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スペインのゴーストタウンから、私たちが学べること

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CHRISTOPHER MARCINKOSKI
スペイン、グアダラハラ近くの半ば完成した団地であるシウダー・ヴァルデルースの中心部、2014年。

アカデミー賞にノミネートされた映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で記憶に残るシーンがある。荒涼としたフロリダ州の分譲地を、不動産業者が主人公たちを連れて案内する。空き家が続く街並みを車で通り過ぎながら、不動産業者は「マーケットが一時的に減速しているだけです」と説明する。

しかしもちろん、それは単なる減速などではなかった。住宅バブルがはじけたのだ。世界中に並ぶ空っぽの住宅街。人々は家を失い、多くの開発プロジェクトは頓挫した。

最悪のケースの1つはスペインだ。未完成の団地が国中に存在。2014年時点で300万戸以上の空き家が存在していた


CHRISTOPHER MARCINKOSKI
「ミラフローレス地区」として知られる、シウダー・ヴァルデルースの北西部、2014年。

City That Never Was(存在しなかった町)』。1月に出版した本で、クリストファー・マルチンコフスキ氏は自ら「投機的な都市化」について調査した。彼はこの言葉を用いて、実需ではなく経済的な押し上げのために開発プロジェクトに乗り出したときに起こる事態を記述し、それがやがて導く壊滅的な結果を提示した。

2000年代初頭に巨大な建設ブームがあった。スペイン中の県が新しい都市、空港、大規模インフラのプロジェクトを実施した。


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上空から俯瞰したスペイン中部、エルカナベラル団地。2002年(左)と2012年(右)。

「人口300人の村が膨張的な開発をして、住宅戸数が2倍、3倍になった例は簡単に見つけられます」とマルチンコフスキ氏は語る。

ペンシルベニア大学で景観設計を教える教授のマルチンコフスキ氏は、2010年にスペインを訪問したときにそのパターンに気づいた。

「建設された住宅の量は、あらゆる人口予測を超えていました。しかもその傾向は、1都市の状況や地域的な状況といったレベルを超えて、ほとんど国全体に蔓延している状況でした」


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シウダー・ヴァルデルースの概観。2014年。マドリード近郊で手に入るよりも広い空間を求める中間所得層向けコミュニティを意図していたが、開発は未完に終わった。

投機的な都市化の例の1つが、首都マドリードから60キロほど離れたシウダー・ヴァルデルースだ。建設は2006年に始まった。3万人の住民を想定し、住民を首都までつなぐ鉄道駅や、公園、スポーツセンター、学校の計画が立てられていた。

多くの計画がついに実現しなかった。現在の居住者数は3000人に満たず、そこには彼らが期待していた基本的サービスや仕事場への手軽な通勤手段といったものは存在しない。

「調査の過程で得たフィードバックは、いんちき商品を売りつけられ、身動きがとれないといったものでした。孤立感、販売されたものをきちんと受け取っていないという感覚がかなり蔓延しているのが伝わってきました」と、マルチンコフスキ氏は語った。


RICARDO ESPINOSA
マドリード近郊のエンサンチェ・デ・バリェカス団地。未完成の巨大な公共スペースは空虚感と放棄の感覚を増幅する。2014年。

マルチンコフスキ氏は続ける。「これらはかなり超現実的な環境です。人がいないことで、完全には構築されていなくてもその場所の大きさを理解できてしまいます。道路に描かれたマークや、はるか遠くのブロックまで見えると、これらがいかに巨大に構築される予定であったかがわかり、自分たちが手にしたものがいかに不合理なのかを、その巨大さがよりいっそう明らかにしてしまいます」

スペインは空港などのインフラプロジェクトも手を広げ過ぎた。マルチンコフスキ氏の記述では、1990年代から2010年にかけて同国で8つの新空港が建設され、さらに21の空港が拡張された。いくつかの空港は運営そのものが中止され、ほんの数便しか運航していない空港もある。


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シウダー・レアル中央空港ターミナルと建設されなかった高速鉄道駅を結ぶ未完成の歩行者連絡橋。2012年。

同様に、何百万ユーロもの投資マネーが道路の建設に注ぎこまれたが、多くのものが完成しなかった。

「かつては長期的で持続可能な計画と建設ロジックに関するものだったインフラ建設の多くが、ついに国家建設に関するものになってしまいました。…そして、それが私の理解ではかなりのところ、住宅建築の供給過剰を導いたのです」と、マルチンコフスキ氏は語った。


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メホラダ・デル・カンポの南に位置する2つの道路、MP-203とR-3をつなぐ未完成の接続道路。2014年。

マルチンコフスキ氏はスペインの投機的な開発を非難。都市計画の失敗には設計者やプランナーが「共謀」していると、主張する。

大規模な都市化プロジェクトは変動性が大きい。そのため当初に想定されたようには実現されないことが多いという事実を、設計者は認識すべきで、その前提で計画を立てるべきだと指摘する。また、実際に団地が建設され、人が入居するのに平行して調節可能な"モジュラー型"の設計を提案する。


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ロス・ベロカレスを宣伝する看板は景気後退期もずっと立てられたままだった。2014年。

「歴史を見ても、このようなバブルが発生し続けることを理解しなければなりません。その必然性を前提にすると、どのように計画し、設計し、実施するかについて違った考え方ができるのではないでしょうか」と、マルチンコフスキ氏は述べた。

マルチンコフスキ氏がこの本を出版したのは、金融危機に陥った後でも、世界各地で投機的な都市化が行われているからだ。これは特に中国のような新興国で顕著に見られる。アフリカの成長都市についても懸念があるという。


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マドリッド近郊のエルカナベラル団地。2014年。手前に見える住宅群は「ヨーロッパ最大のスラム街」といわれるラ・カナダ・レアル・ガリアナ。4年前、マドリード市当局は不法占拠の一部を取り壊した。

「これまで見てきた失敗の多くがアフリカで繰り返されています」。マルチンコフスキ氏は語る。「別のやり方を考える機会があります。より合理的かつ調節可能なやり方で、また、近代的といったイメージにとらわれず、必要性や現実に焦点を当てた都市・インフラ開発の方法を考える必要があります」

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。


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