「今を変える」新サービスでバトル、優勝は難病を克服して生まれたソフトに【TechCrunch Tokyo 2015】

スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップバトルは、難病や妻の産休をきっかけに開発された労務手続きソフト「SmartHR」が優勝した。
The Huffington Post

バンドやろうぜ!のノリで、起業する若者が増えているという。

サーバーやプラットフォームなど開発環境が充実し、低コストでモノづくりができるようになったことや、スタートアップの企業を支援する投資家が増えたことなどが、若い世代のチャレンジを後押ししているのだとか。

そんな起業家たちが集結する、スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」が11月17日から18日の2日間にわたって開催された。イベントの目玉は、ローンチ1年未満のスタートアップのみを対象としたプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」だ。100社を超える応募の中から選ばれた12社の起業家たちが、熱のこもったバトルを繰り広げた。その中でも目を引いた2つのプロダクトを紹介する。

妻の産休がきっかけ。わずらわしい労務手続きをハックする「SmartHR」

株式会社KUFUの「SmartHR」は、社会保険・雇用保険などの労務手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア。必要な項目を入力するだけで書類を自動作成し、役所への申請もWebでできるようになる。マイナンバーにも対応し、セキュアな環境で管理可能だという。

KUFU代表の宮田氏は開発のきっかけを「妻の産休」と話す。会社の産休・育休制度の申請書類を、妊娠9カ月の妻が自分で作成していたのだという。さらに、複数の窓口に提出しなければならない状況を目の当たりにした。社労士を雇えない中小企業も多いうえ、労務手続きの煩雑さに課題があることから、ニーズがあると感じた。

そんな宮田氏は、かつて病気にかかって顔面左半分麻痺、聴覚障害、視覚障害、車椅子生活を経験した。しかし当時勤めていた会社の社会保険のおかげで2カ月間の休職をもらい、リハビリに専念することで難病を克服できたのだという。「自分は社会保険制度に助けられた。素晴らしい制度なのだから、もっと使いやすくしたかった。労務手続きの負担を減らす必要があると思った」と語る。SmartHRは、サービス開始から3カ月ですでに200社をこえる企業が採用している。

今大会の優勝はSmartHRに決定した。

SmartHRは、優勝、IBM BlueHub賞、ぐるなび賞を受賞した

遊び場をもっと楽しく。ウェアラブルトランシーバー「BONX」

2014年以降、ウェアラブルという言葉をさんざん耳にした。電話もメールもネットもできて、睡眠や心拍数も測れる……。とにかくいろいろなことができるデバイスが注目を浴びている。

そんな中、今大会で発表されたチケイ株式会社の「BONX」はごくシンプルなもの。スマホと接続したBluetoothイヤフォンを耳にかけると、手ぶらでグループ通話ができるウェアラブルトランシーバーだ。しゃべりだしたら自動的に通話が始まる機能が特徴。スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツをはじめ、サイクリングなどのアウトドアスポーツでの利用を想定している。

BONXを発案したのは、スノーボード大好きな若者たちだ。チケイ代表の宮坂氏はスノーボードが趣味で、「滑りながら仲間たちと普通に話せたらもっと楽しいのに」と常に感じていたという。「『GoPro』の開発ストーリーやカルチャーに衝撃をうけた。BONXは自分が欲しかったから。GoProみたいに遊び方が広がるものになる」とプロダクトへの思いを語った。

BONXはクラウドファウンディングサービスで出資を募っている。目標金額100万円に対して、1800万円を超える支援が集まっている(11月19日現在)。彼らの思いに共感した世界中のアウトドアアクティビティストたちがたくさんいたのだ。シンプルな発想で生まれたシンプルなものこそ、最強アイテムといえるのかもしれない。

BONXは、今大会でさくらインターネット賞、PR TIMES賞、PayPal賞を受賞した

イベントに登壇した起業家たちは「今ないものを作って、世界を変えよう」としているものの、未来への大きな夢を語っているわけではない。きっかけは「欲しかったから」、「いま必要だと思ったから」と、いかにも合理的で現実的な発想。だからこそ世の中のニーズが高く、それに応えようと奮闘する彼らの姿は「本気」そのものだ。

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