年賀状で想いを贈り、心を動かす。ローソンの人気キャラ「あきこちゃん」生みの親から学ぶ"ビジネスの広げ方"

2015年11月25日 02時23分 JST | 更新 2015年11月26日 00時30分 JST
西田香織

ビジネス上のコミュニケーション能力を高めたい――働く人なら誰もが願うことだろう。会話のスキルを高めたり、メールやSNSでつながりを深めたりと、方法は様々だ。

人気オリジナルキャラクター「ローソンクルー♪あきこちゃん」の生みの親で、SNSの企業アカウントをどこよりも早く取り入れることで話題をつくっているローソンの白井明子さんは、コミュニケーション能力の高さに定評がある。

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ローソンクルー♪あきこちゃん

そんな白井さんが「自然な形で、確実にコミュニケーションのきっかけをつくることができる」ツールとして活用するのが年賀状だ。コミュニケーション能力を身につけるために必要なことは? そのために年賀状はどう役立つのか? その秘密を探るべく、話を聞いた。

■ 白井流コミュニケーション術を支える3つの鍵

白井さんは、「書く」「会う」「頭を下げる」の3つがコミュニケーションには欠かせないと考える。得意の手書きイラストを使って相手に自分のアイデアや考えなどを伝える「書く」、実際に顔を合わせて相手との距離を縮める「会う」、そして仕事のお願いや分からないことの教えを請うという「頭を下げる」という3つのアクションがあって初めてコミュニケーションがスムーズになるという。

「今は、デジタルプラットフォームを用いた施策、ITとマーケティングを兼務しながら、WebやSNS、イベント等の企画運用を担当しています。でも、『SNSを活用する』といっても本当に何も分からなくて、いちいち誰かに教えてもらわないといけませんでした。だから、“伝えたい思いや考えは、目に見える形でアウトプットする”ことをいつも意識しています」

その姿勢は、現在でも社内のコミュニケーションで生かされているようだ。

「企画を立てるときは、A4の紙に頭の中のもやもやしたものを全部イラストで描きます。打ち合わせでそれを見せると、一気に話が進んだりします。言葉で伝えるだけよりもイラストがあることで、意思疎通がしやすくなるんです。そうしたコミュニケーションの積み重ねで誕生したのが『あきこちゃん』だったと言えますね」

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「ローソンクルー♪あきこちゃん」誕生のきっかけとなった企画書の一部

■ 願を掛けるような気持ちで書いた150枚の年賀状

そうした白井流コミュニケーション術のルーツにあるのが年賀状だ。話は「あきこちゃん」が誕生する2年前、2008年頃にさかのぼる。当時広告販促部に所属していた白井さんらに、大きなミッションが言い渡された。それは予算を使う側から、予算を達成する側へと大きく方向転換を迫られるものだった。

「店舗施策に関する営業をすることになりました。それは、これまでに経験したことのないものすごい規模のミッションだったんです。それをどうやって達成したらいいんだって本当に悩みました」

目標達成のためには、手段を選んではいられない。何が何でもやらなくてはいけない。慣れないあいさつ回りをする日々。そんなとき、白井さんの頭に自然と浮かんできたのが、年賀状だったという。

「恥ずかしい話なんですけど、それまで会社用の年賀状をあまり贈ったことがなかったんです。でもその年は贈らなくちゃと思ったんですね」と白井さん。会社に年賀はがきを150枚申請し、取引先宛てに1枚ずつ、あいさつ文を手書きで添えた。

「わらをもすがる思いってありますけど、当時は仕事でつらかった時期だったこともあり、来年はもう少し良くなるといいな、自分にもいい年になるといいな……そんなことを思いながら1枚1枚必死に書いていましたね」と当時の気持ちを振り返る。

年賀状のあいさつ文といえば、“今年もよろしくお願いします”といった定番の文言が一般的だ。しかし白井さんは「先日は貴重なお時間をいただきありがとうございました」「またご提案に伺いますのでよろしくお願いします」など、相手のことを考えながらかなり具体的なメッセージを書き添えたという。

「今思えば、必死過ぎて空気読めてなかったのかもしれないですけど」と笑う白井さん。しかし、以前は受け取るだけの立場ではあったが、届く年賀状の内容を見ていて“仕事で活かすために、自分だったらこう書くだろう”という思いがあったようなのだ。

