テロ襲撃、難民、人質事件。ハフポスト各国版が振り返る「激動の2015年」

2015年は世界を震撼させるニュースが相次いだ。私たちは、ハフポストの各国版に「2015年の最も重大なニュース」を問い、そのうちの12カ国版から回答を得た。各国版が選んだ重大ニュースを通じ、激動の世界の1年を振り返りたい。
ASSOCIATED PRESS

2015年は世界を震撼させるニュースが相次いだ。1月のパリでのシャルリー・エブド襲撃事件を皮切りに、日本人人質殺害事件やチュニジアの博物館襲撃、パリ同時多発テロなど、特にIS(イスラム国)をはじめとする過激派組織が世界情勢を緊迫させる事件が目立った。

2015年は中東や北アフリカの秩序の崩壊が加速した。イラクやシリア、イエメン、チュニジア、リビア、ナイジェリア、マリ、アルジェリアといった国々は国家として統制不能な状況に陥っている。内紛や民族対立、「アラブの春」などの影響で、国家体制が次々とメルトダウンしているかのようだ。それに伴い、中東や北アフリカから難民が大量に欧州に流出。欧州では、受け入れに反対する極右勢力の台頭を招いている。

中東や北アフリカを震源地とした世界の不安定化の流れは2016年も変わらないだろう。ウイルスは体の弱った者を襲い、発症する。過激派は、弱まる国家体制の間げきをぬって、自爆テロや襲撃事件などを展開、テロの感染が拡大するだろう。大国エジプトやサウジアラビアも国土全土を実効支配できなくなるかもしれない。

私たちは、ハフポストの各国版に「2015年の最も重大なニュース」を問い、そのうちの12カ国版から回答を得た。各国版が選んだ重大ニュースを通じ、激動の世界の1年を振り返りたい。

アメリカ : ドナルド・トランプの台頭

アメリカの2015年の最大のニュースは、ドナルド・トランプ(69)の衝撃的な登場と、同氏を通じて浮き彫りにされたアメリカそのものだった。共和党の大統領候補予備選挙の候補である同氏は数年前、オバマ大統領が本当にアメリカ市民でキリスト教徒であるかどうかを問い詰めながら政治の舞台に登場、今年の春まではすぐに消えると思われていた。ニューヨークのビジネスマンとしての鋭い本能と、ニュースメディアと党指導者に対し、何事も恐れずに言う姿勢を見せつつ、同氏はあらゆる方法で、すべての恐怖をうまく活かしている。アメリカ社会における不安な中産階級のスポークスマンになって共和党の大統領候補のフロントランナーとして浮上したのだ。

ハフポスト・グローバル編集ディレクターのハワード・ファインマン

フランス : 2回のテロ襲撃

2015年、フランスの最大のニュースは、1月と11月に発生した2つのテロだ。フランスの週刊誌「シャルリー・エブド」を攻撃した最初のテロは、表現の自由とフランスのユダヤ人をターゲットにした。パリで同時多発的に起こった第二のテロは、一般大衆の日常を攻撃した。2つの事件はともにフランスで生まれたテロリストの仕業だった。フランスの精神は根底からくつがえり、政治的な議論は混乱、今は昔のフランスのままではない

ハフポストフランス版編集長 ポール・アッカーマン

ギリシャ:国家債務危機

政府が支配する国というよりも、選挙が支配する国。ギリシャは1月の総選挙で緊縮見直しを掲げる「急進左派連合」(Syriza)が政権を奪取、国家の債務危機が再燃した。政府が推進した国民投票が恐怖を触発し、政府による資本規制が強化された。経済危機の過程で最も緊迫感が高まった一年だった。何よりも最大の事件は、緊縮政策に反対してきたSyrizaのアレクシス・ツィプラス党首が9月の総選挙で再び返り咲き、緊縮政策を強化していることにある。2015年には、ギリシャに非常に政治課題が山積の一年だった。しかし、この騒ぎの結末はまだ表には出てきていない。

ハフポストギリシャ版編集長 ニコス・アグロロス

日本 : ISによる日本人人質殺害事件

1月から2月にかけて、IS(イスラム国)がジャーナリストの後藤健二さん湯川遥菜さんの2人の日本人人質を殺害する映像を公開した。2人が斬首された事件は、戦後、平和主義に徹し、こうした人質事件に感情的にも準備できていなかった日本人に大きな衝撃と悲しみをもたらした。この事件を受け、多くの日本人、特に海外在住の日本人にとっては、自らの国籍がISの標的になることを改めて認識させられることになった。不安定化する世界の安全保障は、今夏の安保法案をめぐる論議にも大きな影響を与えた。

ハフポスト日本版編集長 高橋浩祐

イギリス : ジェレミー・コービンの登場

今年最大のニュースは、誰がなんと言っても、球場のベンチの後ろにだけとどまっていたジェレミー・コービンの登場である。同氏は、30年余りの間、労働党のよく知られていない指導者として、静かにコツコツと自分の道を歩んできた。武器から王室まで、すべての政治問題を左派的な観点から論考する同氏の登場は、単純な政治的サクセスストーリー以上の意味を持った。

