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「働く女性が着られるマタニティウェアを」ニューヨークで出産した青木愛さんが起業した理由

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多くの女性に愛されるマタニティウェアのセレクトショップがある。ヴィリーナ マタニティだ。インターネット通販ショップからスタートし、現在は東京に実店舗も展開。同社で扱うのは、海外のマタニティウェアと授乳服、そして子ども服で、イギリス王室のキャサリン妃が妊娠中に愛用していたブランドも取り扱っている。口コミで広がり、芸能人やアナウンサー、経営者などにも愛用されているという。

このヴィリーナ マタニティを立ち上げたのが青木愛さん。もともとは婦人画報社(当時)で9年間、ファッション誌の編集に携わったあと、家族とアメリカ・ニューヨークに渡り、現地で長男を出産。その後、US版『エル・ガール』編集部、日本の『エル・ジャポン』編集部を経て、起業した。

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青木さんは2016年2月現在、11歳と6歳の男の子、2歳の女の子を育てる母でもある。「働く女性が胸を張って着られるマタニティウェアがなかった」と振り返る青木さんに、これまでのキャリアや子育てとの両立について話を聞いた。

■ニューヨークで出産、帰国して感じた怒り

――会社員をやめて、起業をしようと思ったのはなぜですか?

2004年、まだ小さかった長男を連れてニューヨークから帰国したときに、まず感じたのが、「服がない!」という怒りでした。ニューヨークには、おしゃれなマタニティウェアがたくさんあり、私は妊娠期・授乳期をおおいに楽しめたんですよ。でも、帰国当時の日本のマタニティウェアは働く女性が胸を張って着られるデザインのものがほとんどなかった。

まわりには「妊娠したら着られる服がない。仕事が続けられない。どうしよう…」という女性がたくさんいました。この状況はなんとかしなければいけないと思ったんですよ。

――確かに、妊娠中や育児中はストレスがたまるので、おしゃれをして気晴らししたい気持ちになる方も多いでしょう。そんなとき、着たい服がないのはつらいですね。

着る服って女性にとっては重要ですよね。ニューヨークにいたとき、アメリカのベストセラー作家、カレン・サマンソンの代表作『hot mama』という本と出会いって衝撃を受けたんです。この本のサブタイトルにもある「how to have a babe and be a babe」という部分を読んで思ったんですよ。「マタニティライフって、ママになるって、こんなに楽しいことなんだ!」「赤ちゃんをきちんと育てることと、ママがキラキラと輝くことは両立できる!」「ママが女性として、ひとりの人間として幸せなほうが。パートナーも子どもも幸せになれる」って。

この本の考え方を、ぜひ日本に広めたい。そして、海外のマタニティウェアを日本の女性に紹介し、妊娠中や授乳期を楽しんでもらいたい。そう思ったんです。

でも、雑誌編集者だと、海外のマタニティウェアの情報を、困っている女性に対して十分に発信することはできません。だって、雑誌ではマタニティウェアの記事など、数ページ掲載されて1号で終わりですよね。それで、いつか海外マタニティウェアのお店を作ろうと思ったんです。これこそが、私のライフワークだと思うようになっていきました。

■子どもを産んで変わった働きかた

――でも、いきなり起業するのは勇気がいりますよね。準備期間があったんでしょうか。

帰国後、『エル・ジャポン』編集部で働くことになりました。『ELLE』は中学生のころからずっと憧れていた雑誌です。その誌面作りができるという長年の夢が叶ったわけですが、後から考えると編集部に配属された時点で、それまでの仕事で編集者としての達成感は感じてしまっていたのだと思います。

また、小さな子どもがいる身で会社員を続けることに限界を感じるようになりました。出産前は時間を気にせずバリバリ働き、仕事に自分の情熱とエネルギーを注ぎ込んでいたの……に、子どもを産んで世界がガラッと変わってしまいました。

もっと働けると思っていたのに、子どもはしょっちゅう熱を出しますし、仕事中には子どもの様子が気になります。とにかく、家に帰りたくなってしまった。そうやって子どもに意識が向いていくと、今度は思うように魅力的な誌面が作れなくなっていったんです。

当時は、仕事のレベルが下がってしまったという自分への焦りと、『ELLE』に引き抜いてくれた上司と同僚たち、そして読者にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

――そこで2006年に起業を決意された。経営者になったことで子育てもしやすくなりましたか?

