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ロイターのベテラン写真家が振り返る、2015年のギリシャと難民危機

2015年12月28日 17時19分 JST | 更新 2015年12月29日 21時34分 JST

YANNIS BEHRAKIS/REUTERS/CORBIS

ヤニス・ベラキス氏は数十年にわたって難民問題を追い続けてきたが、2015年にギリシャ沿岸で撮影した作品が高い評価を受けた。

2015年の重大ニュースの多くはギリシャに集中した。ギリシャは緊縮財政と債務をめぐる熾烈な戦いの中、政治的、財政的危機に陥り、一方ギリシャ沿岸の島々に数十万人の難民が上陸したためだ。

シャッターの降りた金融機関の前で警官と衝突する人々や、ゴムボートでごった返すビーチの写真は世界中を駆け巡り、その悲劇性を人々に強く印象づけた。

この危機を捉えた印象的な写真のいくつかは、ロイターのベテラン報道写真家でギリシャ出身のヤニス・ベラキス氏が撮影したものだ。彼はこの報道により、ガーディアン紙のフォトグラファー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

ハフポストUS版はベラキス氏にインタビューを行い、同氏の作品や、同氏の中で最も印象に残っている写真、そして写真で人々に何を伝えたいと思っているかについて聞いた。

YANNIS BEHRAKIS/REUTERS/CORBIS

100万人を超える難民や移民が2015年ヨーロッパに入り、その多くは十分な装備の無いボートでトルコからギリシャへと海を渡ってきた。

あなたは数十年に渡り難民を撮り続けてきましたが、今回の危機は自分の国でも起きています。それによりあなたの取り組み方は変化しますか?

当然、難しかったです。なぜなら今回の難民問題は大きな政治的、財政的危機の最中に起きたことだったからです。ギリシャはこれ以上の難問に対応する準備ができていませんでした。しかし、これは試練でもありました。ギリシャ人がこのような危機的状況にどう対応するか、興味深く、また不安に思いながら見守っていました。

結論から言うと、ギリシャ人の対応を私は誇らしく思っています。つまり、ギリシャの国民の対応の仕方についてです。漁師や医師、島や国境付近にいたギリシャの国民は、難民を快く受け入れ歓迎しました。

多くのギリシャ人によるボランティアや、ヨーロッパ中から人々が次々に支援のため駆けつけ、多くの人々が寄付を行いました。危機的状況の中で人々の思いやりが溢れました。

危機的状況の中で人々の思いやりが溢れた。

難民の問題に加えて、ギリシャの政治危機と、森林火災についても、あなたは取り上げました。こうした出来事を追う中で、最も困難だったのは何ですか?

いつも一番難しいのは個人的な感情の移入です。金融危機は私の家族、友人、知人を直撃しました。多くの同僚が職を失い、国の失業率はEUでトップとなったのです。

今まで私はギリシャを拠点として、世界の戦争や難民危機などの大きなニュースを報道するため、各地を旅行してきました。ギリシャに戻ると、まるで天国のように思えたものです。しかし突然ギリシャは世界のメディアの注目の的となり、先入観なしに報道するのは難しくなりました。

YANNIS BEHRAKIS/REUTERS/CORBIS

ベラキス氏の写真は危機のもっとも痛ましい側面を捉えている。

報道場面や被写体を求めている時、あなたが探しているのは何ですか?

私は報道の世界にいて、つらいニュースや心痛む記事を伝えています。物事を正しく評価したり表情をきちんと捉える十分な時間がない場合が多いのです。大抵は、やや本能やインスピレーションに頼って、自分の周辺の環境に目を向けています。私が一番したいと思っているのは、メッセージを送ることです。

ロイター通信社で働くということは世界で働くということです。何十万という人々が我々の記事や写真を心待ちにしています。したがって大事件の最中では重圧も大きくなり、世界中の人が現実を正しく捉えた写真を期待していることを認識するのです」。

起こっていることを人々に伝えるのは素晴らしい仕事。

皆に起こっていることを真剣に考えてもらいたい。私がいつも言っているのは、「知らなかった」などど誰にも言ってもらいたくないということです。最後の希望として皆がやってくる小さな島がギリシャにあること、そしてこれが現実に起こっていることであることを、皆に知ってもらいたいのです。皆がこの現実を知っているべきです。起こっていることを人々に伝えるのは素晴らしい仕事です。

YANNIS BEHRAKIS/REUTERS/CORBIS

娘を優しく抱きしめる父親の写真は、この1年で最もベラキス氏の記憶に残った作品だ。

この一年で特に記憶に残った写真や1日はありますか?

内容の濃い一年で、記憶に残る瞬間はたくさんありました。一つだけその瞬間または作品を選ぶとしたら、難民の記事でしょう。心に残るのは、シリア人の男がマケドニアとの国境に向かって雨の中を娘を抱いて進んでいる写真です。彼は雨に濡れ、ビニールのマントを纏っていて、彼を見た瞬間スーパーマンのように思えました。この父親は娘にキスをするのですが、まるで人類にキスをしているかのようでした。これは純粋な愛情と思いやりの瞬間、純粋な人間性というものを感じられる瞬間でした。これは私の心にずっと残っていて、一つ選ぶとしたらこれです。

YANNIS BEHRAKIS/REUTERS/CORBIS

EU内では難民や移民の受け入れが大きな議論となり、国によっては国境を閉鎖して移民受け入れを止めている。この写真でベラキスは、マケドニア入国を懇願している人々を捉えた。

あなたの仕事で人に理解されない、誤解されているところはありますか?

あります。「人々がボートでやってきたのをただ傍観して写真を撮っていたのですか? 助けるべきでしょう」という質問を受けたり、場合によっては咎められることもあります。

周囲に彼らを助けている人がたくさんいたのだと説明します。だから私は写真を撮ることによって彼らを助けるのだと。私の写真を見た人が「自分も行って助けなければ」とか「チャリティで募金しなければ」と言ってくれるからです。

私の使命は起こっていることを人々に知らせることであり、それは非常に重要な使命であると考えています。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。


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