ハフィントンUK版ニュースエディター ジャクリーン・ハウス

ドイツ : 難民危機と新右翼の登場

今年、ドイツは変化した。数年の間の経済的好況の後、大衆は2つに分かれた。1つは、「私たちが難民を受け入れる」と宣言したメルケル首相の側に立っている人々だ。今年だけで難民100万人をドイツ社会に受け入れると思う人々だ。もう一方の難民受け入れに反対する人々は恐怖に陥っている。難民の増加とこれによるドイツ社会のアイデンティティの喪失について、恐れている。ドイツの反イスラム運動「ペギーダ(PEGIDA)」や政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の影響力が日増しに大きくなっており、難民キャンプでほぼ毎週起こる放火事件は、ドイツの政治的風景が変わったことを浮き彫りにしている。新右翼は、ドイツ政府はもちろん、伝統的メディアと自由主義政策まで批判する。そのような点で、来年ドイツ全域で行われる地方選挙は、意味を持った試験台となる。右派が権力を獲得するかどうか、そしてどのように彼らは、ドイツを変えてきたのかを確認する機会となるだろう。今年の初めと比べてみると、実際に今まで大きく変わったではないか。

ハフポストドイツ版編集長 セバスチャン・マテス

ブラジル : 危機!すべてのことの危機!

ブラジルは今年大きな政治的、経済的危機を経験した。昨年再選されたジルマ・ルセフ大統領については、すでに60%以上の国民が背を向けた。最も大きな理由は、昨年の大統領選挙の時、経済を回復させるという公約が嘘になってしまったのだ。大統領に当選されるとすぐ、公約が「作り物」だったことが明らかになった。ルセフ大統領に対する弾劾論者は4つの理由を挙げる。高い金利とインフレ、そしてエネルギー価格の上昇。今年は失業率も増加した。大統領の弾劾危機と一緒に有力者の腐敗スキャンダルが起き、事態はさらにもつれている。ルセフ大統領と対立するエドゥアルド・クーニャ下院議長は収賄とマネーロンダリングの疑いを受けている。彼はルセフ大統領の最も強力な敵だ。今ブラジルの政治は混乱の最中にある。

ハフポストブラジル版編集長 ディエゴ・イラヘタ

スペイン : 2党体制の崩壊

スペインは12月20日に行われた総選挙に向けて、政治的に熱い1年を送った。ママリアーノ・ラホイ・ブレイ首相が率いる国民党(PP)が選挙では第一党となったが、過半数を大幅に割り込み、野党第1党の左派社会労働党(PSOE)のほか、急進左派、ポデモスなどの新興2政党が躍進した。スペイン経済は3%の安定的な経済成長率を示しているが、有権者はまだ21%の高い失業率、政治的腐敗、緊縮政策などを心配する。北東地域のカタルーニャで起こる分離独立運動もやはり政治的な議題となった。選挙の結果、スペインの政治を30年以上支配してきた2党体制は崩壊し、4党体制が発足した。

ハフポストスペイン版編集長 ギジェルモ・ロドリゲス

韓国 : MERS流行

誰もが予想していない災害だった。たった1人の2015年5月のバーレーンから帰国した最初の感染者から始まったMERS流行は、夏の韓国を無防備状態の混乱に追い込んだ。病院と市民は、お互いを信じなかった。政府や病院は、お互いを信じなかった。政府と市民は、もともとお互いを信じていなかった。市民もお互いを信じなかった。すべてがマスクを書き、皆が手を洗った。186人が感染され、38人が死亡した。そしてクリスマスイブに、政府はMERS流行の終了を宣言した。MERSのアウトブレイクは、政府のまたもう1つの失敗とみなすことができる。

ハフポスト韓国版編集長 キム・ドフン

イタリア : パリテロ事件の余波

ヨーロッパは今、西側で最も危険な地域となった。私たちは今、あらゆることを想定しなくてはいけない。ルチアナ・アンヌンツィアータ・ハフポストイタリア版編集主幹は、このようなタイトルで、パリテロの余波について書いた。第3次世界大戦がなぜ既にここで起きているのかどうか。そして、その舞台がなぜ欧州なのか。旧大陸(ヨーロッパ)は再び西側世界で最も危険な地域になった。

ハフポストイタリア版政治エディター ジュリア・ベラルデリー

オーストラリア : トニー・アボット首相の敗北

オーストラリアの2015年の最大ニュースは、トニー・アボット首相が突然、党代表選出の投票で敗北して、首相職から退いた事件だ。大衆的人気が高くなかったマルコム・ターンブル通信相が、9月の自由党の代表選挙で勝利した。しかし、第29代首相となったターンブル首相のハネムーン効果は年末に消え、トニー・アボットは首相への返り咲きを狙って、国会で熱心に歩き回っている。

ハフポストオーストラリア版編集長 トリ・マクガイア

カナダ : アイラン・クルディちゃんの死

カナダでは、シリア出身のアイラン・クルディちゃんの死が最大のニュースとなった。トルコのビーチで亡くなったまま発見された3歳の少年は、カナダに大きな衝撃を与えた。なぜならアイラン・クルディちゃんの家族はもともとカナダに難民申請をしたが、断られたからである。今年の選挙でも最も大きな問題になった。国民は10月、結局、新たな政権を選んだ。保守党から中道の第3党、自由党へ10年ぶりに政権が交代した。 トルドー首相(44)は選挙戦で2万5000人の難民を受け入れるとの公約を掲げていた。

ハフポストカナダ版編集長 ケニー・ユム

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