はい。そうですね。会社員だと、周りの目がありますし、ページの評価も気になります。でも、経営者なら圧倒的に時間の融通がききます。もちろん、責任は重くて大変ですが、やりがいがあるので私には向いていますね。

そうそう、一番下の娘は1歳になるまではベビーシッターさんに頼って仕事をしていました。0~1歳くらいまではシッターさんと出勤していました。家が歩いてすぐなので、授乳のときには外にいても、オフィスに戻ってきて、オフィスで授乳をしていたんですよ。こんなことも自由がきく経営者だからこそできるのかもしれませんね。

■限られた時間で会社経営 1日の働きかた

――現在、1日のスケジュールはどんな感じなのでしょうか。

私は6時に起床して、20分でシャワーとメイクを済ませます。そして長男が起床し、朝の勉強を始めます。その後、次男と娘が起きてから家族全員で朝食をとります。でも、子どもって食事にかかる時間が遅いですよね。内心、「早く、早く」と思いながら朝の支度をするんです。

その後、長男と次男は7時50分に学校へ。私と主人と娘は8時に出発し、娘を保育園に預けた後に出社します。帰宅は、本当は18時には帰宅したいのですが、今は仕事が忙しくて19時ごろになりますね。

家に帰ってからは次男の宿題をみながら娘と遊びます。そして、長男が塾から帰宅すれば、長男の勉強もみます。夕方に帰宅した後は、完全に仕事を離れて家族との時間になります。

――限られた時間で会社経営を行う工夫は?

そこは優秀なスタッフに助けてもらっています。私のイメージしたことをスタッフの皆が作り上げていくパワーがオフィスにはあるんです。スタッフには、さまざまなライフステージの人がいます。産休中の人、時短勤務の人、結婚したばかりの人、独身の人など…。それぞれのスタッフが気持ちよく助け合って仕事してくれていますよ。

■すべての女性が幸せになる服を届けたい

――ヴィリーナで販売する服は、どのような特徴がありますか?

かっこいい服も可愛い服も、カジュアルな服もあります。バリバリと仕事をこなすときに着るシックな服や、ママとして学校関係に顔を出すときの上品な服、そしてパーティーで着られる華やかなプリント柄、子どもと遊ぶときに着られるカジュアルな服など、さまざまです。

女性はいつも同じ服を着ていればいいというものではないですよね。シーンと会う人に合わせて服は変えていかなければいけませんし、変えていった方が楽しいです。ロングドレスから冠婚葬祭用の服まで、あらゆる服をご用意しています。今後は、マタニティのウエディングドレスも取り扱っていく予定です。

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―どのようにして取り扱う服を選んでいるのですか?

母であり、ビジネスウーマンでもある私が、「これなら胸を張って着られるな」と思うものですね。

年2回、ニューヨークに買い付けに行きます。海外の服はみな華やかでとても素敵なのですが、日本で着ると派手すぎることがあります。日本で着たらどうなるのか、ちょっと冷静にならないといけません。また、布地や縫製などの質が悪いものも結構あるので、それはオーダーしないようにしています。

あとは、すべての服を試着して、締め付けがきつくないか、授乳しやすいかなどの着心地を確かめます。これは、編集者時代からの習慣ですね。だって実際に着てみないと、着心地について書けないじゃないですか。パッと見て素敵な服でも、着てみると意外とよくないことがありますし、着ないとわからなかった素敵な服も見つかります。

