「過激派が信仰を強制しているのが原因」アサド政権の代理大使、シリアの難民問題を語る

シリア代理大使のワリフ・ハラビ氏が1月27日に都内で講演し、2011年から続くシリア内戦で400万人もの難民が発生していることについて、「過激派の支配地域で家が破壊されたり、信仰を強要しているのが原因だ」と訴えた。
Kenji Ando

シリア代理大使のワリフ・ハラビ氏が1月27日に都内で講演し、2011年から続くシリア内戦で400万人もの難民が発生していることについて、「過激派の支配地域で家が破壊されたり、信仰を強要しているのが原因だ」と訴えた。ハラビ氏は1991年にシリア外務省に入省。アサド大統領の独裁政権下で2013年から駐日代理大使を務めている。

ラッカなどの地域を支配下に置いている過激派「イスラム国」(IS)について、アサド大統領は「トルコによるISへの支援は、サウジアラビアとカタールの協力によって行われ、彼らはISのために裏庭を作っている」と主張している。ハラビ氏も講演で「難民問題を解決するためには、トルコ、サウジアラビア、カタールといった国がテロリスト集団を援助するのをやめることが一番」と話した。

シリア内戦は、チュニジアから中東各国に広がった民主化運動「アラブの春」の影響で始まった。アサド政権の独裁政治に反発して、反体制派が蜂起。欧米が支援してきた自由シリア軍、アルカイーダ系のヌスラ戦線、イスラム国家の樹立をめざすISなどと、シリア政府との間で泥沼の戦いになっている。国連の統計によると、2011年以降にシリアから逃れた難民は約400万人に上っている

■国際社会も「テロリスト集団の行為」と認識し始めている

ハラビ氏:シリアについて言いますと、5年以上に渡って、テロリストによる都市や市民への攻撃が続いています。ただし、現在では良い兆候も出ています。それは国際社会も『反シリアのテロリスト集団による行為』ということを認識してきたからです。シリア国内には150以上ものテロリスト集団がいます。

今はロシアのサポートでテロリスト集団に攻勢をかけています。最も重要なことは、シリア政府とロシア政府による共同作戦です。まだ水面下の動きではありますが、多くの成果を挙げています。シリア国外から来ていたテロリスト集団も、シリアからトルコなどへ逃走しつつあります。ロシアがシリアに協力してくれたことが、情勢を動かしました。

テロリスト集団を除外する形で、シリア人同士の平和に向けたプロセスは、すでに始まっています。シリア政府と国内の反体制派との対話が29日に、スイス・ジュネーブで開かれます。この対話は国連が主催するもので、国際的にも外国から参入しているテロリスト集団が、シリアに平和をもたらすことの妨げになっていることが理解されてきました。

もう一つ重要なことは、政治的なプロセスを保証することです。そのためにはテロリスト集団に、他国が武器や資金や、兵糧を供給することをやめさせなくてはいけません。そうした援助によってテロリスト集団は、国内の広い地域で自爆攻撃など国民に対する大きな犯罪が行われています。トルコ、カタール、サウジアラビアといった国がテロリスト集団のサポートをやめることによって、平和に向けて大きく前進することになるでしょう。

もちろん日本も、特に2016年から2017年にかけて2年間はとても重要です。なぜかというと、日本はその間、国連安全保障理事会の非常任理事国となっているからです。日本が政治的・外交的に率先して、テロリスト集団へのサポートを行っている国に対してそういうことをやめさせるために動いてくれることを期待しています。

日本政府には経済的援助をお願いしたいと思っています。これまでの5年間で国内のインフラは壊され尽くされたし、非常に苦しんでいる。公務員への給料もきちんと支払われているが、それも限界に達しつつある。医療や教育も途切れることもある続いてはいるが、国を再建する上では資金が必要。戦争で破壊された文化遺産も修復したいと思っています。そのためには政府だけでなく、民間からの援助も必要でそのために力を貸していただきたいのです。

ロシアも中国もアメリカもヨーロッパも、テロリストと戦うということで意見が一致しました。その結果、シリアの問題をみんなで解決しようという機運が高まってきました。これは大変喜ばしいことです。シリアの自立を通して、他国にもいい影響を与えて、テロリズムをこの世からなくすための兆しが出てきた。皆さんのサポートをお待ちしています。

■移民問題を解決する最良の方法は?

以下は、ハフポスト日本版の記者との質疑応答。

——シリアから何百万もの移民が流出していますが、こうした移民問題を解決する方法は何でしょうか?

ハラビ氏:「あなたも知っているように、シリアでは大きな災厄が起きています。政府としては、シリア国民はシリアから出ず国内に留まってもらいたいと思っています。彼らが国外に逃げている要因は、テロリスト集団に家が破壊されたからです。アレッポやラッカなどの地域はテロリスト集団が支配しています。過激派の集団(IS)は、住民に対して(イスラム教スンニ派の中でも厳格な)ワッハーブ派の信仰を強制しています。スカーフを着用するように義務付けるなどしたため、それを嫌がって住民が逃亡したのです。しかし、全てのシリア国民に対して国に戻るように呼びかけたいと思っています。移民問題を解決するためには、やはりトルコ、サウジアラビア、カタールといった国がテロリスト集団を援助するのをやめて、その代わりにテロリスト集団と戦うシリア政府を支持するようことだと私は思います。これが移民問題を解決する最良の方法です」

——これまでシリア政府は欧米との関係がうまくいってない面がありましたが、それは今後は改善されますか?

ハラビ氏:「それはとても重要な質問ですね。もともとアメリカやイギリス、フランスなどの欧米各国とイスラエルは、彼らはシリアの国境を塗り替えようとしていました。欧米各国は歴史的にアラブの国を分割統治して、自分たちの勢力を伸ばすことを計ってきていました。イスラエルはアラブの国々がお互いに戦うことを、自分たちの安全保障のために利用してきました。イスラエルの背後にはアメリカがいました。しかし、(ISが関与したパリの同時多発テロなど)テロリストの横行によって欧米諸国も被害を受けることになった。そうした戦略がうまく行ってないことを彼らもようやく気づいて、もう一度やり直す方向にはなっています」

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アフマド、7歳

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