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ある日「専業主夫」になりたいと言われたら... 白河桃子さんに聞く、新しい夫婦の肖像

2016年03月11日 21時59分 JST | 更新 2016年03月11日 21時59分 JST

女性の皆さん、あなたは彼氏や夫から「主夫になりたい」と言われたたら何と答えるだろう? 自分が一家の大黒柱になるというイメージをすんなり思い描けるだろうか?

男性の皆さん、あなたの中には「主夫」になって家事・育児を主体的に担うという選択肢はあるだろうか? 「ない」と答えたのなら、なぜそうなのか突き詰めて考えたことはあるだろうか。

作家・少子化ジャーナリストの白河桃子(しらかわ・とうこ)さんの著書『「専業主夫」になりたい男たち』は、「主夫」というキーワードから、これからの時代の家族のありかたを考察する一冊だ。

「家事・育児を主体的に担う」主夫とその妻たちへの取材を通じて見えてきた現代夫婦の新たな肖像とは? そして今なお男女が無意識に抱いている「性別役割」への固定観念とは? 一億総活躍会議の民間議員も務める白河さんに話を聞いた。

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■従来の夫婦像が逆転しているからこそ、お互いを思いやれる

――著書『「専業主夫」になりたい男たち』の帯にあった「11万人の夫が妻の扶養に入っている!」という惹句にまず驚かされました。

専業主婦は約949万人ですから、比べたら微々たる勢力ですよ(笑)。この11万人全員が家事や育児をメインに担当しているわけではないでしょうし、病気など事情がある家族もいるはずですから。しかし、いることはいるんです。ちゃんと主たる責任をもって、家事育児をやる男性たちが。

――なぜ「専業主夫」について執筆しようと?

「女性の管理職を3割増やすなら、主夫も3割」を目指す「主夫の友」のCEO・堀込泰三さんにお会いして、「楽しそうだし、子どもが生き生きしているな」って思ったことがきっかけです。

そこから主夫をしている他の男性たち、さらにその妻たちにお話を聞いていくと、どうやら彼女たちの幸福度も高いらしいことがわかって。主夫を選択した理由は、それぞれ自身の病気だったり子育て中の転勤だったりとさまざまな家族の事情がありましたが、そこにはお互いをサポートし合う家族の姿がありました。

ワーキングマザーの会に行くと「(家事・育児の戦力として頼りにできないため)夫は死んだものと思っている」という声を聞くことも少なくない。イクメンというキーワードが登場して共働き家庭も結構がんばっているのに、働く女性たちの幸福度はなぜか低いんです。

そんなことを考えていたときに出会った「働く女性を幸福にしている主夫という男性の存在」は私にとってはすごく印象的だったんですね。

――幸福度の高さとは、具体的にどんなところから感じ取れたのでしょう。

まず夫婦仲がいい。それから女性たちが好きな仕事に思い切り打ち込めているのが伝わってくる。その原因を探ってみると、夫婦がお互いをすごく思いやっているんです。日本ではまだまだ「夫は仕事、妻は家事・育児」という意識が強いけれど、専業主夫と働く妻のカップルの場合、その役割が逆転していることで、お互いがお互いに「やってくれてありがとう」という気持ちがあるんですね。

ある女性は、「主夫になった夫が育児のことでイライラしていても、『本来だったらこの悩みは私が引き受けていたかもしれない』と思うと優しくなれる」と言っていました。逆に主夫になった男性側も、まったく仕事の経験がないまま主夫になった人はほとんどいないので、社会に出て働く妻のつらさは彼らも十分に理解できている。

そこがたんなる役割分担とは違うところで、従来の夫婦像と逆転しているからこそお互いへの感謝と尊敬、思いやりが夫婦間にあるんです。それも幸福度の高さにつながっているように感じました。

■「男は仕事、女は家庭」では、男女ともに苦しい時代に

――本書に登場する専業主夫の男性陣は、皆さん家事・育児を問題なくこなしているようですね。

妊娠と出産、それからおっぱいをあげることだけはできないけれど、それ以外の家事・育児は全部男の人もやればできるんですよ。それなのに、現状では男性の家事・育児能力に、女性側からの期待と信頼がなさすぎる。やればできる! 特に子育てに関しては第一子なら女性も男性も一年生からですからね。スタートは一緒のはずです。「男は仕事、女は家庭」という昭和の性別役割分担の意識はそろそろ変えていかないと、男女ともに苦しい時代になってきているのではないでしょうか。

――今、子育て世代に、親世代のロールモデルはもはや通用しないと?