——試着が大事なんですね。

マタニティ期だけでなく、出産後に着られるかどうかも大切な判断基準です。マタニティウェアは、妊娠中しか着られないから買うのはもったいないと感じるかもしれませんが、妊娠から出産を経て、授乳後になっても着られる服ならコストパフォーマンスがいいですよね。女性のライフステージの変化を通じて、長く着てもらえる服を提案したいと思っています。

■オリジナルの服、日本のママが日常で着られる服を 

――海外ブランドの買い付けだけでなく、オリジナルの服も開発していますね。

そうなんです。海外の華やかなプリント柄の服は、特別な日に着れば気持ちが上がりますが、毎日は着られないですよね。どうしても、日常で着るならブラックやネイビー、グレーなどのベーシックな色味の出番が多いです。

また、海外ではセクシーであることがよしとされているので、胸の谷間を強調しても非難されないところがあります。たとえネイビーのコンサバに着たいドレスでも胸のあきが大きく、日本ではちょっと仕事や子どもの学校関係に着ていきにくいんですよ。

そこで、「もうちょっと、こういう服があればいいんだけど」という希望を形にしてできたのが、ヴィリーナオリジナルの服です。ママに日常で着られる服を提案したいと思っています。

――オリジナルの服、開発のこだわりは?

とにかく、いかに使える服か、流行にとらわれずに着られる服かを徹底的に追求します。たとえば、授乳服なら、授乳口のファスナーはどの長さにすればいいのかを、実際に娘に授乳しながら検証しました。

海外のワンピースは薄手なので冬に着ると寒いというお客様の声を受けて、絶対にワンピースからはみ出さない丈を計算したホットインナーも開発しました。

――ニーズから商品が生まれているんですね。

商品開発には、とにかくいろいろなママの生の声を参考にしています。ニットワンピースは、温かさと手触りを重視してウールの比率を多めに作ったのですが、ワンシーズン着続けたら毛玉だらけになってしまって。そこで、次の年は見た目を重視し、ポリエステルの比率を増やして、毛玉が出にくいように改良しました。そうこうしているうちに、「ないから作りたい」という気持ちで作ったオリジナルの服がずいぶん増えてきました。

私自身、毎日着ているんです。だって、朝の準備を終わらせてから、最後に自分が着替えるので、コーディネイトに時間をかける暇がない! 結局いつも黒、グレー、ネイビーの服に手を伸ばしてしまい、スタッフに「愛さんまたその服ですか」と言われる始末……。もはや制服状態です。着古したら部屋着として着ますしね。このままだとほかのお店に買い物に行かなくなって危険です(笑)。

■起業して10年、今思うこと

――起業して、壁にぶつかったことはあるんですか?

それが、特に壁らしきものにぶつかった覚えはないんです。気が付いたら起業から10年、楽しく走ってきました。

妊娠して、お腹が大きくなって「着る服がないわ。しょうがないけど、乗り切らなきゃ」とあきらめている女性に、海外のおしゃれなマタニティウェアを紹介する。それで女性が「ワーッ」と喜んでくれたら、「やったー!」とガッツポーズ! この「ワーッ」「やったー!」が楽しくてやめられなかったんです。

――最後に、今後の目標を教えてください。

おかげさまで立ち上げて10年、ずいぶん認知度は上がりました。今実感しているのは、新しいことは勢いでできるものですが、以前よりよい状態で長く続けていくのは難しいということです。お客さまへのサービスの質は絶対に落とせませんし、高いクオリティとサービスをずっと長く続けていくことは、日々の努力の積み重ねです。

地道なことですが、コツコツと同じことを同じように努力し、続けていくことが一番大変ですし、最も大切なことだと思います。でも、ヴィリーナがないと私自身もママとして着る服がなくなってしまうので困ります(笑)、お客様の期待に応えられる、安心できるウェアをこれからもずっと届けていきたいと思っています。

(気象予報士・ライター 今井明子

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