている。お客様の悩みをファッションとテクノロジーを使って解決できる差別化できる商品」と意気込みを語っていた。

ヤチャイカ画像集

■「賛否両論な問題だからこそ、解決するのが楽しい」

11月13日の「ジェームズ・ダイソン・アワード」表彰式での山田さんのスピーチは、以下の通り。

「ねえ、足疲れたぁ もう歩けないよ…」という台詞をいろんな場所で聞いたことがある人が多いと思います。私も聞いたことがあります。でも、多くの人がこの言葉を聞き流していたと思います。私も当然、聞き流していました。なぜかというと、男性はヒールを履いたことがないし、男性は履きたい靴を選んでいけるということがあります。しかし、私も実際に履いてみたら、すごくつらいんですね。女性は毎日こういうのを履いていて、足や腰がつらかったり、いろいろな健康被害をこうむっています。

「ではなぜ履くのか?」と男性は思いがちなんですが、ハイヒールは一つのファッションとして確立していて、服だったり、ないと決まらないんですね。だから「履きたい」という要望が強い。また仕事や会社の暗黙のルールやTPOで履かなくちゃいけないということもある。男性のネクタイも、クールビズで現在は解放されていますが、ハイヒールは今のところそういうのはない。

そこで私は「履いた方がむしろ快適になる」ようなハイヒールを目指しました。これがあれば、女性は自分の選択肢によって、たとえば「今日は履きやすいの」ということでヤチャイカを履いてもらい、少ししか歩かないときは「今日はちゃんとしたの」ということで普通のピンヒールを履いてもらうと。

実際できたアイテムは簡単な発想で、固定されていたピンの部分をバネに変えてあげると。もともと私は自動車会社のエンジニアをしていたので、そこを変えました。デザインとエンジニアリングをバランスさせて作っていったんですが、デザインとしてはハイヒールなので、女性の足取りを美しさである流線形を崩さないように機能を盛り込むようにしました。それをCADに立ち上げて実際に作ってみる。

いろいろな靴を買って分解して参考にしてみて、最終的には女性に履いてもらってデザインを固めました。機能ですが、これはエンジニアリングでもともと得意だったので、CADに立ち上げていくつかのパターンを立ち上げて試作してみると、当然私も履きました。石畳や階段や砂利道など普通だったらヒールで歩かないような道も実際に歩いてみて、検証しました。当然、私も履いてます。

今はもうよりもっと定量的にどれくらい負担が減るのかというのを調べて、よりよい物を作ろうとしています。女性に実際に試作品を履いてもらって感想を聞いたところ

「スニーカーみたい」「ハイヒールじゃないみたい」「ずっと履いてみたい」

という好意的な意見がありました。その一方で否定的な意見もありました。「見た目が奇抜すぎる」「女性にハイヒールを強いる」といったものです。そういった賛否両論な問題だからこそ、解決するのが楽しいしチャレンジ性があると思います。

女性にとって欠かせないアイテムになるように頑張っていきたいです。来年の9月ごろに製品化して皆さまがはけるようになったらいいなと思って、今、頑張っているところです。

【訂正】山田さんの発言を「来年の5月ごろの商品化を目指している」と表記していましたが、正確には「来年の9月ごろ……」でした。(2015/11/14 17:29)

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