男性はがっつり仕事をして、女性はがっつり家事育児を引き受ける。それが昭和の家庭の形でした。言い換えれば、片方を無力化することによって強力なタッグを組み、お互いを縛り付けるという側面もあったんですね。だから女性は「稼ぐ」ということに関してはずっと無力だったし、男性は妻がいないと靴下の仕舞い場所もわからなかった。

けれども男女ともに仕事の形態が不安定になっていくこれからの時代は、お互いを無力化しあうようなタッグの組み方は有効ではありません。夫も妻も仕事と家事・育児の両方ができることで、より強い夫婦になれるはずなんです。

―—ともに家事・育児することで強い夫婦になれる。

共働き家庭では妻のほうが年収が高いというカップルも、ちらほら増えてきていますよね。子どもが小さいうちは、どちらかの負担が多くなる。完全な平等を求めるとかえってストレスもあるかもしれない。じゃあ夫と妻を比べたときにどちらが働き方の自由度が高いか、年収が高いのか、転勤はあるかないかといった、あらゆる要素を加味した上で、じゃあ今の時期はどちらが仕事をスローダウンするのか、ということを夫婦がそれぞれに話し合ったほうがいい。

これまでは無言のうちに女性が引き受けるものだった家事・育児という役割を、状況に応じてどちらが担うのか、夫婦ごとに考える時代が来ていますよね。

■「家事・育児は女の仕事」「男は一家の大黒柱」という固定観念

――男女ともに昭和の性別役割分担からもっと自由になっていい、という提案が本書の骨子ですね。ただし、「家事・育児は女の仕事」という固定観念と同じくらい、「男は一家の大黒柱」という考え方もいまだ根強くあります。

先日、「オンナnoミカタ」(NHKラジオ第1)というラジオ番組に出演した際に、女性リスナーを対象に「男はお金を稼いでいないとダメだと思う」かというアンケート質問を実施したんです。結果は「Yes」が164人、「No」が57人。

――約74%の女性が「男は稼いでいないとダメだと思う」と回答していると。

そう。「男の人はお金を稼ぐ以外はあまり役に立たない」と思い込んでいる女性はまだまだ多いんです(笑)。だから男性だってつらいんですよ。「嫁さんより稼がなきゃ」とみんなに言われるし、本人もそう思い込んでいる。

そういう思い込み、プレッシャーはもう手放していいし、家事や育児を主体的にしている男性はもっと胸を張っていいんです。主夫である自分をもっと発信していってほしいですし、そういう彼らのことを女性側ももっと褒めていかなきゃだめなのかな、と思いますね。

――「専業主夫」という言葉に拒否反応を起こす読者もいるそうですね。根底には「男/女はこうあるべき」という強固な性別役割の考え方があるのかもしれません。

そうなんです。男性は自分が信じてきた価値観を否定されたような気になってしまうんでしょうね。対して、女性はこのタイトルに怒りを覚える人もいるんです。「そんなのはずるい」と。

なぜ女性側が怒るのかというと、やっぱり日本の職場はまだまだ男社会だから。女性たちはみんな仕事をしながら、日々いろんなイヤな目に遭っているし、それを飲み込んで生きています。「男は仕事さえしていれば何でも許される」という男社会の強者の理屈が社会の中でまだまだ通用している。働くことで手に入れてきた優位な立場を、男であるにも関わらず手放すのか、ということへの怒りなのかもしれないと感じています。

(後編は3月16日に掲載予定です)

白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマに執筆、講演、テレビ出演など多数。2015年より「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。

最新の著書『「専業主夫」になりたい男たち』(ポプラ新書)では家事・育児を主体的に担う専業主夫とその妻たちへの取材をもとに、性別役割にとらわれない夫婦のあり方について考察している。

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取材・文 阿部花恵)

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