ポケモンはなぜ世界的なコンテンツになれたのか。20年の戦略をふり返る

ポケモンは数ある日本のコンテンツの中でも、最もメディアミックスが成功した事例であることは確認しておく必要があるだろう。
Pikachu plush toys are displayed for sale at the Pokemon Center Mega Tokyo store in Tokyo, Japan, on Wednesday, Feb. 24, 2016. Pokemon, a multi-media franchise by Nintendo Co., will mark its 20th anniversary on Feb. 27. Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg via Getty Images
Pikachu plush toys are displayed for sale at the Pokemon Center Mega Tokyo store in Tokyo, Japan, on Wednesday, Feb. 24, 2016. Pokemon, a multi-media franchise by Nintendo Co., will mark its 20th anniversary on Feb. 27. Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg via Getty Images
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20周年を迎えた“ポケモン”がキャラクタービジネスに与えた影響

1996年2月27日、ちょうど20年前の今日。任天堂のゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』が発売された。以降、『ポケモン』は世界的な巨大コンテンツに成長し、後進にも多大なる影響を与えた。これまで、ポケモン関連ソフトの累計販売数は全世界で2億7700万本以上、他のメディアやグッズを含めると、その市場規模は約4兆6000億円にものぼる。20年を経た今でも人気が衰えず、ユーザーの世代交代にも成功したポケモンのコンテンツ力、そして日本のキャラクタービジネスに与えた影響力を検証してみたい。

■国内コンテンツビジネスで、最も多角的なメディアミックスに成功

まず、ポケモンは数ある日本のコンテンツの中でも、最もメディアミックスが成功した事例であることは確認しておく必要があるだろう。戦後、マンガ→アニメ(もしくは実写)→玩具というメディアミックスで言えば、『鉄腕アトム』をはじめ『鉄人28号』、『仮面ライダー』、『機動戦士ガンダム』など多数ある。しかし、家庭用ゲーム機・ゲームソフトからアニメ、漫画、映画、グッズなど多角的なメディアミックスを図り、日本国内のみならず、国際的にもここまで大成功を収めたコンテンツはポケモンくらいだろう。公式ライセンス商品は約5000アイテム、各主要都市にグッズ専門店をおき、全世界では兆を超える市場を形成している。

「ポケモンは1998年にアメリカでアニメがスタートして、ゲームソフトが発売されると、世界最速記録でミリオンセラーを達成しました。1999年には、映画『Pokemon The First Movie』(日本版『ミュウツーの逆襲』)が全米3000館で公開され、興行収入8000万ドル以上、その他の国々でも約9100万ドルを記録。TVアニメは、今では全世界で93の国と地域で放送されています。原作が高く評価されても、なかなか数字を残せない日本産のアニメが多い中で、ポケモンが最も成功したコンテンツであることは間違いないと思います」(アニメ雑誌編集者)

■原作ゲームとは異なる展開 テレビ版ではピカチュウが国民的キャラに成長

今でこそ老若男女、誰もが知る巨大コンテンツとなったが、初代の『赤・緑』発売当時は、ゲームボーイをはじめ携帯型ゲーム機市場が低迷していた時期であり、ポケモンにもそれほど高い期待は集まっていなかった(初回出荷はわずか23万本)。しかし、モンスターを収集して図鑑を埋めていくというコレクション性や、通信ケーブルを介して友達とポケモンを交換したり、対戦したりできることもあって、口コミで面白さが広がり、爆発的にヒット。特に従来のRPGを楽しむ層よりも低年齢の小学生や幼児にまで訴求したことは非常に大きかった。結果的に、当時のゲームボーイ市場の救世主にまでなった。

ポケモンのヒットを語る上で欠かせないのは、やはり1997年よりスタートしたTVアニメだろう。このヒットに重要な役割を果たしたのが、主人公・サトシの“相棒”として登場する「ピカチュウ」。初代の赤・緑・青でプレイヤーが最初の相棒として選べるのは、「ヒトカゲ」「フシギダネ」「ゼニガメ」だが、アニメではゲーム内ではただの1モンスターに過ぎなかった「ピカチュウ」が抜擢。女性層にもウケる愛らしい見た目、「10まんボルト」「でんきショック」など見た目的にも派手なでんき系の技、声優・大谷育江による可愛らしい声も相まって、国民的キャラクターに(後に初代ソフトの『ピカチュウバージョン』も発売された)。原作ゲームとは異なる展開だが、それぞれのメディアの特性を活かし、より多くのターゲットを取り込めるような多角的なメディアミックスを図ったことが、巨大コンテンツの形成へとつながったのだ。

■『妖怪ウォッチ』は国内人気のみ!? 万国共通で愛されるキャラ造形は至難の業

さらに海外で大ヒットにつながった一番大きな要因は、各国の市場に合わせた国際展開を図っていったことだ。前提として、ポケモンは異なる文化圏でもわかりやすいモンスターの設定、少年とパートナーのモンスターの友情・成長物語といった普遍的なテーマを持っていることがあるが、さらに海外での展開は現地の事情に合わせてローカライズ。例えば、海外版では登場人物の名前を変更したほか、当時、RPGになじみのなかったアメリカでは、ゲームよりも先にアニメの放映を行い、認知度を高めてからゲーム、グッズなどを展開する戦略をいち早くとった。

こうしたポケモンの成功は、後の日本のキャラクタービジネスに多大な影響を与えたことは言うまでもない。しかし、続くコンテンツのどれもがポケモンほどの世界的なヒットに至っていないのが実情だ。「例えばよくポケモンと比較対象となる『妖怪ウォッチ』はクロスメディア戦略で成功しましたが、海外はようやく本格進出したところです。ポケモンをはじめとするローカライズの手法をよく研究しているのか、主人公の名前を海外名などにしていますが、海外の子どもに“妖怪”が受け入れられるかどうかには疑問の声もあります。日本独自の文化で、欧米で妖怪っぽいものとなるとドラキュラとか魔女、ゾンビ。妖怪文化がない国でキャラクターをどう活かしていくか、そこらへんがネックになるんじゃないでしょうか」(前出・編集者)

(C)1995,1996,1998 Nintendo/Creatures inc./GAME FREAK inc.

(C)2016Pokemon. (C)1995-2016 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

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