■ 白井流コミュニケーション能力の原点は、想いを込めた年賀状から

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年賀状を贈るきっかけともなったミッションを、ビジネスの好機であるととらえた白井さんは、必死になりながらも相手の顔を思い浮かべ、感謝の気持ちをストレートに表し、真心を込めたメッセージを添えた。その結果、相手の印象にも残りやすくなり次のアポイントにつながることで、大きな目標を達成したのだった。

「年賀状を贈ったあと、お返事をたくさんいただいて、びっくりしました。あらためてごあいさつに伺ったとき、『年賀状ありがとうございました』って言っていただいたりして、本当にうれしかったですね。年賀状ならごく自然に贈れるし、お返事もいただきやすい。だから相手の懐にもスッと入っていきやすいなと思いました。そして、日頃からお世話になっている方にも、きちんと感謝の気持ちを伝えることができました」

年賀状150枚から始まったコミュニケーションは、その後のビジネスに確実に活かされていたのだ。

急な配置転換というピンチから、わらをもすがる思いで手にした年賀状。そこから“相手のことを考えて書く具体的な一言”、“相手に印象づけて次回のコミュニケーションにつなげる工夫”、“想いを確実に伝える姿勢”といったものが、その後の白井さんの仕事の広がりを支える重要なスキルとなった。年賀状に具体的なメッセージを書き添えたことで相手の印象に残り、物事がスムーズに進んだ経験を得て、白井さんのビジネススタイルは大きな転換を果たした。

「あの年賀状を書いた経験のおかげで頭を下げてお願いできるようになったんですね。もしあの経験がなかったら、教えてくださいって素直にお願いできなかったんじゃないかと思います」

■ 手書きのメッセージで気持ちが動く。そこに国境はない

真心の込もったメッセージといえばこんなエピソードもある。それは、白井さんがGoogleの社内スタートアップだったNiantic Labs(現在は独立)が提供する、世界的に人気のバーチャル陣取りゲーム「Ingress」とのタイアップを手がける時のことだった。

「上司が変わったのでGoogle社にごあいさつに行ったんです。すると、たまたまそこにジョン・ハンケさん(Ingressの生みの親)がいらしていて。その場でIngressを熱くプレゼンしていただいたんです。気がついたら、なんかやろうよ〜という感じで握手をしていました」

無事サービスインし、寒さも増してきた頃、白井さんのもとにハンケ氏からグリーティングカードが届いた。そこには手書きのメッセージが添えられていた。

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「まさかいただけるとは思っていなかったのでうれしくて。しかも丁寧な手書きのカードだったんでとても感激しました!」と顔をほころばせた白井さん。アメリカのグリーティングカードは、新年のあいさつも兼ねているため、日本でいえば年賀状の役割も果たしている。

「手書きのメッセージを読んで、より一層プロジェクト成功への気持ちが強くなりました」

心のこもった手書きのカードで気持ちが動かされる——そこに国境はないようだ。

■ 年賀状は「ビジネスの特効薬」

1枚の年賀状で、ビジネスは好転させられる――年始のあいさつという意味合いを超えて、「ビジネスに効く、万能なツール」だと白井さんは考える。だからこそ、ビジネスの相手に真心の込もったメッセージを送るためには、メールやSNSといったデジタルツールだけでなく、年賀状を贈るというアナログツールでのコミュニケーションが大切になる。

そして白井さんは、自身の経験から、年賀状はビジネスの起爆剤にもなると同時に、ビジネス上の関係性をつなぐ有力な手段だと確信している。

「会いに行けなくても、年賀状を出せばつながりが保てます。逆に年賀状がないと途絶えてしまうかもしれませんね。しょっちゅう会える人とも、なかなか会えない人とも確実に縁をつなぐ……それが年賀状じゃないかな」

――年賀状だからこそ伝わる“想い”が、直接心に響き、相手を動かす。――

年賀状は「ビジネスの特効薬」だ。仕事でお世話になった人に「素直な感謝の気持ち」を贈ったり、大切な取引先の担当者に「いつでもあなたのために頑張ります」と具体的なメッセージを贈ったり。

「一歩先のコミュニケーション」を目指して、年末にはビジネスの可能性を広げる一言を書き添えてみよう。